最近の報道の中で私が最もブルーな気持ちになったのはこちらの記事です。
「小池新党」期待48.1% 既成政党の不満の受け皿に [産経ニュース 2017/08/21]
産経新聞社・FNN合同世論調査では、自民党を離党した若狭勝衆院議員が東京都の小池百合子知事と連携して新党結成を目指していることに関し、新党に期待するとの回答は48.1%、国政選挙で新党に投票すると答えたのは35.6%に上った。小池知事の支持率も73.6%と高水準だった。新党が既存政党に対する不満の受け皿となる可能性が高い。
新党については、自民党支持層の37.3%、民進党の53.6%が新党への期待を示した。投票するとの回答は、自民党では22.4%と、4分の1近くが新党に流れる計算だ。民進党だと37.7%になり、実に4割近くが同党に投票しないと答えたのに等しい。
私が言うまでもなく、日本が採用している【間接民主主義】は、政治を行う首長や議員を有権者の自由意思による投票によって選ぶことを基本とします。有権者が何を基準に議員を選択するかは自由であり、選択に関しては公的にも私的にも責任を問われませんが、国権を信託し税金を負担している以上、国民がより幸福な生活を営むための福利を享受できる【政策】を擁した人物を選択することが普遍の原理であると考えます。このような認識の中で、【綱領】も【政策】もない日本ファーストの会を母体とする小池国政新党に「投票する」と答えた有権者が1/3を超えるというショッキングな世論調査結果は、「政策を選択する」という普遍原理がけっして国民の共通認識ではないことを示しています。
日本ファーストの会の若狭勝議員は、[会見]で「政策は示さない。政治塾を続けるうちにだんだんと収れんされていく。」と断言しています。これは【政策】という大前提なしに政治家を名乗る政治屋が語る言葉です。
それでは、なぜ一部有権者が【政策】未発表の小池国政新党に投票したいと考えるのでしょうか。理由として考えられるのは、一部有権者が「既成政党よりも新党に期待できそうである」と錯覚していることです。そして、なぜこのような錯覚が生じたかと言えば、それは日本ファーストの会の影の形もない時点から「小池国政新党の待望論」を喧伝したマスメディアの【政局】報道の影響以外考えられません。
同一視による政党支持
一部有権者が政策をもたない新党に投票するという意思決定を行う背景には、新党が【政策】という合理的要因とは別の何かしらの要因が存在していることは自明です。その要因とは何かといえば、知名度が低い若狭勝議員を選好しているのではなく、その背景にいる小池都知事を選好していることは自明です。
都政に対してほとんど実績がない都民ファーストの会が都議会選挙で完勝した要因は、都民ファーストの会代表(当時)の小池都知事の【ポピュリズム populism】とその最大の味方であるワイドショーの【センセーショナリズム sensationalism】が互いの利益のために強固に結びついたことと考えられます[過去記事]。
ただし、この都民ファーストの会に対する大衆の支持と今回の日本ファーストの会に対する大衆の支持には大きな違いがあります。それは都民ファーストの会には、評価は別として、【綱領】があり、まがりなりにも情報公開という【政策】が存在していたわけです。ところが、日本ファーストの会には【綱領】も【政策】も存在していないのです。そのような中で一部有権者が、日本ファーストの会が母体となる小池国政新党に投票したいと思うのは、「小池国政新党の考え方を正しいと思った」からではなく、「小池国政新党と同じ考えでいたい」からであると考えられます。詳しくは[過去記事]をご覧いただければと思いますが、前者のような同調の動機を【内在化 internalization】、後者のような同調の動機を【同一視 identification】と言います。ここで言えることとして、政党に政策がなければ【内在化】は発生しませんが、政党に【政策】がなくても政党に【対人魅力 interpersonal attraction】を感じれば【同一視】は発生することになります。【同一視】とは単なる好き嫌いの感情の発現と言えます。
