いま世間で話題の「舌切り雀勉強法」とはなにか?

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写真は講演中の樺沢医師。

アゴラでは、「出版道場」という出版ニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。その影響もあり、著者や出版社から献本されることが非常に多い。そのなかで特に良著と思われるものを記事にして紹介している。今回、紹介するのは『絶対にミスをしない人の脳の習慣』。著者は、精神科医、作家の樺沢紫苑(以下、樺沢医師)氏。

「日本で最もインターネットに詳しい精神科医」として、雑誌、新聞などの取材やメディア出演も多い。最近では、NHK『テストの花道 ニューベンゼミ』にて受験生に効率のよい勉強法を紹介し話題になった。精神科医の見解であることも興味深い。

「メモ魔」ほど理解度が浅い

――学生時代、ひたすらメモを取っている人はいなかっただろうか。一心不乱に「聞き逃さないぞ!」と 言わんばかりのオーラをまといすごい勢いでメモをとる人を。

「私は、セミナーや講演会を開催しますが、受講生のなかで、ものすごい勢いでメモをとっている方がいました。セミナーの最後の質疑応答で、誰からも質問の手が挙がらなかったので、私はその『猛烈メモ郎』さんを指名して、『質問はありよせんか?』と直接、聞いてみました。どのような反応があったでしょうか。」(樺沢医師)

「あれほど必死にメモをとっていたんだから、『深い質問』をしてくれるのではないかと期待しました。『猛烈メモ郎』さんは言いました。『特にありません』。質問の1つもないとは。質問がないということは、『学びがなかった』のと同じことです。」(同)

――学びがあれば、それにともない疑問や質問が出てくるものだ。そういえば、学生時代、ひたすらメモを取っている人ほど成績が伴わなかったような記憶がある。

「こういった人は、どこにもいらっしゃいますが、懇親会などで直接話してみるとどなたもセミナー内容の理解度が低いのです。あなたの会社にも、会議で聞き逃すまいと、必死にメモをとっている人がいせんか?そうした人に限って、ポイントのズレた発言をしたり、上司の真意を理解していなかったりするものです。」(樺沢医師)

「インプットしたはずなのに記憶されていない。インプットしたはずなのに間違って理解している。これはインプット・ミスの、よくあるパターンです。」(同)

「書くこと」に没頭する人

――なぜ、メモをたくさんとるほど、学びが少なく理解も浅くなるのだろうか。それは、「書くこと」に没頭しているからだと、樺沢医師は指摘する。

「脳のキャパシティのほとんどを、『書く』ことで消費しているために『理解する』『考える』に余力が残っていないのです。講義内容を『書く』だけの、筆記マシンになっているということです。驚かれるかもしれませんが、『聞き漏らさないよう欲張ってすべてをメモしよう』とすると学びは少なくなってしまいます。」(樺沢医師)

――樺沢医師は、欲張らない勉強法を「舌切り雀勉強法」と呼んでいる。知らない人のために、「舌きり雀」のストーリーを紹介しておこう。

--ここから--
昔々、あるところに、優しいおじいさんと意地悪なおばあさんがいました。ある日、ケガをした雀をおじいさんが助けます。それに嫉妬したおばあさんが腹いせに雀の舌を切って逃がしてしまいました。おじいさんが山に雀を探しに行くと、雀のお宿があり、おじいさんは歓迎され、お土産に2つのつづら(カゴ)を差し出されました。

おじいさんは、自分は年寄りだからと小さいつづらだけ持って帰りました。するとその中には財宝がたくさん入っていました。それを開いた強欲なおばあさんは、雀のお宿に押し入り、大きなつづらを持って帰ります。開けると、中から怪物が出てきました。
--ここまで--

「強欲な人は『バチがあたる』。これがこの物語の教訓なのですが、情報のインプットにも同じことが言えるのです。たとえば、コンビニに1度に100人のお客さんが押し寄せたら、レジフル稼働で対応しても、レジに人が並びきれなくなって、店内はパニック状態になります。人間の脳は、一度に処理できる情報量に限りがあります。」(樺沢医師)

脳の交通渋滞を防ぐ

限界を超えると、脳の交通渋滞が発生する。情報がまったく流れなくなる。「すべてを聞き逃さないぞ!」と意気込むほどに、脳の交通渋滞は激しくなり何も学べない状態に陥る。そうなったら聞いた内容は頭に入ってこない。最近の大学の講義はメモを取らずに聴く事に集中させ最後に写メを撮らせることが多い。これも同じ理由によるものだろう。

脳が「健康」で「絶好調」の状態で活動すればミスが無くなる。さらに、心と体に、絶好調のパフォーマンスを実現する。本書は医学的な見地から、「脳」の機能についてわかりやすく解説している。仕事の効率をアップしたいビジネスパーソンには参考になるだろう。

参考書籍
『絶対にミスをしない人の脳の習慣』(SBクリエイティブ)

尾藤克之
コラムニスト

<第3回>アゴラ出版道場開催のお知らせ
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