バチカン高官が小児愛ポルノ所持

長谷川 良

イタリアのフィレンツェの「大聖堂」のファサード(2007年7月17日、フィレンツェで撮影)

世界に12億人以上の信者を抱える世界最大キリスト教派、ローマ・カトリック教会の総本山バチカン法王庁は目下、在米ワシントンのバチカン外交官の不祥事に対する対応に苦慮している。

米国務省側の説明によれば、バチカン外交官は自分が作成した小児性愛(ペドフィリア)ポルノグラフィの所持と拡大の容疑を受け、カナダ側からも同様の容疑を受けているという。

カナダ司法省は、「高官聖職者は昨年、ポルノグラフィーを所持・拡散した容疑で逮捕状を出した」というが、逮捕は実施していない。カナダ側の説明によると、バチカン外交官は昨年12月24日から27日の間、カナダのオンタリオ州南西部エセックス郡のウィンザー市で小児愛ポルノグラフィーを教会のコンピューターを通じてダウンロードし、それを拡大した。米国とカナダ両国の通達を受けたバチカン側は、50歳のイタリア人外交官をワシントンのバチカン公館から急きょ帰任させたばかりだ。

“バチカンのナンバー2”のパロリン国務長官は3日、ローマの法王庁立グレゴリアン大学で開催された「インターネットでの児童の権利の保証」に関する国際会議の場で「バチカン外交官の犯罪は心痛い問題であり、関係者にとって厳しい審査を意味する。問題を深刻に受け取り、公平に取り扱うために専心している」と述べ、バチカン外交官の不祥事を隠蔽したり、軽視する意向のないことを強調している。バチカン放送の質問に答えたもの。

3日間の日程の同会議のタイトルは「インターネット上での未成年者へのモビング(集団でのいやがらせ)、脅迫、性的虐待への戦い」だ。教会関係者ばかりか、政界やビジネス界からも専門家が参加した。

パロリン長官がバチカン側の真剣さを強調する背景には、バチカンの外交担当高官の不祥事がカトリック教会全般に大きなダメージとなることへの危惧があるからだ。

パロリン長官はバチカン外交官高官の犯罪に関する公判の日程などについては明らかにせず、「インターネットで児童の権利を蹂躙する犯罪をなくすために全ての関係者は責任を負っている」と繰り返し強調した。バチカン司法省によれば、小児性愛ポルノグラフィー所持、拡大の容疑で有罪判決を受けた場合、1年から最高5年の刑で、罰金は最高5万ユーロだ。

ローマ法王フランシスコがイタリア日刊紙ラ・レプップリカとのインタビューで、「聖職者の約2%は小児性愛者だ。司教や枢機卿の中にも小児性愛者がいる」と発言し、教会内外で衝撃が広がったことがある。バチカン報道官はその直後、同法王発言を修正したが、小児性愛者がバチカン高官の中にいることはもはや否定できない。ちなみに、(全聖職者約41万人の)「2%」とすれば約8000人の聖職者が小児性愛者ということになる(「枢機卿にも小児性愛者がいた」2014年7月18日参考)。

同性愛者であることを告白したポーランド出身のハラムサ元神父(Krzysztof Charamsa)が「最初の石」(独語訳)というタイトルの本を出版したが、その中で「ペドフィリアや未成年者への虐待事件は教会のメンタリティから組織的に発生してくる現象だ。そして教会側はそれを部外に漏らさないように隠してきた。一種のマフィアのオメルタの掟(沈黙の掟)が支配している」と説明している。

果たしてバチカンは今回、バチカン外交官の不祥事を隠蔽せず全容を解明できるだろうか。パロリン長官を含むバチカン関係者の信頼性が問われることになる。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年10月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。