別の例で【内在化】と【同一視】について説明すると、プロ野球において、巨人菅野智之投手や西武菊池雄星投手のピッチング、広島菊池涼介二塁手のフィールディングなど選手の卓抜したプレイを選好してファンになるのは【内在化】によるものであり、元広島黒田博樹投手や元横浜三浦大輔投手の男気、ソフトバンク川崎宗則内野手のガッツなど選手の人格を選好してファンになるのは【同一視】によるものです。
プロ野球はエンタテインメントであり、【内在化】でファンになろうと【同一視】でファンになろうと自由であり、けっして他者から否定されるものではありません。ファンが楽しければよいのです。しかしながら、政治はエンタテインメントとは違います。政治は国民の生命・財産を守ることが至上命令であり、政治家が提示する公約という約定を国民が吟味した上で投票を通じて契約を締結するものです。このため、【政策】を考慮しない【同一視】により政党支持する一部有権者は、政治家と正当に契約を交わす国民からすれば納得できる民意の形成を阻害する極めて迷惑な存在であると言えます。
戦略型フレームによる政治のドラマ化
大衆の同一視による政党支持をプロモートしているのが、テレビ・ラジオの政局報道であると言えます。私達国民にとって重要なのは、私達の生活に影響を及ぼす【政策】を議論する【争点型フレーム issue frame】の報道であることは間違いありませんが、ニュースを配信する報道番組・情報番組では政治家の権力争いである【政局】の勝ち負けを報じる【戦略型フレーム strategic frame / game frame】による報道が占める割合が極めて多く、とりわけワイドショーでは、そのほとんどが【政局】の話題であると言えます。
この【戦略型フレーム】の政局報道において、その戦略顧問となっているのが自称「政治アナリスト」「政治評論家」の伊藤惇夫氏・鈴木哲夫氏などの「政局巷談家」です。これらの政局巷談家は【政策】についてはほとんど触れることはなく、そのほとんどが真偽不明な情報ソースから憶測したスキャンダラスな政治家の権力闘争であり、視聴者はまるで吉川英治「三国志」や山岡宗八「徳川家康」のような「戦略ドラマ」を見せられることになります。この戦略ドラマは現在進行形であり、視聴者はゲーム感覚でヒーロー/ヒロインに声援を送り、アンティヒーロー/ヒロインに野次を浴びせることになります。
現在進行中の政局ドラマの主人公は、闇のドンが支配する伏魔殿の東京都庁に一人切り込むヒロインである小池百合子東京都知事と祖父の思いを実現するために憲法改正をたくらむアンチヒーローである安倍晋三首相です。政局巷談家は、小池都知事に対しては豊洲問題・五輪問題などに対する政治判断を絶賛することによってあたかも「小池都知事は戦略に長けている」という錯覚を与える一方で、安倍首相に対しては森友問題・加計問題・日報問題・各種失言問題などのスキャンダルを軸に徹底的に悪魔化することによってあたかも「安倍首相は信頼できない人物である」という錯覚を与える印象操作を行っています。
もっぱらワイドショーのスタジオは「小池国政進出」と「安倍おろし」のための戦略本部であり、この大目標を実現するために極めて偏向したスタンスで自論に有利な情報を延々と流しています。何か一つの出来事が発生すると、司会者が「この動きについてどのように見られますか」「関連した何か情報はお持ちですか」といった質問を政局巷談家に投げかけ、これを政局巷談家が、完全な憶測や政権中枢から聞いた話と称する真偽不明で検証不能な情報を根拠にして、小池政権を絶賛し、安倍政権を罵倒するというのが多用されているパターンです。
