11歳の難民の少年が自殺した

長谷川 良

オーストリア北東部ニーダーエスターライヒ州のバーデンでアフガニスタン出身の11歳の難民少年が自殺したことが明らかになった。難民収容側に落ち度がなかったかなどについて、国民保護官(Volksanwaltschaft)が調査に乗り出している。

ドイツ行の列車を待つ難民家族(ウィーン西駅構内で、2015年9月15日撮影)

保護者のいない少年は今年2月から6人の兄弟姉妹と共にバーデンの難民収容施設に住んでいた。少年たちが収容された施設は看護などが必要な難民を収容する場所だ。少年の弟がダウン症候群だったからだ。同施設では24時間体制で収容者を加護できる。同時に、ダウン症候群の子供を持つ家族へのヘルプ体制も整っている施設だ。

少年は11月12日死亡したが、自殺の詳細な背景は明らかにされていない。メディア情報では、11歳の少年はダウン症候群の9歳の弟を世話したり、他の兄弟姉妹を助けていた。最近、万引きで捕まったことがあったという。

問題点は、7人の兄弟姉妹で最年長の23歳の兄に監護が委ねられていたことだ。だから「23歳の青年にとってその役割は重荷過ぎたのではないか」という声が聞かれるのは当然だろう。保護者がいないため、23歳の兄にObsorge(監護権)が認められ、難民収容施設関係者はこれまで問題はないと受け取ってきたわけだ。

国民保護官は施設関係者の発言だけではなく、独自調査を始めているという。通常、親戚関係者、兄弟や叔母たちが未成年者の監護権を引き受ける。11歳の少年の自殺後、23歳を含め他の兄弟姉妹はバーデン外に住む親せき関係者に預けられている。兄弟姉妹を引き取った親戚関係者がなぜ監護の責任を最初から担うことが出来なかったか、という疑問が沸いてくる。

ちなみに、保護者がいない未成年者の難民の監護権問題は今回が初めてはない。アフガン出身の18歳の少年ががんに冒された2人の姉妹の監護人となったケースが報告されている。

欧州には2015年夏以降、100万人を超える難民が北アフリカ・中東諸国から殺到し、欧州各国はその収容問題に追われた。殺到する難民たちの中には、両親を伴わず、旅券や関連書類すら所持しない未成年者も少なくなかった。「セーブ・ザ・チルドレン」によると、約2万6000人の子どもが家族の同伴なく欧州に到着している。

オーストリアのメディアは11歳の難民少年の自殺ニュースを大きく報道した。欧州メディアによれば、保護者のいない未成年者が犯罪組織によって性的搾取されているケースがあるという。保護者のいない未成年者の難民の収容について、国際社会はもっと関心と配慮を注ぐべきだろう。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。