『〇〇県民は採用しない』なんて方針に意味あるの?と思った時に読む話

城 繁幸

今週のメルマガ前半部の紹介です。
先日、東証一部上場企業の不二越の会長が
「(同社発祥の地である)富山生まれの学生は閉鎖的なので採用しない」
と発言して話題となりました。

確かに「〇〇出身の人はのんびりしてそうだ」とか「〇〇出身は商売上手が多そう」といったなんとなくイメージできる県民性みたいなものはありますが、その手のステレオタイプって本当に意味があるものなんでしょうか。仮に県民性に違いがあったとしても、それでフィルターかけて採用しちゃって大丈夫なんでしょうか。

というわけで、今回は「〇〇県民は採らない!」問題についてまとめてみたいと思います。きっと人材や人事制度とは何かを考えるよい切り口になるはずです。

その人の立ち位置は他者との相対的な関係で決まる

結論から言うと、筆者は(少なくとも日本国内であれば)出身地域によって人間性や能力に差異があると感じたことはないですし、そういう差異があることを前提に人事を回しているという会社も聞いたことがありません。それは当たり前の話で、なぜならその人の人となりを形作るのは、生まれではなく他者との相対的な関係だからです。

たとえば、めちゃくちゃ社交的でコミュニケーション能力の高い人ばかり採用したら、その会社の社風は明るくなるかと言えばそうはなりません。配属先によって明るくなる人もいれば別人のように落ち着いちゃう人もいます。

これは能力面でも同じですね。よく「どの職場も仕事を引っ張る上位2割、可もなく不可もない6割、パッとしない下位2割に分かれる」と言われます。262の法則という奴です。これは本当にそうで、なので下位2割をリストラしても新たに下位に落ちてくる人たちが発生するだけですし、東大卒業者で職場全員を固めてもパッとしない人たちのポジションにはまる人間が必ず出てくるものです。

「採用時にはすごく高評価だったのに配属先ではイマイチだった」とか「長年ぱっとしなかったのに人事異動した先で突然覚醒してエースになった」といった経験があるので、そういうことは人事マンならよくわかっています。なので、出身なんかで人を判断することはまずないですね。

そうそう、よく新卒採用時の面接で「学業でもサークルでも何でもいいから、あなたの成功体験を教えてください」的な質問がされますが、あれは「自分が置かれた環境の中でいかに良いポジションをとれたか」という点を見ているわけです。ポテンシャルは学歴を見ればある程度わかりますが、実際の環境の中でどういうポジションに落ち着くか(=実際にどれくらい結果が出せるのか)は、実際の経験を通じてしか見えてきませんから。

そういう意味では、不二越の会長さんは富山に移住してから、ご近所づきあいかなにかでよっぽどロクでもないポジションについちゃったんでしょうね。

以降、
“敗者”はどうすべきか
人事がホンネで採りたくないタイプ

※詳細はメルマガにて(夜間飛行)

Q:「「体育会系優遇」を言い出した会社は落ち目?」
→A:「新卒で体育会優遇を全面に出す会社って、社内が体育会そのまんまなわけですよ」

Q:「連合会長が木の実を朝に四つ、夕方に三つやろうという話はどういう寓意?」
→A:「昔、あるところに神津会長という老人が住んでいました……」

追記。先週号の「将来何をやりたいか分からない子供に、進学先は何をすすめるべきでしょう?」にフォローをいただきました。非常に身になる話なので紹介いたします。

A:「メルマガ160号で話題になった、リケジョにお勧めの大学についての私見」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2017年8月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。