ここで、ワイドショーで専門家として紹介される政局巷談家はけっして政治の玄人とは言えません。なぜなら、彼らは政策の長所・短所を説明することなどほとんどなく、単に芸能レポーターのように政権周辺の人物を追いかけて聞いたとする真偽不明な話を紹介しているだけだからです。本質的には「アマチュア玄人」と呼ぶのが相応しいかと思います。一方で、番組の司会者や室井佑月氏のような芸能人コメンテイターなど、政局巷談家の言説を無批判にありがたく受け入れてはオーソライズする役割の出演者は、台本の存在を視聴者に意識させない高度な演技力が必要となります。このような人達は「プロ素人」と呼ぶのが相応しいかと思います。
さて、このような「小池国政進出」と「安倍おろし」の戦略本部を毎日延々と覗き見させられている視聴者は無意識のうちに政局ゲームに参加させられています。視聴者は、【単純接触効果 mere-exposure effect】と呼ばれる心理効果の作用によって、司会者が発する「小池都知事は次にどんな手を打ってくるのでしょうか」「安倍首相はどのように幕引きを謀ろうとしているのでしょうか」など、まったく私達の生活に無意味な質問に憶測100%で回答する政局巷談家の言説に次第に興味を持ち、耳を傾けるようになります。そして、いつの間にか「小池都知事は戦略に長けている」「安倍首相は信頼できない」という錯覚を無意識のうちに持つようになります。
【単純接触効果】とは、人間が特定の人物や集団を繰り返し知覚すると好感を持つというものです。これは熟知するほどその人に好感を持つという人間心理の傾向によるものであり、例えば、テレビでよく見る芸能人を好きになったり、過去に毎日のようにゲームがテレビ中継されていた読売ジャイアンツのファンが多かったのはこのためです。売れっ子芸能人のように連日テレビに露出した小池都知事はこの効果の恩恵を最大に受けたものと推察されます。一方、特定の人物や集団を繰り返しネガティヴに知覚すると悪感を持ちます。森友問題・加計問題で毎日バッシングを受けた安倍首相や自民党がこれにあたるものと推察されます。このネガティヴな【単純接触効果】のメカニズムは、ポジティヴな【単純接触効果】のメカニズムとは異なり、ネガティヴな【同調圧力】の履歴に伴う態度変更であると考えられます。
このような効果によって、豊洲問題・五輪問題で事態を著しく混迷させたにも拘わらず小池都知事は世論の支えを受けて都議選で大勝利を収めた一方で、森友問題・加計問題に対する法的過失がないにも拘わらず安倍首相は国民の信頼を失って支持率が急落したわけです。
ケーススタディ 小池劇場
ここでは、ニッポン放送「高嶋ひでたけのあさラジ!」における政局巷談家の鈴木哲夫氏と扇動司会者の高嶋ひでたけ氏による小池都政に関する発言のやりとりを中心として、戦略型フレームの報道とはいかなるものかを確認していきたいと思います。
あさラジ!2017年4月5日
鈴木氏:小池さんが出てきたときからいつも言われていた。「いつかは総理大臣を目指して国政に行く」と。今回も国政研究会というのを小池さんが創ると言うので「すわ」・・・
高嶋氏:着々と手を打っているなみたいな。
鈴木氏:今まで自民党が小池氏に対してガチンコであったかと言えば、小池さんが凄く人気があるものだから抱き着き作戦というのか。(中略)小池さんとは「程々仲良くやっていった方がいい」と言う感じだった。それが方針ががらっと変わった。「徹底的に対決しろ」と。特に官邸は、「都議選では手を握るなどということをせずに戦え」と。(中略)一時は大敗するのではないかと言われていたが、「そこそこに戦えるのであれば、変に抱き着いて組織が壊れていくよりもきっちり戦っていけるのではないか」と方針転換した。これに対して小池さんは、「官邸を含め国政レベルでも自民党は自分と対決してくる」と感じて「こちらも備えなければ」と。こんな感じの動きだと思う。
高嶋氏:安倍官邸が旗幟を鮮明にした。「小池さんとは徹底的に対決していく」と。小池さんも7月2日の都知事選からその先の事も見据えて、国政研究会と。
鈴木氏:ある意味で全面対決。
高嶋氏:公明党との関係はどうなるのか。
鈴木氏:自民党にしてみると「おいおい公明党よ。小池さんとあんたのところは都議選で組むのか。地方では自公一緒ではないか。どうなんだ。」という、ある意味では小池さんと対決姿勢を示すことによって公明に対しても、踏み絵ではないが、通告している感じはある。
