「テロ死者数が2年連続減少」

テロ襲撃による犠牲者数が昨年、一昨年に続いて減少した。オーストラリアに本部を置くシンクタンク「経済平和研究所(IEP)」が15日、グローバル・テロ指数(GTI)を公表した。IEPによると、昨年、テロの犠牲となった死者数は2万5673人だった。前年比で13%減少、2014年比では22%の減少となった。IEPは、シリアとイラクでイスラム過激派テロ組織「イスラム国(IS)が敗北を繰り返し、イスラム過激派との戦闘は大きな転換期が到来していると分析している。以下、IEPの2017年GTI報告書の概要だ。

欧州だけをみると、昨年は826人がテロの犠牲となっている。そのうち、658人はトルコで発生した(IEPはトルコを欧州に加えている)。ただし、今年、欧州は犠牲者数が減少するとみている。特に、対テロ対策関係者がテロ発生前にテロ襲撃事件をキャッチするケースが増えているからだ。ただし、車両をテロに利用するテロ事件は増加傾向にある。

▲世界のテロ犠牲者数の動向(出典Institute for Economics and Peace (IEP)、オーストリア通信から)

▲世界のテロ犠牲者数の動向(出典Institute for Economics and Peace (IEP)、オーストリア通信から)

テロ活動の大多数はアフリカ、中東、アジアの地域で発生している。5人に4人はそこでの犠牲者だ。ただし、犠牲者数は減少傾向にある。例えば、ナイジェリアでは、テロ組織、ジハード主義組織「ボコ・ハラム」の犠牲となった死者数が前年比で80%と大幅に減少している。パキスタン、シリア、アフガニスタンでも死者数は減少した。ただし、イラクではISの襲撃で前年度比で40%急増し、9765人だった。

死者数は減少したが、懸念材料はシリアとイラクの治安問題だ。具体的には、テロが両国の政治安定にどのような影響を与えるかが決定的な問題となる。例えば、持続的な統合社会として平和を維持できるかがイラク政府の大きな課題だ。

勢力圏を失い、軍事的、資金的に厳しくなったとはいえ、ISの脅威を過小評価できない。なぜなら、ISの兵士たちが他の地域に移動しているからだ。OECD諸国(経済協力開発機構)は警戒する必要がある。シリアとイラクから外国人戦闘士が戻ってくるからだ。ISが主導したテロ襲撃事件が2015年は11カ国だったが、昨年は15カ国に増加している。

より効果的なテロ対策によってテロ計画を未然に防止できる件数が増えてきた。2014年、15年の両年は10件のテロ計画のうち、2件しか未然に防止できなかったが、昨年は10件のうち3件を防止している。初歩的な爆弾テロ計画は容易に防止できるが、車両を利用したテロ襲撃事件は未然に防止するのが難しいのが現状だ。

昨年のフランス革命記念日の日(7月14日)、同国南部ニースの市中心部のプロムナード・デ・ザングレの遊歩道付近でチュニジア出身の31歳のテロリストがトラックで群衆に向かって暴走し、86人が犠牲となった。それを皮切りに、ドイツの首都ベルリン市中央部にある記念教会前のクリスマス市場で昨年12月19日午後8時ごろ、1台の大型トラックが乱入し、スペインのバルセロナで今年8月17日、白いワゴン車が市中心部の観光客で賑わうランブラス通りを暴走し、少なくとも13人が死亡、100人以上が負傷するなど、OECD加盟国で少なくとも13件の車両を利用したテロ事件が起きている。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年11月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。