民進党・蓮舫前代表の辞任にともない、9月1日に民進党の新たな代表を決める代表選が行われます。立候補したのは今回が代表選初出馬となる枝野幸男氏と、前回の代表選にも出馬した前原誠司氏。
「党内リベラルvs保守」という対立軸で語られる枝野氏と前原氏ですが、一概にそうとは言えないと両者は述べます。代表選への意気込みや今後の民進党、さらには両者が「オタク」(枝野氏はアイドルオタク、前原氏は鉄道オタク)であるという共通点から、その人柄や趣味への熱意まで幅広く伺うべく、選挙ドットコムでは候補者両名に独占インタビューを行いました。
安倍政権に対峙できる野党第一党になるために
-選挙ドットコム編集部(以下、編集部)
枝野氏が代表選出馬に至った経緯を教えてください。
-枝野幸男氏(以下、枝野氏)
現在、安倍政権は「ルール違反」を堂々と繰り返し、強引な進め方をしています。そしてもっと問題なのは、その状態がまかり通ってしまっていることです。この社会全体の危機に対して、安倍政権に対する選択肢を提供できるのは力強い野党第一党です。私たち民進党がしっかりするしかないと思い、代表選の出馬を決めました。
かつての旧・民主党政権の失敗から学んだこともたくさんありますし、民進党の足りないところ、民進党のもっとプッシュしていくべきところを、私は長年の幹事長経験等からよく分かっているつもりです。党首が変わるだけの選挙ではなく、「党を変えるための選挙」だと考えています。
-編集部
今年に入ってから、「安倍政権が長期化している」「不支持率が支持率を超えている」など批判的な意見も見受けられるようになってきています。一方で民進党は支持率を回復できていません。
-枝野氏
安倍政権の不支持率が上昇したのは、ずっと同じ間違いを繰り返してきた安倍政権の姿が、国民の皆様の目に見えるところまで露出してきた結果だと思います。
民進党の国会議員、特に若手の議員たちが頑張ってくれたことも一因でしょう。ですが、私たち民進党は、もっと強くなっていかなければなりません。党として良くなってきている部分もありますが、本当に自民党に対抗できる勢力であるか?と聞かれたら、まだまだ足りない部分があるのは事実です。
全国の草の根ネットワークを結集できる政党へ
-編集部
枝野氏が代表に当選したら、民進党はどんな党へと変わっていくのでしょうか?
-枝野氏
リーダーは旗を示す存在ですが、ワンマンな政治は今の時代に合いません。私が目指したいのは、ボトムアップ型で、地方の議員や党員・サポーターまで全員が力を発揮できるプラットフォームを作れるリーダーです。
民進党は全国に地方議員や党員、サポーターがたくさんいます。全国にネットワークを持っている野党は、民進党だけです。ですので、こうした草の根の力を集めることのできる強みを、活かしていきたいと考えています。
今は、国会と地方との間に若干の壁があるように感じています。例えば国会では日々様々な議論が行われていますが、その内容を知るのは地方議員でさえ翌日の新聞だったりします。逆に、地方議員の活躍も、もっとネットを使って情報発信できると考えています。
国会、永田町で議論されたことを共有すると同時に、全国での仲間たちの活躍を共有していく。そういった地道な活動によって、「民進党は右往左往している」という誤ったイメージを払拭できるのではないかと思っています。
-編集部
今回の民進党代表選は、「リベラルの枝野vs保守の前原」と語られているかと思います。両者の違いが強調され、「民進党は党内の意見がバラバラだ」との印象をさらに持たれているのかもしれませんね。
-枝野氏
前原氏も私も、本質的には同じところを目指して、「どっちが近道か」「どっちが効率的か」ということを議論しているのに、ただお互いのことを「気に食わない」と言っているかのように報じられてしまっているところはあります。そうした誤解も解いていきたいと思います。
また、「誤解」で言えば、「対案を出せ」という批判を受けることがよくあります。しかし、私たち野党はきちんと提案や対案、修正案を出しているんです。ただ、野党ですから、与党が出した案よりも注目されにくいことがあります。私が代表に就任したら、党内の情報共有だけではなく、こうした体外的な情報発信にも取り組んでいきたいと思っています。
政治に親しみが持てるなら、「ゆるキャラ」扱いされるのも構わない
-編集部
民進党といえば、ニコニコ超会議での「VR蓮舫」や旧・民主党公認ゆるキャラ「民主くん」Twitter等、シュールでひねった笑いを広報戦略に取り入れていましたよね。この路線は今後も続けていかれる予定ですか?
-枝野氏
路線なんて大げさなものではないですが(笑)。
それらの試みは、一番政治に遠い人にできるだけ関心を持ってほしいという努力なんです。単発ではなく継続的に、政治家は”ふつうのひと”なんだよ、ということを伝えていきたいんです。国会議員とか政治家って自分たちとは関係ない人がやっているんでしょう、という先入観をなくしたいんですよ。
そのためなら、私自身が「ゆるキャラ」扱いされるのも構いませんよ(笑)。
-編集部
ちなみに、このクッションは…
-枝野氏
誕生日プレゼントで関係者からいただきました。なかなかいいでしょう?
-編集部
最高です。
血を見るのが苦手、アイドルにハマった理由… 枝野氏の人柄に迫る
-編集部
次に、枝野氏のお人柄について伺いたいと思います。政治家を志したきっかけは何だったのでしょうか?
-枝野氏
私は子供のころ病弱だったんです。そこで、野口英世の伝記を読んで、医者になることを考えていたのです…が、私はどうも血を見るのが苦手で(笑)。それ以外で病気の人を助けられたり、多くの人の役に立てる仕事はないかなと思って政治家を志すようになりました。弁護士資格を持っているのも、政治家になりたいという前提があって、それに近い職業を目指したというところがあるんです。
-編集部
ありがとうございます。枝野氏が大切にしている政治信念を一言で教えていただけますか?
-枝野氏
“Cool head, hot heart.” です。
政治家は熱い想いがないとできない仕事ですが、熱くなりすぎてはいけません。そこのバランスをとるのが政治家の力量です。
-編集部
そんな枝野氏が政治と同じく”Hot heart”を持ち続けている「アイドル」についてですが、いつごろからアイドルがお好きだったのでしょうか?
-枝野氏
私たちの世代だと山口百恵さんや小泉今日子さん、もう少し経っておニャン子クラブですね。そこから少し空いて、AKB48でアイドル熱が再燃しました。秋元康さんの戦略にうまくのせられましたね(笑)。
-編集部
政界きってのアイドルオタクの枝野氏から見て、アイドルの魅力とはなんでしょうか?
-枝野氏
高校野球と似ているんじゃないでしょうか。甲子園に立つ大物高校生の影には、補欠の選手がいて、試合にも出られない選手がいる。そういう陽の当たらないところでも努力をしている人がたくさんいるというのが地域アイドルや地下アイドルとかぶってくるんです。ちなみに最近の推しは「さくらシンデレラ」です。
-編集部
最後に、選挙ドットコムの読者へ向けてメッセージをお願いします。
-枝野氏
私たちには常に旧・民主党政権時代の失敗がついて回るので、冷めた目でご覧になっている方も多いかと思います。しかし、選択肢がなければ民主主義は機能しません。民進党はまだ弱いけれども、地域に根を張って国民に寄り添っていけるのは私たちしかいないと思っています。
私も、党内の仲間も全力で努力をします。あなたの声を聞かせてください。