衝撃的なニュースが流れた。REUTERSロイターによれば、ダニエル・クレイグ(49)がついに、米トーク番組「The Late Show」で、007シリーズの次作品に復帰することを明かしたのである。朝に出演したラジオ番組では、復帰するかどうかは「まだ決めていない」と語っていたクレイグがコメントを一転させた。
ジェームズ・ボンドの魅力とはなにか
007ジェームズ・ボンドの魅力とはなんだろうか。私は映画に秘められたメッセージ性にいつも驚かされる。ユニオンジャックのパラシュートやホバークラフトは国家への忠誠心、Skyfallの審問委員会はネット社会やテロに対して警鐘でもある。デジタルなようでアナログ、コミカルとシリアスの融合に魅了される。
また、スパイの主な任務は潜入捜査である。目立たないほうがスパイ向きだがボンドは背が高く(クレイグ以外は全員186cm以上)ハンサムだ。敵陣営に乗り込んだ際、丁重に自分の名前を名乗る。「The name is Bond. James Bond」。どんな難局に陥っても必ず切り抜けるタフさも持ち合わせている。こんなスパイは存在しない。
そこで皆さまにお聞きしたい。仕事をしていれば理不尽はつきものだ。このような理不尽をチャンスに変える方法はないものか。もし、自分がジェームズ・ボンドならどのように仕事に取り組むだろうか。せっかく仕事をするならボンドのように、強くしたたかに取り組めたほうが楽しいとは思わないだろうか。
ボンドは諜報部員なので高収入であることが予想される。しかし36協定もなく組合にも加盟しているようには見えない。深夜の仕事やカジノでの任務は就業規則に明記されているのか。明記されていないなら違法だから労基署に通報だ。しかも、MI6は従業員に命をかけた仕事をさせるなんてとんでもない。ブラック企業に間違いないだろう。
ジェームズ・ボンドに学ぶ状況判断力
「007ドクター・ノオ」で、デント教授がボンド暗殺を企てるシーンがある。ボンドは、クラブに案内された時点で、デント教授が不意をついて襲ってくることを事前に予測していた。そのための準備に余念がない。寝室のベッドには枕やクッションを埋め込み、あたかも寝ているかのように見せかけている。
深夜、デント教授はベッドに忍び寄り銃を連弾で発射する。ボンドはドア横の椅子に余裕の表情で座りながら銃を構える。しまったという表情のデント教授。しかしボンドが目を離したすきに、デント教授は銃を拾いボンドに向けて発射する。が、弾は出ない。ボンドは「その銃は6連発式だから弾は切れている」とクールに再び銃口を向ける。
ボンドは、デント教授が弾を撃ちつくしていたことを的確に把握していたのである。同様のケースが「ゴールデンアイ」の最後、ハッカーのボリスがパスワード解読をしているシーンに見られる。ボリスが使用しているボールペンは、ボンドが仕込んだ爆弾で、決められた回数をノックすると爆発する仕組みになっている。
ボンドは拘束中にも関わらず、冷静にノックの回数を数えていて、爆発のタイミングで反撃し撃退に成功する。ビジネスマンの重要なスキルに「状況判断力」がある。いまのエピソードはボンドが的確な状況判断力で窮地を脱するシーンだが、仕事の局面で状況判断力が極めて重要なスキルであることは間違いない。
ジェームズ・ボンドならどのように対応するか
実は、3年半ぶりに出版をすることになった。『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』(同友館)になる。私にとっては9冊目の本でもある。本来の専門は経営学だが、最近の経営やマネジメント系の話題には限界を感じていた。もともと一般的な経営書を書くつもりもなかったが、関係者と打合せをするなかであるアイデアが浮かんだ。
それが、ジェームズ・ボンドだった。いまは、ブラック企業やパワハラ、うつ病やうつ抜けといった、どちらかと言えば暗い会社関連の本が多い。しかし、仕事は一生やらなければいけないし、本来なら楽しくてやり甲斐があるほうがいい。会社がそもそも理不尽な場所であることは否定するつもりはない。
多くの人が上司との関係性や仕事に悩みがあることも間違いないだろう。だからこそ、ジェームズ・ボンドのような振舞いができたらどんなに痛快ではないかと思う。ボンドなら社内の理不尽に対してどのように立ち向かい対応するか。時には成功し、時には失敗する。しかも目立たないドロくさい事例を用意した。
もちろん、書籍用に創作した部分もあるので、皆さまと意見が異なる箇所もあると思うが、それは一つの解釈だと思ってもらいたい。ボンドはどんな難題を突きつけられてもクールに引き受ける。そして最後まで諦めない。その姿を自分自身に投影してもらいながら読み進めてもらえると面白いのではないかと思う。
参考書籍
『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』(同友館)
尾藤克之
コラムニスト
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