ドイツで24日、連邦議会選挙(下院、任期4年)の投開票(有権者総数約6150万人)が実施され、メルケル独首相が率いる与党第1党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)が得票率約33・2%を獲得し、前回(2013年)より得票率を落としたが、第1党を堅持した。一方、欧州議会議長5年間勤めた後、ベルリンの中央政界入りしたシュルツ党首の与党第2党「社会民主党」(SPD)は得票率約20・8%と党歴代最悪の結果に終わった。
注目された第3党争いは、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が約13・1%を獲得して第3党の地位を得た。AfDは2013年の党結成以来、初めて連邦議会の議席を獲得した(前回の総選挙で4・7%と議席獲得できる得票率5%の壁をクリアできずに惜敗した)。リントナー党首の自由民主党(FDP)は約10・4%で連邦議会にカムバックを果たした。左翼党は約8・7%、そして「同盟90/緑の党」が約9・2%だった(得票率は暫定結果)。
昨年11月の米大統領選や今年5月のフランス大統領選では“チェンジ”という言葉がモードとなったが、ドイツでは順調に国民経済が発展していることもあって、有権者の多くはチェンジ より現状維持志向(キープ)が強い。メルメル首相は、「私が政権に就任した直後、500万人の失業者がいたが、その数は今日、250万人と急減した」と強調し、12年間の政権の成果を強調してきた。
メルケル首相は同日夜、「前回の選挙より、得票率を落としたが、戦略目標だった第1党与党の地位をキープできた。わが党以外に次期政権を組閣できない」と勝利宣言するとともに、次期政権の課題として、国民経済の成長、国内の治安改善、難民対策などを掲げた。メルケル首相の4選はほぼ確実となった。
党創設以来、最悪の得票率に終わった社民党のシュルツ党首は、「残念ながら、結果は厳しく、痛みが伴うものだ。極右政党が連邦議会入りした今日、議会政治を守るために第一野党としてその職務を果たさなければならない」と述べ、CDU/CSUとは再び大連立政権を組まず、野党の道を歩む意向を示唆した。
今回の選挙のハイライトは極右政党のAfD第3党に躍進したことだ。党幹部たちの反ユダヤ主義的発言で一時、支持率を落としたが、選挙戦終盤、厳格な難民政策をアピールし有権者の支持を得た。ちなみに、メルケル政権の難民歓迎政策に反発したCDU/CSU支持層から100万票以上がAfDに流れた、という選挙分析が明らかになっている。
関心は選挙後の組閣工作に移る。CDU/CSUはどの政党と連立政権を組むか、SPDと大連合を再び構築するか、FDPと「同盟90/緑の党」との3党でジャマイカ連合(党のカラーからジャマイカの国旗の色となる)を組むか、さまざまなシナリオが囁かれている。ただし、CDU/CSUはAfDと左翼党との連立は拒否している。それだけに、新政権発足まで時間がかかるかもしれない。
欧州連合(EU)の盟主ドイツのメルケル首相は「EUは目下、英国のEU離脱や難民対策など難問に直面している。EUのかじ取りを担うドイツには安定政権が必要だ」と表明している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。