イケてる外資・IT企業はなぜオフィスフルーツをするのか?

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

私はこれまでいろんな会社で働いてきました。正社員、派遣社員、バイトを合わせると、片手ではとうてい収まらないくらい色んなオフィスで働いてきました(別に誇れることではないですが…)。その他、パーティーに紹介されたり、研修を受けるためにオフィスに入ったことがあるものも含めると…ザッと30-40社くらいのオフィスを見てきたでしょうか。

色々な会社のオフィスを見るオフィスツアーって、実はめちゃめちゃ楽しいです。どのオフィスも個性があって、遊びゴコロを取り入れていたり、おしゃれな内装や「お!」と思うような社員さんがいたりします。私が昔務めていた外資系企業は多国籍なオフィスで、頭にターバンを巻いたインド人社員が歩いていて、初めて見た私は驚いたものです。

このように世の中には色んな会社があるわけですが、あちこち見てきて「外資系企業でオフィスフルーツ(いつでも食べられるフルーツをオフィスに置いている)をやっているところは意外にあるな」と気づきました。

オフィスフルーツをやっている外資系、IT企業

これは私の主観によるものですが、オフィス内でフルーツ常備している会社は「外資系」や「高収益IT企業」が多いと感じます。私が大学卒業後に最初に入った外資もそうでした。アメリカ系の経済ニュース番組を制作する会社に入ったのですが、オフィスがとてもスタイリッシュで面接にいった時に「うわー!カッコイイ!!こんなオフィスで働きたい!」とミーハーなことを考えてしまったほどです(その後、実際に働くことになりました)。

オフィスの中央には大きな水槽が置かれて中で魚がスイスイと泳いでおり、読書のできるスペースや、きれいなリフレッシュルーム、そして朝昼夜無料で食事ができるスペースが設けられていました。そのスペースにはフルーツが常備されていましたね。私も仕事に疲れた時はふらりと席を立ち、りんごやバナナの皮をむいて食べる、という感じに使わせてもらっていました。

その他、パーティーでおじゃまをした六本木ヒルズの中にある有名ネット検索企業、研修でオフィスツアーをさせてもらった品川にあるパソコン用OSソフトを提供している某外資系企業でもフルーツを提供していました。また、外資系企業だけでなく、日本企業でもIT系で大手だと同じような状況です。某スマホゲームのオフィスでは「朝フルーツ会」とか「フルーツ女子会」なんかのイベントを開催していて、それをみた私は(ここは本当に会社の中なのか!?うおー!すげー!)と内心驚いてしまいましたね。

社内に食堂や食事スペースがある会社は日系企業にももちろんあります。しかし、国内企業の食堂ではラーメンや和食はあってもフルーツは皆無…という会社が目立つ中、外資系企業や高収益IT企業には必ずといっていいくらい高い割合でフルーツが置いてあることが多いのです。なぜ、外資系やIT企業で食事スペースを設置している会社は、オフィスフルーツをやっているのか?私はその理由を「社員の健康」と「コミュニケーション」のためだと考えました。

従業員の健康で利益を上げる「健康経営」という考え方

健康的になるには一にも二にも食事が重要です。食事は毎日する「習慣」ですから、継続的に健康的な食事をすることで健康を得ることができます。食習慣を改善して健康を得るには「これまで食べていた健康に悪いものを食べない」、「これまで食べていなかった健康的なものを食べる」、もしくはその両方を実践する必要があります。

しかし、実際にこれをやるとなると難しい、というのは誰もが理解できると思います。「果物は健康にいいよ!」と言われても、これまで果物を食べてこなかった人にとって、毎日フルーツを食べる習慣を作ることはかなり難しいことですし、食後の甘いデザートをやめなさいと言われても簡単ではありません。

ところが、フルーツがオフィスにおいてあれば話は変わってきます。なんせ一日の大半を過ごす空間にフルーツが常備されていて、外で買ってくる手間もありません。ふらりと席を立ってフルーツを手に取って食べられる環境があるならば、家でするより簡単に食習慣化できます。

オフィス内での食事は「コミュニケーションツール」

それからオフィス内にフルーツがあることで、社員同士のコミュニケーションを円滑にしてくれるメリットがあります。

多くのサラリーマンにとって外食ランチはゆっくりできないものじゃないですか?混雑するお店に行列を作って腰を下ろし、待たずに運ばれてくるメニューを選ぶ。やってきた食事を15分くらいでさっさと食べ終え、タバコを吸って急いでオフィスに戻る…。これでは、落ち着いて話をすることも適いません。毎日のランチをこのように慌ただしく過ごしてしまうのでは、休み時間というより「お腹に食事を詰め込む作業」になってしまいます。

しかし、これが朝とかランチタイムに社内で果物を食べるとなると話は別です。旬の健康的なフルーツを食べながら、和気あいあいとおしゃべりを楽しむことでコミュニケーションの活性化につながると思うわけです。実際、私は過去に働いていた会社で小休止にバナナを食べていると、やってきた別の社員から「いつもこの時間にバナナ食べていますよね(笑)」と声をかけられ、そこから仲良くなってよく話をするようになったという経験をしました。

近年、社員の健康を考え、従業員が元気になることで利益アップをする「健康経営」というキーワードが知られ、「従業員の健康も経営者の責任」と言われるようになりました。オフィスにフルーツを置く、それだけで健康的な食生活を応援し、社員が元気になって仕事を頑張って利益をあげられるなら安い投資だと思うわけです。

「バカバカしい!社員の健康は自己責任でしょ!」「健康で利益が上がるわけがない!」というのは健康が食事に直結することを理解していない、旧態依然の遅れた考えと思います。現に冒頭にご紹介した世界のリーディングカンパニーや、高収益を出し続けるIT企業では社員の健康のことを考えて食事スペースを設けているわけですから。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。