日本経済新聞が「注目論文のシェア、日本は9位 背景に若手研究者不足」と報じた。科学技術力の低下を紹介したうえで、「ノーベル賞級の成果を生みやすい40歳未満の大学研究者が減っていることなどが背景にあるとみられる。」と書いている。記事の元情報は科学技術・学術政策研究所が発表した『科学技術指標2017』である。
科学技術力の低下は最近の傾向ではない。2013年3月には朝日新聞が「科学論文数、日本2→5位 研究国際化に遅れ」と報じている。2009年10月の『週刊エコノミスト別冊』は特集「アジア33億人市場 巨大消費パワーが目覚める」に次のように書いている。
アジアの研究開発も近年活発になっている。例えば、研究者数を国際比較すると、中国の研究者数は今世紀初頭には既に我が国の研究者数を超えている。さらに、成果面でも、新興国は先進国を追い上げつつある。中国、韓国は我が国と同様の傾向を示し、ナノテク・材料分野、特に材料科学において論文の被引用率が高い。また中国、韓国においては、近年、材料科学において着実に論文の割合を増加させており、日本に急速に追いつきつつある。
10年以上にわたり低下傾向が続いているから、今さら報道しても誰も驚かない。だから日本経済新聞以外は『科学技術指標2017』を記事にしない。
低下に歯止めをかけるためには政策議論を起こす必要がある。日本経済新聞は若手研究者の不足を書いているが、『科学技術指標2017』は女性研究者に関する問題も指摘している。それによると、女性研究者の全研究者数に占める割合は15.3%で調査国の中で最も小さく、大学に多く雇用され、企業は女性研究者を活用していない。
以前に記事『日本の男性研究者は多数愚劣!』で指摘したように女性研究者は優秀である。女性研究者の増加の必要性は『第5期科学技術基本計画』でも強調され、「男女問わず、公平に評価する透明な雇用プロセスの構築と、より多様な人材の活躍と働き方の改革が科学技術イノベーション活動を活性化するとの認識を幅広い関係者が共有することが重要である。」とされた。科学技術基本計画が認めるように認識が共有されていないから、政策として動いてない。
人材問題は解決に時間がかかる。しかし長く低下傾向が続いてきたのだから、回復に時間がかかってもやむを得ない。低下に歯止めをかけるためには政策議論を起こす必要がある。