日経:中国、石油の輸出制限開始 北朝鮮への圧力強化

共同が今日(9月23日)の午後、CNNのようにテロップ報道をしていた掲題、日経が9月23日20:23、北京=永井央紀、ソウル=峯岸博、両特派員の記事として詳細を報じている。

だが、これだけの分量を書くのであれば、もう少しきちんと書いて欲しいと思うのは筆者だけだろうか?
三点、指摘しておきたい。

1.「米国の試算によれば、北朝鮮はガソリンや軽油など石油精製品を年450万バレル輸入している。ほとんどが中国製とみられる」

←ロシアも供給している。プーチン大統領は、アモイにおけるBRICS首脳会議後の記者会見で「ロシアの石油供給は四半期に4万トンと極めて小さい」と自ら語り(ロイター、2017年9月5日19:26)、翌日、ウラジオストックでは、文在寅・韓国大統領が、プーチン大統領が首脳会談で同じ内容の発言をした、記者会見で述べている(朝日新聞デジタル、2017年9月6日20:38)。「四半期に4万トン」とは、およそ「年間128万バレル」になる。決して小さな数量ではない。いま、各国が問題視しているのは、ロシアの貨物船によるドラム缶に詰めたガソリン、軽油の密輸の可能性ではないのだろうか。

2.「北朝鮮は国内に製油所を持ち、輸入した原油をもとに軍事目的に使うガソリンや軽油などの石油精製品を作っている」

←これではすべて「軍事目的」となってしまう。民間が日常生活に使用するガソリンや軽油もある。だからロシアは、市民生活への悪影響が出るとして「完全禁輸」に反対している、と報じられている。「軍事目的にも使える」とでもすべき。

3.「中国は液化天然ガス(LNG)の輸出・・・23日から禁止した」

←初歩的ミス。今の段階でこのミスはみっともない(2017年9月7日、弊ブログ#365「北朝鮮への追加制裁米国草案全文を読みたい!」参照)。安保理決議でわざわざ「禁止」と明記しているのは、NGL(Natural Gas Liquid=天然ガス液)。LNGとは全くの別モノで、高温高圧の地下では気体だが、常温常圧の地上では液体になるもの。品質は軽質原油に類似している。OPECなどが「減産」等を議論する場合には、「原油」ではない、として対象には含めていない。誰かが抜け穴として供給する可能性を排除するため、「禁止」と明記しているもの。したがって、日本の報道では「伝えない」方が一般読者には親切ではないだろうか。

日経さん、期待しています!


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年9月23日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。