従来から、政府は経済界に対して「賃上げ」を求めています。
景気が良くなって企業業績や株価が上がってもトリクルダウンが起こらず、広い範囲に恩恵が行き渡っていないことを危惧しているのでしょう。
では、賃上げは実際に可能なのでしょうか?
賃金は労働の対価ですから、労働の質が高くなれば賃金も上がるはずです。
就業者数(または就業者✕労働時間)1人あたりのGDP、つまり労働生産性を国際的に比較すると、日本はギリシャに次いで22位となっています(労働生産性の国際比較2016年版より)。
ちなみに、国民一人あたりのGDPもイギリスに次いで22位と、偶然にも同じ順位です。
日本のGDPの総額は、米中に次いで3位の約529兆円です。韓国約155兆円、ロシア約140兆円に比べると、日本のGDP総額がいかに大きいかが理解できます。
以上の数字から考えれば、1人あたりGDPが低いのは人口が多いから。労働生産性が低いのは、就業者数(または就業者✕労働時間)が多いからだということになります。
就業者数が諸外国に比べて「多すぎる」と言っても過言ではないでしょう。
理屈からすれば、GDP総額というパイは十分大きいのに、就業者数(または就業者✕労働時間)が多すぎるために労働生産性が低くなっているということになります。
ところが、現在の日本では人手不足が叫ばれ、長時間労働が問題視されています。
諸外国比では、就労者は「多すぎる」のになぜ人手不足なのか?、なぜ長時間労働なのか?
考えられる理由の一つは、就労分野間の分配が不平等だということです。つまり、GDPにほとんど貢献していない分野が、ものすごく貢献している分野から搾取している結果として、ものすごく貢献している分野に人手不足、長時間労働というしわ寄せが来ているのです。農業などの生産性の低い分野が過剰に保護されてる日本の現状を考えれば、極めて説得的な理由です。
もうひとつの理由は、同じ就労分野内でも、一部の層が他の層よりたくさんのパイを取っているというものです。
強い解雇規制に守られ生産性が低いにも関わらず高所得を得ている中高年層が、若年層から搾取しているのです。
もっとマクロ的に見れば、収入面でも福利厚生面でも高待遇を享受している大企業の中高年層と、若年層や中小企業従業員との格差が不合理なまでに開いているということです。
以上のような不公平を是正する最も有効かつシンプルな方法は「同一労働同一賃金」です。
「同一労働同一賃金」が完全に実現すれば、一部の層が他の層から搾取するということがなくなります。生産性の高い長時間労働をすれば、破格の報酬という見返り来ます。
「同一労働同一賃金」を実現する最も有効な方法は、解雇規制の撤廃・緩和であることは言うまでもありません。
賃金に見合った仕事ができなければ契約期間終了後は解雇されて次に相応の職に就く。
受け皿も格段に広くなるので失業の心配もありません。この点については以前も書きましたが、今般改めて強調する次第です。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年10月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。