高嶋氏:都議会議員選挙が帰趨によって、次の総選挙に大きな影響を与えることがよくある。
政局巷談家と扇動司会者は、このような歴史小説まがいの脚本を巷談することによって、無意識のうちにリスナーに小池都知事主演の都議会支配ゲームを観戦させています。もっぱら、覇権を得るために抱き着き作戦や公明党に踏み絵を踏ますキャラに設定された安倍自民党は明らかに悪の存在であり、国政に進出して総理大臣を目指す崇高な目標を掲げて悪と全面対決するキャラに設定された小池都知事は明らかに善の存在です。注目すべきは、この巷談におけるキャラの発言部分はいずれも鈴木氏の完全なる憶測に基づく脚色に過ぎない点、及び政治の本質である政策については一言も触れていない点です。国民にとって必要なのは、鈴木氏が報じる権力争いの勝ち負けではなく、鈴木氏が報じない政策に基づく政権選択です。
あさラジ!2017年4月12日
鈴木氏:豊洲が象徴になって来て自民党が「ここが攻めどころだ」ということで、公約で「豊洲に早く移転すべきではないか」と。なんとなく小池さんが決めあぐねているから、それを追及することが自民党の追い風になる。そういう意味では自民党も豊洲を政争の具に使っている。
鈴木氏は、豊洲を政争の具に使う小池都知事に対して論理的根拠を示して豊洲移転という対案を出した自民党を「豊洲を政争の具に使っている」と断罪しました。主人公である小池都知事が穢れそうな場合には、それ以上に敵役を穢れさせるというのは政局巷談家の常套手段です。彼らにとって小池都知事は情報を歪曲してまでも死守すべき商売道具であると言えます。
あさラジ!2017年4月26日
鈴木氏:小池さんが知事にならなければ、豊洲の裏でこんなことがぐちゃぐちあったというのはわからないまま過ぎて行った。それをここまで出したという功績は、行政の透明化ということを考えれば僕は評価してもいいと思う。
豊洲市場の過去の経緯について小池都知事は徹底的に調査しましたが、不正な点は全く見つかりませんでした。逆に、移転延期のために少なくとも200億円の経費が無駄に支出されることになりました。このような利益なしで損害だけ生じた判断をポジティヴに評価するのは、鈴木氏が政治評論家ではなく政局巷談家であることの証左です。明らかに不合理な評価が、政局巷談家の勝手な感想によって、一見合理的な評価であるかのように印象操作されることになります。
あさラジ!2017年5月17日
高嶋氏:鈴木さんに言わせると7月2日の都議選というのは、「小池さんの選挙」なんだと。実に端的な表現をされている。
鈴木氏:小池さんの人気がそのまま投票行動に繋がる。そんな傾向が強いと見てもよい。
高嶋氏:相変わらずその勢いは続いていると。
鈴木氏:ただここに来て一つポイントは、自民党が反転攻勢をやってきた。
高嶋氏:三県の知事が、五輪の費用について、意表をついて官邸に行ったら、安倍さんから丸川さんに指示が出て、「小池さんは決められないんだ」というキャンペインみたいなことが行われている。
鈴木氏:あれも自民党というか官邸が仕組んだという話がある。というのは小池さんはもっと早い段階からこのことについては「面会したい」と安倍さんに言っていたけれども、それには日程をはっきり言わなかった。先に三県の知事に会って、「小池さんは決断力がないだろ」というのを演出したという情報もある。そういうことも全部相まって小池さんに対してのバッシングというか小池さんを攻撃して、こういうのも自民党が勢いを盛り返している背景にある。選挙前になると、必ずスキャンダルとかいろいろなものが出てくるので、自民党がそういうものを仕掛けてくる可能性もある。
