「戦後リベラル」を葬送するとき

希望の党に公認されない辻元清美氏や赤松広隆氏や枝野幸男氏などの自称リベラル派が、「左派新党」を結成しそうな情勢だ。民進党はこういうガラパゴス左翼を党内に抱えていたため、党としての路線がはっきりせず、昔でいうと「社公民」と「社共」の間をゆれ動いていた。今回の新党は「社共共闘」だから、これで自公と希望と左派の三極になり、争点がわかりやすくなる。

これも既視感がある。1994年に自社さ連立政権に敗れて下野した連立与党の議員が「新進党」を結成したが、96年に社民・さきがけの議員が「民主党」を結成し、この三極で総選挙をやった結果、新進党は政権を奪回できなかった。この結果、新進党の内部崩壊が始まり、1997年末に小沢一郎氏が唐突に「解党」を宣言した。

平野貞夫氏によると、新進党の旧公明党グループが分党するために新進党をいったん解党して年内に再結成する予定だったというが、旧民社党系などが分裂し、再結成の話し合いができなくなった。12月27日に開かれた両院議員総会で、小沢党首が解党の経緯を説明しなかったため、党内が混乱して新党が乱立し、小沢氏も「自由党」をつくらざるをえなくなった。

今はこの時期と似ている。新進党から排除された議員が民主党に集まり、三極で戦った結果、野党は自滅してしまった。それが小選挙区制というものだ。小沢氏は民主党が消えると思っていたのだろうが、自由党が消えてしまい、その後も野党は迷走を続けた。小池百合子氏は自由党で小沢氏について行ったが、自自連立のあと自由党に戻らなかった。

今度の選挙で、希望の党は新進党、左派新党は民主党に近い。希望の党は当時の新進党ぐらいの議席を取って第2党にはなれようが、政権は取れないだろう。左派新党は当時の民主党より小さな勢力なので、ほぼ消滅するだろう。当時はまだ「護憲」勢力が強かったが、希望の党は憲法改正を踏み絵にしてこれを切る。

この点が90年代との大きな違いだ。「憲法9条で平和を守る」などという空想的な議論を国会でしている限り政治は進歩しないし、「国難」に対応する危機管理もできない。外交・国防で与野党の違いはありえないので、今後は経済政策で「大きな政府」のリベラルと「小さな政府」の保守にわかれる英米型の二大政党になることが望ましい。

この点で安倍首相はリベラルだが、「消費増税の凍結」や「原発ゼロ」を打ち出している小池氏は、保守かリベラルか不明で、対立軸にはなりえない。しかし今回の選挙は、1950年代から安保反対で政治を混乱させてきた「戦後リベラル」を最終的に葬るだけで意義があると思う。