プロ野球のドラフト制度は独禁法違反だ ⁉︎

荘司 雅彦

プロ野球のドラフト会議が終了しました。
注目の清宮選手は、(私が個人的に最も注目していた)宮台選手と共に日本ハムファイターズが交渉権を獲得しました。

このドラフト制度、私は独占禁止法に該当する可能性が高いのではないかと思っています。
アメリカンフットボールのドラフト制度を、米国ではシャーマン法(独禁法)違反と認定した事例が結構あるのです。日本の独禁法は、3条で事業者は「不当な取引制限をしてはならない」とした上で、2条6項で次のように規定しています。

この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

本条の「取引の相手方」をドラフト対象選手とすると、12球団が共謀してドラフト対象選手の契約金の高騰を抑えていると解することもできます。

自由競争が行われれば、おそらく清宮選手などは各球団から巨額の契約金が提示されるでしょう。
12球団がドラフト制度で自由競争をしないことで、自由競争であれば得られたであろう契約金が不当に低くされているのです。

これは、プロ野球選手になろうとしている人たちにとっては実に由々しき問題です。
なぜなら、ドラフトで指名されて入団しても必ずしもスター選手になれるとは限りません。
おそらく、多くの選手はスター選手になれずに退団し、その後の厳しい人生を送ることになります。
これだけのリスクを取っているのに、12球団の共謀によって(自由競争であれば得られたはずの)契約金が大幅に抑制されているのです。

プロ野球側としては、独禁法2条6項の「公共の利益に反して」いないと主張するでしょう。
その根拠として、(かつての巨人のように)一つの球団に強力な選手が集中するとゲームが面白くなくなり観客の楽しみが奪われるので、やむなくドラフトで戦力を均等配分しているのだと。

しかし、「巨人、大鵬、卵焼き」の時代ならともかく、今の時代、巨人に行きたがる選手ばかりではありません。ファンもバラついています。一昔前のように、巨人戦だけをテレビ中継していた時代ではないのです。

各球団が獲得合戦をして相応の契約金を払うようになれば、もっとプロ野球を目指す若者が増えるのではないでしょうか?

才能ある高校球児が大学に行くのは、教員免許という保険をかけておかないと後々困るからではないかと私は推測しています。希望の球団に入団することができれば、獲得球団としてもメジャーのための腰掛けにされることも少なくなると思います。

ということで、公正取引委員会は、是非ともプロ野球のドラフト制度を調査していただきたいと思います。
自由競争を阻害しているのは明らかですから。

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荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。