【映画評】GODZILLA 怪獣惑星

渡 まち子

半世紀にわたる巨大生物“怪獣”とその怪獣さえ駆逐する究極の生物“ゴジラ”との戦いの末、敗走を続けた人類は、2048年、ついに地球を脱出する。だが、人工知能によって選別された者たちが恒星間移民船でたどり着いた星は、人類が生存できる環境ではなく、人々は再び地球を目指すことに。移民船に乗る青年大尉ハルオは、幼い頃に目の前でゴジラから両親を殺され、20年間、地球に戻ってゴジラを倒すことだけを考え続けてきた。だが危険な長距離亜空間航行を決断してまで帰還した地球は、既に二万年もの歳月が経過し、地上はゴジラを頂点とした生態系による未知の世界になっていた…。

日本で生まれ世界中から愛される“ゴジラ”を初の長編アニメーションで描く「GODZILLA 怪獣惑星」。今まで多くの作品で描かれてきたゴジラとはまったく違う、予想もしない進化を果たしたゴジラは、かなり衝撃的だ。世界観もビジュアルも、過去のどの作品とも異なり、本作に登場する地球はもはや人類のものではない。そんな絶望的な状況の中、ゴジラに復讐を誓うハルオを主人公に、過去に地球に飛来した異星人種たちや、旧世代から新世代への交代を目論む司令官、学者や戦闘のスペシャリストなどが入り乱れて、まるで太古の世界のような地球を舞台に、超進化生命体ゴジラに対峙、激しい戦闘を繰り広げる。

ゴジラといえば、特撮映画。そのゴジラをアニメで見るという体験そのものが新鮮なのだが、人類、異星人、ゴジラの三つ巴の状態で進むストーリーは、かなりシリアスでハードなものだ。随所に驚きの設定があって、それは映画を見て確かめてもらいたいが、本作は、全3部作の第1章に当たるので、物語はまだまだ未完の部分が多い。圧倒的な存在であるゴジラとはいったい何かという問いの答えも、先に持ち越されている。正直、この第1章は、ゴジラファン、アニメファンの両方にとってかなりフラストレーションがたまる内容なのだが、次章以降、“シン・ゴジラからアニゴジへ”のキャッチコピーに違わぬ、アニメならではの展開に期待したいところだ。
【50点】
(原題「GODZILLA 怪獣惑星」)
(日本/静野孔文、瀬下寛之監督/(声)梶裕貴、櫻井孝宏、杉田智和、他)
(新鮮度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年11月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。