都議選は東京都民の選挙であり、小池都知事の選挙ではありません。マスメディアの放送において、政治家を偶像化する鈴木氏の発言は極めて不穏当です。人気投票を煽る発言に至ってはジャーナリズムを否定するものと言えます。さらに、情報の所在を明確にせずに伝聞をあたかも真実のように語り、それを「バッシング」「攻撃」と認定しているのは不合理です。汚い手を使って安倍首相が小池都知事を貶めていると主張するのであれば、明確な証拠を示す必要があります。憶測で自民党がスキャンダルを仕掛けてくる可能性があるというのは深刻な【人格攻撃 ad hominem】です。政治家の勝ち負けだけを報じる【戦略型フレーム】の報道は次第にエスカレートしていきます。
あさラジ!2017年5月24日
高嶋氏:アントニオ猪木さんが緊急会見して小池都知事の特別秘書で都民ファーストの会代表の野田数さんという人を業務上横領の容疑で刑事告訴していた。
鈴木氏:なぜ今出たかというと、これは明らかに選挙が近いから、このタイミングを見て「今出せ」と。
高嶋氏:裏に大きな政党が絡んでいるのですか。
鈴木氏:絡んでいる可能性もある。
高嶋氏:自民党に対して小池さんは完全に牙をむいた。
鈴木氏:予想通りだ。全面対決。だからこういう話も出てくる。選挙になればスキャンダルも含めて山ほど出てくるから、その中の一つということだ。
高嶋氏:政治家って元気だな。しかし。(中略)小池さんが市場移転問題に明らかな結論を出さないと、豊洲移転に賛成している都民は自民党に入れてしまう。
鈴木氏:どちらに選んでも選挙にはリスクがあるので。まだまだ最後までに小池さんがスパンという可能性はある。
高嶋氏:勝負勘をどう働かすかだ。
ここまで来ると、小池都知事の選挙戦略本部の人物がプロパガンダを放送しているレベルです。自民党を想起させる「大きな政党」という言葉、及び「豊洲移転に賛成している都民は自民党に入れてしまう」という自民党への投票行為に対する困惑の表現は、放送の公正性を著しく欠くばかりでなく、根拠なく個人・団体の名誉を汚すという公共の福祉に反する行為です。「政策」は単なる勝負の道具であり、勘によって決定することを推奨するような主張も大問題です。
あさラジ!2017年5月31日
高嶋氏:今日をもって小池百合子さんが都民ファーストの会の代表に就く。
鈴木氏:無党派にどれだけ自民党がアピールして無党派層をもってこれるのかと。片や小池さんだ。小池さんは無党派には強い。何をやるかわからいというところもある。となると、まさに小池さん側としては伸びしろをとっていくためには、小池さん自身が選挙と一体化して「都民ファースト」よりも「小池新党」のようなイメージでどんどん先頭に立って積み上げるんだと。
高嶋氏:小池新党ね。その意味がわかる。
この日は、まるで金正恩が将軍職に就いたことを発表する朝鮮中央テレビのような声の上ずりようで(笑)、ポピュリズムに毎回騙される有権者が多い無党派層に「都民ファーストの会=小池新党」であることを呼びかけました。結果的に、このような公共の電波を使ったマスメディアの大宣伝によって、都民ファーストの会の知名度は格段に上がったと言えます。
あさラジ!2017年6月7日
高嶋氏:朝日新聞の調査によると、小池新党自民に並ぶと言う。自民党を正式に小池さんが離党して、都民ファーストの会の代表となったら、これだけ数字が変わってきた。
鈴木氏:小池新党、小池ファースト、小池の選挙ですよ。
高嶋氏:その勢いは益々ついていきますか。
鈴木氏:そうですね。一番有効なのはおそらく空中戦。無党派層の半分くらいが決めてないという。そこにかなり訴えかけていくだろうと。(中略)市場移転問題については、かなり迷っていると思う。元々そうだったからもしかしたら築地に決める。決めたらまた大変なショックであり、リスクはあるけれども。
高嶋氏:決断で7月2日の都議選というのは票がどういう流れになるか。
鈴木氏:いやいや、これはかなり動く、そういうことを「小池さんならやるのではないか」という警戒の声が出ている。(中略)小池さんと一緒に応援すると言った若狭さん。自民党を離党して都議選を応援するが、若狭さんが自民党を離党した理由の一つに「加計学園の対応が自民党はなっていない」と挙げている。若狭さんあたりが街頭でガンガン言い出すと、東京は無党派が多いからこういうところにこの(加計)問題は響く可能性がある。しかも自民党は総理・菅さんが「全面に都議選に出てきて応援する」と言っているから、攻める側としてはターゲットになる。
