シカゴは、紅葉・黄葉がかなり進んでいるにもかかわらず、明日から1週間ほど30度を超えるとの予想で、歴史的な暑さとなりそうだ。温暖化というよりも、明らかな異常気象である。そして、私は、今、また、また、また、また、オヘア空港にいる。羽田経由で、ベトナムのハノイに向かうためだ。タイ・マレーシア・シンガポールには計10回以上行ったことはあるが、ベトナムは初めてだ。いつ、北朝鮮からミサイルが発射されるかもしれないので、少し不安だが。
先ほど、国連総会でトランプ大統領が「ロケット野郎」とか「北朝鮮をぶっ潰す」に近い過激な発言をしていたので、チキンレースはますますエスカレートするだろう。シカゴの気候のように、北朝鮮と米国が今以上にヒートアップすると戦争へ、さらに一歩前進だ。
そして、日本では安倍総理が衆議院を解散するようだ。野党や左翼系メディアは自民党にとって有利になるかもしれない状況を恐れ、「大義がない」「政治空白を生む」などと叫んでいる。「政治空白」というなら、来年の後半に、もっと危機的状況を迎えればどうするのだ。任期満了になれば、憲法の規定に従って総選挙は必然となる。
北朝鮮問題を含め、有事に(なりそうな状況に)対応する法案を口汚く罵った人たちが、どの面を下げて「空白」などと寝言をほざくのだ。法案が必要だったのかどうか、この状況になって、その評価を問うのは十分に意味があると思う。国を守る方針を改めて問う、これは大義の一つの理由としては十分だ。北朝鮮のミサイル実験や核実験は、「安倍総理が悪い」とコメントした大学教授がいたようだが、その教授はどの国の教授なのか?金日成大学にでも移籍すれば大歓迎してくれるだろう。
しかも、消費税を上げて、その財源をどのように使うかを問うと報道されている。どうも、医療・福祉への利用や国の赤字を削減する方向から、大学(高校)教育の無償化を含めた子育て支援に回す方向のようだ。私は、保育園や幼稚園などの無償化には賛成だが、高等教育まで国が支援する必要があるのかどうか疑問だ。本当に何かを目指して大学に進学したいけれど、経済的に厳しい学生を支援する必要性は感ずるが、プラプラと勉強もせず遊んでいるだけの大学生を支援するなど税金の無駄使いだと思う。
シカゴ大学の大学生・大学院生は本当に必死で頑張って勉強している。大学の授業料は年間600-700万円なので、その分だけ自分の役に立つものを身につけようとしているのだ。日本の学生はぬるま湯につかっている。目的意識もなく、大学に通っている人たちの授業料無償化に利用するなら、もっと医療・福祉に使って欲しいものだ。
知人と話をするたびに、日本の医療保険制度は本当に厳しい状況だと感ずる。もちろん、医療現場もかなり厳しい。救急医療など、救急医の過重労働という犠牲の上に成り立っている危うい状況である。保険医療制度が確立されて長い時間が経ち、医療は水や空気のように、当然のように存在しているものと考えられているようだが、空気や水は何も対策が打たれなかった頃、大気汚染、水質の劣化は一気に進んだ。医療現場のひずみは悪化し続ける一方だ。
政権が安定化している今だからこそできることはたくさんあるはずだ。
しかし、これからの長旅を考えると、気持ちは落ち込んでくる。やはり、ベトナムは遠い。気力も体力も厳しいものがある。
編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年9月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。