政府でいま重点的に取り組んでいる政策が「働き方改革」、柔軟で多様な働き方をしやすくすることです。一つの会社で週5日、朝から晩まで働くという従来のスタイルは安定的である一方、画一的なため子育てや介護との両立が難しく、女性や障がい者など時間的・体力的に制約がある立場の方が、働く機会を得ることを難しくしている側面がありました。
人口減少時代だからこそ働き方を柔軟にし、意欲ある人はみんな働くことができる社会にすることが重要です。
そして同時進行で異なる職場、異なる仕事をする「兼業・副業」も、新しいビジネスの開発や起業の機会を増やす意味からも意義があります。
終身雇用の慣行だった日本企業では、会社の許可なく、複業や副業を禁止するところが主流でした(中小企業庁の調査では85%)。その中で歴史ある企業であるロート製薬が副業解禁に踏み切ったことは先進的であり、将来を見据えた取り組みです。
「副業、アバウトに始めていいじゃない」ロート会長 : NIKKEI STYLE
日本で初めて福山市が兼業・副業限定で戦略顧問募集
そして、行政からもモデルケースを提起していくことが重要です。
きのう(15日)、私の地元、広島県福山市が、転職サイトのビズリーチと提携し、日本の自治体で初めて「兼業・副業限定」による戦略顧問を募集する取り組みを報道発表しました。
具体的には、女性や若者にとって活力と魅力のあふれる街づくりの戦略立案に際し、ヒアリングや行政データ分析など専門的見地から貢献できるプロのビジネス人材を探しています。(応募の窓口は「ビズリーチ」の特設ページになります)。福山には人口減少の波がまだ訪れていないものの、30代前半の女性の転出増加が懸案になっています。早い段階から行政の発想にとらわれず、民間で働く方の知恵を借りて先手を打つという戦略です。
テレビ東京のWBSでも報道されました。
広島・福山市が公募 地域活性化に“副業”の力を!
ビズリーチ社内で記者会見も行われ、枝広直幹市長は「行政という勝手に固まってしまう組織をシェイクしてもらうことを期待したい」と意気込みを語られたそうです。
記者会見では「なぜ兼業・副業での顧問採用なのか?」という質問も出たそうですが、都市部の民間企業同士でも激しい人材獲得競争が繰り広げられているのが実情です。地方の自治体が優秀な人材を採用したくても、完全雇用となると、待遇だけでなく、東京から移住するかどうか、家族はどうするかという問題もあります。
しかし、「兼業・副業」であれば、たとえば「週1日は福山で働いて地域活性に知恵を絞り、あとの6日は東京で働いたり、家族と過ごしたりする」というスタイルも可能です。もちろん「地域に骨を埋める覚悟がなければダメだ」というご意見もあるでしょうが、できるだけ柔軟な発想での雇用形態を認めることで、地域貢献に意欲がある優秀な人材が地方の自治体や企業と出会うチャンスを増やすことのほうが成功しやすいのではないでしょうか。
テクノロジーの進化でさらなる働き方(生き方)の多様化を
地方創生の担い手の確保については、総務省としてもこれまで取り組んできました。
地場産品の開発から農林水産業への従事、住民の生活支援などに取り組む「地域おこし協力隊」制度がスタートして8年、昨年までに875の地域で、約4000人が活躍していますが、一部で兼業・副業を認めています。これにより収益性を高めるだけでなく、3年の任期が切れた後の生業につなげ定住を促す意味でも成功している事例があります。なお、自治体によっては地域おこし協力隊も兼業・副業を可としているところもあります。
鹿児島県長島町では今年2月、慶応大学SFCと協力関係を締結し、協力隊制度を活用してSFCの研究員を「地域おこし研究員」として任用しています。以前から、SFCの学生とOBが移住しECサイト構築や、ネットを活用した通信制高校などで成果をあげており、大学側も、eラーニングやビデオ会議のシステムを使って遠隔で指導や助言する取り組みを行っているそうです。
インターネットの普及など、テクノロジーの進化で、都市部との地方との間の時間的、物理的障壁がなくなりつつあります。総務省でもテレワークを推進していますが、今回、枝広市長が「福山の取り組みが全国に広がるようにしたい」と抱負を述べられているように、兼業・副業人材のチャレンジが成功し、多様な働き方が普及するように国政の立場から後押ししたいと思います。
同時に、福山という街が柔軟な働き方ができ、やりがいのある仕事がある「福業」の街として多くの方に知ってもらえる機会になればと願っています。
編集部より:この記事は、総務政務官、衆議院議員の小林史明氏(広島7区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2017年11月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林ふみあきオフィシャルブログをご覧ください。