高嶋氏:ということは、今日最初に出た「自民党って最近感じが悪いよね」ってね。
鈴木氏:その感じの悪い人がまた出てきて・・・
高嶋氏:それに対して勘のいい小池さんが攻めないわけがない。
鈴木氏:攻めてくる可能性はある。
高嶋氏:そうすると、このソバ屋論争は結構影響が出るかもしれない。
鈴木氏:またさらに拡がる可能性はある。
高嶋氏:なるほど。
ニッポン放送に置かれた実質上の小池都知事の選挙宣伝本部が、公共の電波を使って「小池新党、小池ファースト、小池の選挙ですよ」と小池劇場を煽ると同時に、自らが悪魔化した自民党に対して無党派層が投票したくない気持ちになるのはもっともであるかのような心理操作を行っています。ここに政策の解説は全くありません。政局巷談家と扇動司会者が行っているのは、政治家に善悪を付与して劇を盛り上げることだけです。加計問題と都政のどこに関係があるのか、そもそも加計問題は問題であるのか、すべては非常識な憶測を根拠にして中傷しています。これは政治評論家による政治番組ではなく、政治巷談家による娯楽番組です。
あさラジ!2017年6月14日
高嶋氏:いよいよ小池東京都知事も正念場にさしかかった。
鈴木氏:「決められない知事」というネガティヴ・キャンペインに対して、「決められる知事」というのを見せるタイミングが来たということだ。都議選が23日告示なので、それまでに「方向を示そう」ということだと思う。
高嶋氏:「築地も残す」と。気の早いスポーツ新聞は「築地は食のテーマパークだ」と書いてあった。政治家小池百合子としては、最終的に「決められない知事」の汚名を晴らすためにも、東京都議会選挙の前に「こうします」という具体的なことを言わざるを得ない。
鈴木氏と高嶋氏が「小池氏は決められない知事というのはネガティヴ・キャンペインであって、本当は決められる知事である」とインプリシットに主張しているのは自明です。
あさラジ!2017年6月21日
高嶋氏:「東京都でも起きるか、マクロン現象」ということだ
鈴木氏:東京発の小池さんの国政政党。「永田町でも小池さん、新党作ろう」と言っている人たちが出てきている。
高嶋氏:当然の流れはそっちの方へ行っている。
鈴木氏:都議選後・・・
高嶋氏:とりあえずの勝負、都議選で負けては話にならない。
鈴木氏:もちろんそうだ。40議席台というのが大きな一つの鍵だと思う。
高嶋氏:127のうち40議席台。なるほど。
鈴木氏:(不祥事の国会議員を庇うのは)全部ブーメランで自民党に返る。
高嶋氏:「国会議員の進退は自身の」というのは常套句だ。
鈴木氏:逃げでもある。
高嶋氏:さぁ、選挙民はこれに影響されるのか、されないのか。
鈴木氏:(加計問題は)全員を同じ舞台に揃えて、証人喚問でも参考人でも構わないが、けじめをつけない限りダメだ。
高嶋氏:最後に、相当影響出そうなのか?都議選に。
鈴木氏:間違いなく出る。各政党の世論調査も含めて数字に変化が出てきている。
高嶋氏:どうなるか。
都議選も近くなり、鈴木氏は、今回の都議選は小池新党の国政進出のためには絶対に負けてはならない選挙であることをリスナーに認識させています。この言葉により、ゲーム感覚で都議選を鑑賞している一部リスナーは、小池劇場のゲーム・オーヴァーを恐れて都民ファーストの会への投票意思を強固にするものと考えられます。小池劇場が商売の種である鈴木氏からすれば、一部リスナーを引き締めているとも言えます。散々小池劇場を煽ると同時に散々自民党を悪魔化している張本人が「選挙民はこれに反応するのか、されないのか」と発言していることには強い不条理を感じます。鈴木氏が「間違いなく影響が出る」として小池都知事に有利な情勢を語るのは【バンドワゴン効果 bandwagon effect】を狙っている可能性があります。
あさラジ!2017年7月5日
