2020年の東京オリンピック、パラリンピックの会場が整備される東京都臨海部の人工島「中央防波堤」を巡って、大田区と江東区の間に争いが生じています。
松原大田区長は、江東区に86.2%、大田区に13.8%を帰属させるという都の調停案の受け入れを拒否し、大田区を被告として提訴することにしました。
そもそも、埋立地の所有権はどうなっているのでしょう?
以前書いたように、水はすべての人の公共財であり海辺や海岸に私的所有権を設定することはできません。
人間にとって水は生きるために必須のものだからです。
では、今回のように東京湾を埋め立てた場合の埋立地の所有権はどうなるのでしょう?
公共水面埋立法という法律があり、埋め立てには知事の承認が必要となります。
土地所有権取得権説によると、知事の承認が特定埋立地の土地所有権を設定する行政処分であり、その承認の際、埋立地の用途等が決められていると説きます。
例えば、民間企業が、公共利用等様々な用途や計画を示して知事の承認が得て埋立工事を竣工すれば、埋立地の所有権を取得することができるのです。ウオーターフロントのマンションの中には、もしかしたら同手続を経て底地ができたものもあるのではないでしょうか?
ところで、本件「中央防波堤」は、東京都が埋立工事をしたのでありましょう。
だとすれば、土地所有権は東京都に帰属します。
詳細はわかりませんが、もしかしたら、江東区や大田区も埋立手続きに参加しているのかもしれません。
いずれにしても都知事の承認段階で所有権の帰属は決まっています。
そこで、大田区としては、江東区を相手取り「境界確定訴訟」を提起したのです。
「境界確定訴訟」は所有権の帰属を争う訴訟ではなく、隣接地との境界を裁判所に決めてもらうよう求める形式的形成訴訟です。
詳細が不明なのであくまで推測に過ぎませんが、東京都の所有地を特別区(江東区と大田区)に割り振るための明確な基準が法律や条例で規定されていないのかもしれません。
もし、規定されていれば、都の一存で割り振りができると考えるからです。
境界確定訴訟は、裁判官泣かせの訴訟として有名です。判決を書きたくないことから、次の人事異動で自分が担当から外れるまで長引かせてしまう不届きな裁判官もいました。
今回の人工島の特別区同士の境界、はたして裁判所はどのように定めるのでしょうか?
過去の埋立地の帰属事例、埋立にどれだけ貢献したか、それ以前の利用状況等々、判断要素は多岐にわたりそうです。
もちろん、境界線を定める判決書を書きたくない裁判官は、必死になって和解を勧めるでしょうけど…(^^;)
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年10月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。