投資信託のコスト低下の裏側で起こっている「資産運用革命」

投資信託の年間の管理コストに当たる信託報酬が7年ぶりの低水準にあると日本経済新聞が報じています(図表も同紙から)。

管理コストが低下するという事は、その分投資家の運用リターンは確実に向上しますから、悪い話ではありません。記事の中では、運用会社が長期資金の取り込みを重視し、ストック型のビジネスを志向し始めたことが背景にあるとしています。しかし、真の原因は別のところにあると思っています。

それは、低コストのインデックスファンドが設定され、資金がシフトを始めたことにあると思います。

平均の信託報酬率は7年ぶり低水準とはいえ、まだ平均で1.38%もあります。一方で、インデックス型の投資信託は、最近設定されたものになると日本株式で0.2%以下、外国の株式や債券で運用するものでも0.4%以下になっています。

例えば、三菱UFJ国際投信のネット証券専用の投資信託eMAXIS Slimシリーズの年間信託報酬率は次のようになっています。

日本株式    eMAXIS Slim 国内株式インデックス   0.18%
先進国株式   eMAXIS Slim 先進国株式インデックス  0.20%
新興国株式   eMAXIS Slim 新興国株式インデックス  0.34%
先進国債券   eMAXIS Slim 先進国債券インデックス  0.17%

このような、低コストのインデックスファンドが次々と設定され、資金が流入し始めているのです。もし、上記の信託報酬率のグラフをアクティブ型とインデックス型に分けて表示すると、2つのグラフは1%以上の大きな乖離があるはずです。

これは投資信託の信託報酬から収益を得ている関係者にとっては「不都合な真実」です。インデックス型投資信託のコストが低く、しかも運用成績も悪くないということが明らかになれば、さらに多くの人たちが、高コストのアクティブ型から低コストのインデックス型に流れ込み、金融機関の収益性を低下させることになるからです。アクティブ型ファンドの広告から収益を得ている関係者も、インデックスファンドが人気化して、出稿が減ってしまうのは好ましいことではありません

金融資産を使った資産運用は、「長期・分散・インデックス・低コスト・積立」という5つの原則だけで誰でもできるシンプルなものです。インデックスファンドであれば、ファンドの運用成績も見る必要はありません。信託報酬を比較し、コストを下げることによって市場平均からできるだけ高いリターンを確保することが大切です。

信託報酬率の低下の裏側にあるのは、機関投資家では当たり前のことになっている「インデックス化という資産運用革命」が、個人投資家の間にもいよいよ広がりつつあるということです。アクティブとインデックスを一緒にした全体の平均値を報じるだけでは、この真実が隠されてしまっていると思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年9月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。