中国で4日、新規仮想通貨公開(Initial Coin Offering)の取り締まりが強化されました。
仮想通貨でも独自のブロックチェーンを持たない仮想通貨をトークンといい、ICOでの資金調達はトークン・セールとも呼ばれます。ICOで思い出されるのは、独自の仮想通貨発行をICOで行う案を検討中と8月22日に明かしたエストニア。同国の電子化担当はイーサリアムのブロックチェーンの創設者、ヴィタリック・ブテリン氏と協議中と言及し、イーサリアムでのトークン発行を連想させたものです。
ICOなら、ブロックチェーンを開発・管理する負担は必要ありません。発行量も事前に決められ、クラウドファンディング形式で資金調達できる上に、IPOと違って監査入らずなんですよね。もちろん、発行体はホワイトペーパーを用意していますが、全ページを読み込む人々は限られていることでしょう。容易に資金調達できる仕組みがウケて、ICOの資金調達規模は今年に入って12億ドルに達したといいます。
バブルの感が禁じ得ない状況、取り締まり強化に動いた当局こそ中国人民銀行。4日に、ICOを禁止すると発表しました。IT情報サイトのテッククランチによると「マルチ商法」と糾弾したといいます。とはいえ、当局の介入は初めてではありません。米証券取引委員会(SEC)は7月25日、イーサリアムを使ったDAO(Decentralized Autonomous Organization、非中央集権的自主機関、すなわちICOの発行体など)トークンにつき、1934年に成立した証券取引所法に抵触する可能性を指摘。つまり、証券と定義する余地を残したのです。さらにファースト・ビットコイン・キャピタル・コープ(BITCF)に対し、上場企業の株式取引停止を通告していました。同社の株式は年初に3セントから6,000%も急騰していたのですが、配当をIOCで発行したトークンで行うと表明し当局から疑惑が持たれた模様です。その他、ICOを予定していた他3社の上場企業の株式も取引停止の処分が下されました。
ビットコインやイーサリアムの値上がりは、ICOで投資家が支払いに使用するためです。ICOが増えれば増えるほど、独自のブロックチェーンを保有する仮想通貨が上昇する仕組みとなっています。おかげでビットコインは年初来から340%高を遂げ一時は5,000ドルに接近。イーサリアムは一時、約50倍の390ドル台に乗せたものです。
熱気渦巻くICO市場に、セレブリティが参戦すれば否が応でも人気が沸騰してしまいます。例えば無敗の元プロボクサーで知られるフロイド・メイウェザー氏は、2つのICOをプロモートしました。さらにかつてのセレブの代表格、パリス・ヒルトン嬢まで宣伝するほど。否が応でも、注目を集めてしまいますよね。セレブを担ぎ出して資金調達を実施してもお釣りがくるくらい、バブリーな状況と言う証左です。
自己責任で投資を行うにも、無法地帯ではリスクが高過ぎるとあって、米中の当局が規制強化に乗り出したのも無理はありません。ただ中国の場合は、6月にビットコイン取引所での引き出し再開を許可するなど規制を整備した後で緩和する場合もあり、恒久的措置かは判断氏づらい状況です。
(カバー写真:Jens Schott Knudsen/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年9月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。