【映画評】僕のワンダフル・ライフ

少年イーサンに命を救われたゴールデンレトリバーの子犬ベイリーは、飼い主となったイーサンを慕い、いつも一緒にいて強い絆を育んでいた。だが犬の寿命は人間より短く、やがて別れの時がやってくる。イーサンより先に旅立ったベイリーだったが、ベイリーはイーサンに再会したい一心で、犬種や性別を変えて、生まれ変わりを繰り返すことになる…。

飼い主と固い絆で結ばれた犬が何度も生まれ変わって再会しようと奮闘するファンタジー・ドラマ「僕のワンダフル・ライフ」。原作は、W・ブルース・キャメロンのベストセラー小説「野良犬トビーの愛すべき転生」で、監督は「HACHI 約束の犬」や「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」など、ドッグ・ムービーの秀作を作ってきた名匠ラッセ・ハルストレムだ。犬のベイリーが最愛の飼い主イーサンとの再会を目指すのは「イーサンを幸せにする」ため。これだけでも泣けるのだが、本作はただの動物ものファンタジーではない。イーサンが味わう、家庭や恋、将来の夢などでの苦い挫折を通してみれば、ままならぬ人生の複雑さが見えてくるし、50年間で3度輪廻転生を繰り返す犬の目を通して、アメリカ現代史の移り変わりをも見ることができるのだ。そんな深みがある作品だが、語り口はあくまでも軽やかで、嫌味のない感動作に仕上がっている。

ゴールデンレトリバー、シェパード、コーギーと、生まれ変わる度に、犬種や性別が変わるが、中身は愛すべき忠犬ベイリーのまま。複数のエピソードで語られる涙と笑いのストーリーは、犬好きの心をガッツリとらえて離さないだろう。いや、猫派の私(注:基本的に動物好きです)でも、涙腺決壊状態だったのだから、可愛らしい犬たちの名演技に誰もが魅了されるはずだ。ベイリーの声を担当するのは「アナと雪の女王」でオラフを演じたジョシュ・ギャッド。ちょっぴりおしゃべりが過ぎる気がするが、イーサンに会いたいベイリーの一途な思いを感情豊かに演じて素晴らしい。時に親友として喜びを分かち合い、時に悲しみや孤独を癒し、時には恋のお手伝いも。無償の愛を捧げる犬が人間の最良の友と言われる理由がよく分かる佳作だ。
【70点】
(原題「A DOG’S PURPOSE」)
(アメリカ/ラッセ・ハルストレム監督/ブリット・ロバートソン、K・J・アパ、ジョン・オーティス、他)
(ファンタジー度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年10月1日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。