「冬にスイカを食べる」という贅沢な選択

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

スイカは好きな人にとっては最高の季節、それはやっぱり「夏」ではないでしょうか?夏にはあちこちでスイカが並べられているので、「手軽に、安く、大きいスイカ」を買うことができます。いつしか夏の季節が過ぎ去っていき、秋、そして冬になると店頭の顔のように鎮座していたスイカはどこかへいってしまいます。11月中旬過ぎの今、スイカをスーパーで見かけることはもうありません。

寒い時期に店頭からスイカが消えてしまったからといって、真のスイカ好きな人がスイカバーで我慢するということはありません。彼らは秋や冬にもスイカを置いてあるお店を見つけ出してしまいます。「そこまでしてスイカを食べたいのか?」と思われるかもしれませんが、でも好きなものは年中食べたい、というのは人間が本来持ち合わせている感情から来る自然ものです。需要あるものは必ず誰かが供給するようになっていて、それが経済の仕組みでもあります。

ぶっちゃけ、冬のスイカって「あり?なし?」ということについてお話をしたいと思います。

冬のスイカは夏に負けない暑さの中で作っています!

当店、肥後庵の現バイヤーは元々スイカを26年作っていた生産者でした。その時の経験をよく聞くのですが、果物を作る生産者は本当に大変だなあと思います。朝は日が昇る前に起き出し、昼食後は少しばかりの昼寝をして体力回復に努め、日が落ちる前まで働いた後は家の電灯の下で受粉させる作業が待っています。朝も昼も夜もスイカにつきっきり、こうして手塩にかけたスイカを食卓にお届けしているわけです。特に高級贈答品となると1つ1つの果物を丁寧に、時間をかけて育てていくのでそれはもう人間のお世話顔負けに頑張っています!

そんな生産者の方は冬のスイカを夏に負けない暑さの中で作っています。本来暑い時期に身をつけて太るスイカが冬にできる理由は、ズバリ夏と同じような環境を作り出しているからです!ハウスに暖房を炊き、真冬にTシャツでも汗をかくくらいの暑さの中で作業をしています。「ハウスの外は極寒、ハウスの中は真夏」という環境を作り出して一生懸命育てています。これにより、冬のスイカも甘い果汁滴らせ、シャリシャリとたまらないおいしい出来栄えになります。

塩分の多い冬料理に登場する極上スイカ

冬の季節はおいしい食材が出揃いますよね!海鮮も脂が乗っていて、果物もいちごやデコポンが並び、そしてお正月にはおせち料理など寒い季節に温かいものを食べる。これにより、体の中からポカポカと暖まる幸せを実感できることが冬の幸せだと思いませんか?

寒い季節にコタツに入り、おいしいものを食べる。いつまでもこうしていたい。ずーっと食べて、温まって、寝続けたい、という欲望、これははもしかしたら動物が本来持ち合わせている「冬眠」という本能が人間のDNAに刻まれているのかもしれません。私も毎年、「今年の冬はしっかりとした気持ちで食っちゃ寝の冬を送らないようにしよう!」と思うのですが、油断するとお正月三が日は簡単に堕ちてしまいます。冬の食っちゃ寝に抗う意志の力は相当な強さを持たなければいけません。

でもこうした食っちゃ寝生活のつけは利息がついて後からその代償を支払うときがやってきます。パクパク食べて、グーグー寝ているとその快楽に脳みそは喜ぶかもしれませんが、内臓は悲鳴をあげています。そう、このような生活はズバリ健康によくありません!特に冬料理は塩分の多い料理がたくさん、お鍋ばかりだとどうしても塩分過多になります。

そこで登場するのは冬のスイカです。スイカに含まれる果糖は「甘いけど太りにくい」という快楽と健康の間で揺れ動く人間にとってあまりにも都合のいい食べ物です。更にさらに塩っ気の多い冬料理で溜め込んだ塩分を外に排出するカリウムも豊富に含まれています。もうメリットだらけじゃないですか冬のスイカは。「塩分の取り過ぎで高血圧が心配」「脂肪の取り過ぎでメタボが気になる」そんな冬のグルメに悩む人こそ、健康デザート冬のスイカを頂く贅沢な体験がオススメです。

意外に多い冬にスイカを求める人たち

秋、冬とどんどん寒くなるにつれて一般の店舗でスイカの取り扱いが終わると、当店でスイカをお求めになるお客さまが増えます。お客さまとやり取りする中で「この時期にスイカを扱っている店舗がほとんどないから助かった!」「スイカが一般に出回っていないからこそ贈り物にしたい」といわれます。それは個人のお客さまだけではなく、法人でお祝いやお歳暮にスイカを贈られる方もいます。「冬にスイカを食べる人なんていない」と世間では思われるかもしれませんが、実際には意外なほど多いなと感じます。やっぱり夏だけではなく、おいしいものは秋や冬にも食べたい!という人の想いがある限りは今後も寒い季節にスイカが生産されるでしょう。

「スイカは夏に食べるものでしょ!」というのはほとんどの人が持っている考えです。ですがあえて季節を外して贈り物にするとスイカ好きの方には喜ばれますし、塩分の多い冬料理の健康デザートとして食べて頂けるので未体験の方はぜひ検討してみて下さい。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。