空き家問題対策には、不動産流動化を!

昨今、亡くなった両親の実家などを「空き家」のまま放置し、全国的に空き家が増加しているという問題が発生しています。管理する者が近くにいない空き家は、倒壊の危険性や犯罪の温床になる恐れすらあります。

遺族たちが空き家のまま残しておくのには様々な理由があるでしょうが、賃貸の手間と売却する際のコストも大きな理由として挙げられます。

空き家を貸すと、家の修繕義務など賃貸人としての義務が発生します。
賃借人によっては「賃料不払い」を繰り返したり賃貸人に対してあれこれとクレームを付ける者もいるので、賃料の割には管理の手間が割に合わないことが多々あるでしょう。

一番スッキリとする解決策は、家土地丸ごと売却してしまうことです。
しかし、売却には以下のような大きなハードルがあるのです。

まず、譲渡所得税が課税されます。
バブル期ほどではないにしろ、(とりわけ土地に関しては)取得価格よりも値上がりしていれば、それなりの税金を収めなければなりません。

現状で、譲渡所得税よりも悩ましいのが不動産業者の仲介手数料です。
宅地建物取引業法によって仲介手数料の上限が定められていますが、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)に加入している業者の多くは手数料の上限を適用しています。

400万円を超える物件の場合、売買価格✕3%+6万円+消費税で、売主と買主の双方から手数料を受け取ることができます。

価格が2000万円だとすると、129万6000円の手数料が売買当事者双方から受け取ることができるのです。現に、近年ご両親を亡くした私の友人は、あまりの高額な手数料を見て、亡父名義の不動産売却を躊躇して現在に至っています。

弁護士や司法書士、行政書士等の士業の方々からすれば、不動産売買の仲介をするだけで何百万円もの手数料が入ってくるのは羨ましい限りではないでしょうか?

もちろん、不動産によっては調査等が厄介な物件もあるので、一概にボロい商売だと決めつけることはできません。また、昨今は、(ほんの一握りながら)大手業者が手数料を下げる方向で動いています。

このように、地価の下落が進んで譲渡所得税がかからないのに不動産の流動化が進まないのには、高額な仲介手数料というハードルがあるのです。

法律で手数料の上限を下げる必要はありませんし、個人的には上限など撤廃しても構わないと考えています。その代わり、業者間の競争を促進して手数料ビジネスの透明化と公正化を図るべきだと考えます。銀行が自己所有物件の一部を賃貸する際に課している制限も撤廃すべきでしょう。

不動産価格が上昇を続けたバブルの時代であれば、不動産の過度な流動化は「地上げ」などの非合法的活動を生みましたが、今はそのような心配はありません。

不動産市場の規制緩和と透明かつ公正な競争の促進が実現すれば、市中のマネーストックも増大し、マクロ景気の回復にもつながるのではないかと期待している次第です。

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編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年11月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。