現在、「電子ペーパー」と称するものが商品化されていますが、私がここで指すものはフルカラーの「曲がるディスプレイ」とご理解ください。
その種の「電子ペーパー」が廉価で商品化されるのは時間の問題だと思われます。
他方、今年始動する三菱UFJ銀行の「MUFGコイン」や、みずほフィナンシャルの「Jコイン」などに代表される仮想通貨が、1円や10円といった小額の決済をネット上で可能にすると考えられています。それによってコンテンツビジネスに大きなイノベーションが引き起こされるとの予測は以下の記事にまとめました。
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とりあえず、ここでは仮想通貨と呼ばず、広義の「電子マネー」としておきます。
自動車の登場が街から馬車を一掃したように、私たちはこれまでテクノロジーが古い産業を一掃してしまうイノベーションを絶えず目撃してきました。
インターネットが登場した当初、従来の新聞と出版に代表される紙媒体は将来滅びるとの予測が囁かれました。しかし、それはいささか急進的な予測でした。というのも、本格的なネット社会が到来して20年が経った今、たしかに紙媒体は衰退しましたが、私たちの眼前にあるのは、依然として両者の共存が保たれた現実だからです。
どうやら、紙媒体にトドメを刺すにはインターネットの存在だけでは不足であり、電子ペーパーと電子マネーの本格実用化も必要だったようです。それによって生まれる製品やサービスはどのようなものか、私なりにイメージしてみました。
上の人物は、夕刊紙サイズの電子ペーパーを手にしています。これは両サイドに開くだけでなく、ちょうど手に持っているところで折りたためるので、ビジネス鞄に収納することもできます。装置部分はバッテリーやCPU等です。
電子ペーパーと新聞の銘柄は、プラットホームとソフトウェアの関係であり、これ一台あれば様々な種類の新聞が好きな時に読むことができます。
従来の「月極支払い」や「一部売り」や「配達」の常識は完全に終焉します。代わって、その日に読みたい新聞をワンクリックで購入する形が主流になるでしょう。それどころか1円や2円といった超低額で「読みたい記事だけ」の購入も可能になります。
電子新聞なので動画や音声も付けられます。ニュース映像も付くとしたら、新聞・テレビの垣根が崩れることになります。速報が瞬時に紙面に反映できるので、時事ネタのタイムラグもありません。タッチ操作で記事の“切り抜き”や保存も可能。読むのが面倒な人は、記事を指定して、音読ソフトを起動すればいい。ラジオのニュースに近くなる。
このように“新聞”が映像を流したり、喋ったりすれば、従来の新聞の概念そのものが崩れることになります。
しかも、この電子ペーパーは、新聞表示に適したサイズですが、新聞専用ではない。よって、たとえば、ある日の通勤列車の中を覗いてみると、ある人はこのデバイスを使って本や週刊誌を読み、ある人は「少年ジャンプ」や女性ファッション誌を見、ある人はテレビ・映画を視聴し、ある人はゲームをやり、ある人は誰かとテレビ電話し、ある人は文書を記しながら仕事をし・・といった光景が繰り広げられていると思われます。
デバイスは、利便性を考えると、一般新聞紙サイズよりも、夕刊紙サイズ(縦40・6センチ、横27・3センチ)のほうが妥当だと思います(ページを開くと横幅は54・6センチになる)。これだと、夕刊紙のように真ん中を折りたためばA4サイズよりもやや小さめになり、ビジネスバックなどに余裕で収納することが可能です。
モバイルタイプの画面は縦13~15センチ・横20センチほしい
さて、電子ペーパーの標準的な規格として、上の「タブロイド版」のほかに「モバイルタイプ」がどうしても必要です。「タブロイド版」が新聞の表示に重点を置いたものなら、従来の「本」に比重を移したものが「モバイルタイプ」になります。
果たしてどれくらいの画面を確保するのが妥当でしょうか。ずばり、私は「文庫判」の、しかも「見開き」サイズを推奨します。
きっちりした数字にすると、縦15センチ、横20センチの画面になります。このサイズはまた、欧米のペーパーバックを開いたサイズにも近似している。
ただ15センチというと、今使い慣れているスマホに比べて、やや長めになります。だから文庫の上下にあるページの余白を少し削る意味で、縦13センチまでは検討範囲かと。このサイズは以前の記事でも推したことがあります。
たいていの本は文庫化されているので、ソフトは無尽蔵です。ただ、このサイズにこだわる訳はむしろマンガなんですね。マンガのコマ割りはページをまたぎます。「見開き」をドンと使ったシーンも少なくありません。それを半々表示で切断してしまうことは、作品のオリジナリティを損なうことになります。マンガは今や世界中の人々が楽しんでいるソフトである現実を考慮しなければなりません。
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(フリーランスライター・山田高明 個人サイト「フリー座」)