トランプのアジア歴訪、僕はこう読む!

田原 総一朗

ホワイトハウスFacebookより:編集部

トランプ大統領の日本、韓国、そして中国の訪問が終わった。日米首脳会談後の記者会見では、日米は北朝鮮に対する圧力を「最大限に高める」とトランプ大統領は繰り返した。

さらにトランプ大統領は、「北朝鮮の脅威は看過できない。戦略的忍耐の時代は終わった」と語り、安倍首相は、「全ての選択肢がテーブルの上にあるとの立場を支持する」と受けている。これは「武力行使」を認めたということなのか。

アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、当然ながら北朝鮮は、韓国や日本に反撃するだろう。ミサイルが撃ち込まれたら、日本の自衛隊はどうするのか。国民が最大に恐れているのは、その点である。だが、記者会見ではなぜかその質問が出ない。新聞でも触れていない。

トランプ大統領は韓国でも、「北朝鮮への圧力を高める」と同じことを述べている。しかし、実はこれ以上、日本も韓国も、「最大限圧力を高める」術はない。圧力を高められるのは、中国だけなのだ。北朝鮮の貿易の9割方は、対中国だからだ。これを止めれば、たちまち北朝鮮は経済破綻に追い込まれるだろう。

また、原油を送るパイプを止めれば、北朝鮮の生活は成り立たない。中国が本気になれば、北朝鮮を潰すことはできる。

だからこそ、トランプ大統領が中国に、どこまで迫るのかが注目だった。ところが中国は、トランプ大統領を大歓迎し、28兆円のアメリカ製品を買うと約束した。中国はトランプ大統領の「ディールに応えたのだ」と報じられた。そのためか、トランプ大統領は習近平主席に、北朝鮮に対する制裁を強く求めなかった。

トランプ大統領は、中国に対して、「北朝鮮との金融・貿易関係を絶つべきだ」と強く迫った。だが、習近平主席は「対話による解決が重要」という答えだった。これに対し、トランプ大統領はそれ以上、強く迫らなかった。そして共同会見では、「安保理の制裁決議の完全な履行」というところにとどまったのだ。

トランプ大統領は、そのうえで、米中は「Win-Win」の関係だと強調している。対して習近平主席は、「太平洋には中国とアメリカを受け入れる十分な空間がある」と、米中で太平洋を仕切ることを示唆した。

結局、トランプ大統領も、北朝鮮問題には触れず上機嫌だった。いったいこれを、どう判断すればよいのか。

朝日新聞は、「巨額商談、かすむ北朝鮮」と報じている。まさにその通りだろう。だが、であればこそ、日本でのトランプ大統領、安倍首相の記者会見の際、「武力行使」に日本が協力する可能性を、もっと強く問うべきだった。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2017年11月16日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。