日本発コンテンツとして世界へ向かうシャインマスカット

シャインマスカット(Wikipedia:編集部)

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

日本農業新聞さんのシャインマスカットに関する記事が、11月2日のYahooトップニュースに取り上げられていました。この記事を見た時、「日本発のフルーツが本当に世界に注目された瞬間だ」と私は感じました。これまでも「日本の果物は海外で人気」という記事はあちこちで目にしてきました。「日本のイチゴが1粒2,400円で香港の富裕層に売れている」「日本のイチゴ品種が韓国に流出するニュース」など、私も海外で日本のフルーツが受けていることを記事に取り上げてきました。

しかし、今回のシャインマスカットのヒットは過去に海外でフルーツ外国人に人気!という状況とは違います。今回、ニュース記事を掘り下げて詳しく解説してみたいと思います。

日本のフルーツはおいしいが「売れない」

私は日本のフルーツの品質は世界一だと確信しています。「お前は全世界のフルーツと食べ比べたのか?」と聞かれると海外産フルーツはアメリカ産とヨーロッパ産以外は食べたことがないので、その答えはNoですし、そもそもおいしさを客観的に示すことは簡単ではありません。しかし、それでも間違いなく「世界一高品質かつおいしい」といい切っていいと思います。

日本のフルーツは生産者がおいしく、美しくなるようにまさに命をかけて一生懸命作っていることを私は知っています。私は日々、膨大な量の果物を手に取り、目にする立場にありますが、どの果物も惚れ惚れするほど粒ぞろいで、形が美しく、香り高いものばかりです。「これだけのものを作るのに、一体どれだけの労力をかけているのだろう」と思わされます。世界でこれだけいいフルーツを作れる生産者が日本以外でいるでしょうか?いえ、間違いなく日本を置いて他にはないでしょう。オランダのようにアグリビジネスに力を入れて、低コストで効率よく生産している国はあるでしょうが、こと品質についていえば日本はまさにオンリーワンであり、ナンバーワンだと思います。

しかし、世界での日本のフルーツ戦果は芳しいものではありません。それは毅然たる事実として、データが突きつけています。次の表を見てください。これが現状の日本のフルーツ輸出額ランキングの現実です。

 順位 国別 2016年輸出額(USD) シェア
  世界トータル 108,659,225 100.0%
1 アメリカ合衆国 14,062,381 12.9%
2 スペイン 9,058,300 8.3%
3 オランダ 6,718,785 6.2%
4 チリ 5,879,935 5.4%
5 メキシコ 5,540,524 5.1%
6 中国 5,484,752 5.0%
7 イタリア 3,924,167 3.6%
8 トルコ 3,873,872 3.6%
9 ベトナム 3,170,955 2.9%
10 南アフリカ 2,887,638 2.7%
58 日本 190,426 0.2%

データ出典元:Trade map International trade statistics ”List of exporters for the selected product Product: 08 Edible fruit and nuts; peel of citrus fruit or melons”

表はデータを使って筆者が作成

 

日本は世界ランキング58位、シェアにして0.2%です。「世界にフルーツを輸出して成功している」とはいえない状況であることは明らかです。どんなにおいしくても世界で売れていない、これが現状です。でもこの状況をシャインマスカットは変えてしまうかもしれません。

シャインマスカット人気は「本物」

今回、話題に上がったシャインマスカットは2006年に登場した比較的歴史の浅い品種ですが、登場と同時に瞬く間に人気を博しました。

当店、肥後庵では秋の味覚にたくさんのフルーツが出揃います。秋スイカ、マスクメロン、巨峰、豊水梨、新高梨、太秋柿、極早生みかん、そしてシャインマスカット等などバラエティ豊かなフルーツがあります。しかし、シャインマスカットの人気は突出していることが、売上データを分析して分かりました。秋の売上データをチェックしてみたところ、シャインマスカット単品、もしくは他のフルーツとの詰め合わせがの売上割合は、9月が36.0%、10月は31.6%と全体の3-4割を占めます。用途は企業の接待手土産や出産内祝い、結婚内祝いに加えて、誕生日プレゼントなど様々で、贈り先の年代層も老若男女問わず大人気です。ちなみにシャインマスカットは昨年も2年前も人気でした。どころか、むしろその割合はどんどん拡大しています。

フルーツの世界も品種で流行り廃りがあります。テレビ番組で健康やダイエット効果を取り上げられると、一時的にものすごく売れて品薄になる光景はよく見られることです。飛ぶように売れるかと思ったら、翌年はサッパリ…ということも。ですが、シャインマスカットは登場して今年で11年、その人気は留まることを知りません。お世話になっている生産者さんの中には「今後は冬にも収穫し、販売できるように品種改良に挑戦したい」と意気込んでいる方もいます。

どうやらシャインマスカット人気は本物のようです。

シャインマスカットは日本のフルーツ輸出の状況を変えるか?

日本農業新聞さんの記事には、シャインマスカットの素晴らしい戦果を次のように取り上げています。

農水省によると、シャインマスカットを含むブドウの輸出額は大きく伸びている。主な輸出先は香港、台湾。16年の輸出額は約23億円で12年と比べ5倍ほど伸び、輸出量は1000トン以上(12年比約3倍)となった。

引用元:日本農業新聞「人気 世界規模に ブドウ「シャインマスカット」活況」

香港や台湾といった近隣のアジアへの輸出が4年間で5倍伸びたとあります。これは一時的な流行りや、一部の富裕層に小ぢんまりと受けているこれまでの状況と異なり、輸出額の明らかな伸びです。また、シャインマスカットについていえば、日本人が海外に向いて百貨店などでPRするのではなく、外国人が日本にやってきてシャインマスカットに関心を寄せている状況です。

千葉市で10月に開かれた展示会「日本の食品 輸出EXPO」。試食コーナーに海外バイヤーが群がっていた。お目当ては岡山、長野産シャインマスカット。ロシアのバイヤーは「地元の高級すしレストランでデザートに出したい。他のブドウが酸っぱく感じる」と目を見張る。その日、コーナーの人垣は終始途切れることがなかった。

とあり、まさに世界が日本のシャインマスカットに注目しています。

私はこのシャインマスカットを皮切りに、日本のフルーツが海外に注目されグローバルに通用するコンテンツになることを心から願っています。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。