高嶋氏:自民党にとっては大荒れの都議会議員選挙が終わりました。笑いが止まらないのは都民ファーストの会です。(中略)総選挙で仮定すると、東京都は1勝24敗だということで。
鈴木氏:結論を言うと、公明党も小池さんもうまいな。(中略)うまい。上手。したたかな要素が動きを見せたというのが今度の連携。
高嶋氏:政治家同士の手の握り合いは、裏に三筋四筋五筋のいろんな理由があって、その辺見てくると面白い。
笑いが止まらないのは、明らかに鈴木氏と高嶋氏です。選挙戦術にしたたかなことは、けっして絶賛されることではなく、むしろ民主主義を手玉に取っているという証左です。
あさラジ!2017年7月26日
高嶋氏:勝てば官軍とか、我が世の春とか、いろいろ言うが、線で結び付けると小池百合子に行く。小池さんが新党を立ち上げると、週刊誌で鈴木哲夫さんが書いているが、信憑性というのはどの程度か。
鈴木氏:かなり高いと思う。
高嶋氏:鈴木哲夫さんは、総選挙があれば50議席獲得という皮算用があると。
都政に結果を出していないばかりかネガティヴな結果を出している小池都知事が率いる政党が、大衆を扇動してゲームに勝ったことはむしろ民主主義の危機と言えます。勝てば官軍という言葉がどれだけ危険であるか似非ジャーナリズムの扇動家は認識していません。
あさラジ!2017年8月2日
高嶋氏:とにかくいろいろ批判はあるが、これだけ大胆にいろいろ仕掛けて、この間の都議選でなんだかんだ言われて都民ファーストが第一党になった。なかなか見事な手腕と言わざるを得ない。
鈴木氏:好き・嫌い・評価・批判、いろいろなことを全部ひっくるめても、それを認めざるを得ない。常に小池さんが勝ってきたというか、小池劇場というのは見事にこの一年間しっかり演じ続けた。
高嶋氏:内田都議とか、石原慎太郎知事とか、森喜朗さんとか、世間も納得する敵づくりをやってきたが、透明のターゲットはあるのか。
鈴木氏:敵はちょっといない。
高嶋氏:困っているかもしれない。
鈴木氏:次は国政の話がある。
気持ちが悪い程の【個人崇拝 cult of personality】による「小池劇場」の肯定は【ポピュリズム】を肯定することに他なりません。
あさラジ!2017年8月9日
高嶋氏:議員心理というのは生々しいから外野で見ている分には本当に面白い。
まさに【戦略型フレーム】報道が極まったと言えます。
提供されたロール・プレイング・ゲーム
なぜ一部有権者は、【政策】未発表の小池国政新党に投票したいと考えたのか。なぜ一部有権者は、記念撮影や握手の有無で政治家の評価を決めてしまうのか[過去記事]。それが報道各社が行っている【戦略型フレーム】報道に帰結することは明らかです。一部有権者は、マスメディアからリアルタイムに体験できるロール・プレイング・ゲームを無償提供され、それを無邪気に楽しんでいるのです。
非常に危険なことに、ロール・プレイング・ゲームには作者が設定した特定の結末があります。プレイヤーはこの結末を変えることができず、がむしゃらにゴールを目指します。例えば、第一章で都政を掌握した「小池劇場」の場合には、第二章で小池国政新党の大躍進、そして第三章で政権奪取と小池百合子総理大臣の誕生がプログラミングされています。
都政のブラックボックスを打破する公約を掲げた小池都知事は、実際には側近と密室で決定した政策を都民ファーストの会の議員に議会で称賛させる最強のブラックボックスです。知事をチェックすべき都民ファーストの会の議員には個人の情報発信を制限するという全体主義的な恐怖政治を「都議会のドン」を超える「都政のドン」として執行しています。一部有権者におかれましては、そろそろヴァーチャルな世界を脱出してリアルな世界に生きていただきたく強く希望する次第です。
政策を語らずに政局の勝ち負けを語る【戦略型フレーム】報道は有権者にとって全く無意味であると言えます。
編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2017年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。