このたび、若手国会議員からなる「若者の政治参加検討チーム」において、提言を取りまとめました。
「若者の政治参加検討チーム」は、これからの人口減少・超高齢社会を乗り越えていくには幅広い民意を踏まえた健全な民主主義を維持していく必要があるとの問題意識から、若者の政治参加を促進するための方策を検討している若手国会議員の会です。
構成メンバーは、小倉将信(衆)、小林史明(衆)、佐藤啓(参)、鈴木憲和(衆)、鈴木隼人(衆)、宮路拓馬(衆)、村井英樹(衆)山下雄平(参)となっています。
今回取りまとめた提言は、
・インターネット投票の実現を始めとした投票環境の向上
・主権者教育の更なる推進
・被選挙権年齢の引下げを始めとした若者の意思決定への参画
・若者の投票率向上に向けた普及啓発
・若者政策を推進するための体制整備
・これら全体の取組を加速させるための「若者政策推進基本法」の制定
といった総合的な対策パッケージとなっています。
これから提言内容の実現に向けた具体的なアクションを起こしていきます。
個々のアクションについては、ブログやSNSでお知らせしていきたいと思っています。
以下、提言の全文をご紹介します。
「若者の政治参加検討チーム」提言
2017年11月22日
近年、欧米諸国においては社会の分断が危惧されるような現象が散見されている。特に英国のEU離脱に関する国民投票では世代間の分断が顕著になった。
こうした現象は我が国にとって対岸の火事とは言い切れない。これからの人口減少・超高齢社会を乗り越えていくには、幅広い世代を巻き込んだ健全な民主主義を維持し、国の判断を誤らないようにしていく必要がある。
このような問題意識のもと、若手国会議員の有志が集まり、有識者や若者も交え、若者の政治参加について検討を重ねてきた。
若者の政治離れは深刻であり、これを食い止めるのは極めて優先度の高い課題であることから、「若者の政治参加検討チーム」として以下の通り提言する。
1.投票環境向上
①インターネット投票
スマートフォンやパソコンなどによるインターネット投票の導入は、若者の投票率向上に大きく寄与することが期待され、また同時に、移動弱者の投票の利便性向上にも大いに資するものである。
なりすまし投票や投票の強要などのリスクに関する指摘もあるが、インターネットバンキングなども社会に深く浸透している現状に鑑みれば「インターネットでは不正が起きやすい」との指摘は必ずしも当たらない。
なお、エストニアではインターネット投票を導入しているが、インターネットでの投票は何度でもやり直すことができる上、投票所で投票した場合はそれを最終的なものとすることで不正を防いでおり、我が国においても参考にできる事例である。
現状、我が国においても在外投票等に限った検討の動きがあるが、インターネット投票の全面解禁に向けた更なる一歩として、投票所に(スマートフォンやパソコンなどによる投票を見据えた汎用的なシステムによる)投票用端末を導入することなども検討すべきである。
②多様で身近な投票所
インターネット投票の実現は利便性の向上に大いに資するものであるが、国民の生活の多様性を踏まえれば、身近な投票の実現に向けた多様な手段の整備は不可欠である。
このため、例えば郵便局等における投票所業務の代行、コンビニ等設置端末での投票、期日前投票所や共通投票所の増設、投票所開設時間の延長などにより、より多様で身近な投票所を実現すべきである。
その際、必要なシステム開発については自治体任せにせずに政府が担い、その成果を自治体が無償で利用できるようにすべきである。
③投票休暇
投票に参加する習慣を定着させるには、勤務先や家族などのコミュニティにおけるいい意味での「お節介」も必要である。
そのような観点からは、雇用主が従業員に対して半休を与えて期日前投票に行かせる、といった取組も有効であると考えられる。
こういったコミュニティベースの取組を国としても応援すべきである。
2.主権者教育
①主権者教育支援
主権者教育、とりわけ模擬選挙を経験した人の投票率は経験しない人よりも高くなる傾向がみられ、若者の政治への参加意識を向上させる効果が高いと言われている。
しかし、自治体によっては模擬選挙実施マニュアルを配布しているケースもあるものの、現状では自前で実施できる学校は少なく、そのノウハウを持つ団体(選管、NPO等)も限られている。
一方で、模擬選挙などの主権者教育を実施するNPO等は対価を受け取ることができないケースも多く、事業の持続可能性が懸念される。より多くの学校に主権者教育が普及することを目指し、NPO等への支援を充実させるべきである。
②萎縮対策
私たちが暮らす社会には多くの社会問題があるが、政治と無関係なものはほとんどないと言っても過言ではない。
このため、政治についての議論を避けることは社会問題の解決から目をそらすことにつながってしまう。欧米諸国の政治教育においては、政治的中立性は対立する立場をフェアに紹介することで担保できるとされている。
一方で、我が国の学校教育では、政治的中立性と「非政治性」が取り違えられ、政治についての議論を行うことがタブーとされてきた。これが若者の低投票率の一因となっている。
また、学校に政治家を招いて主権者教育を行おうとした際に教育委員会から「全政党が一堂に会する場とすること」といった実現困難な指導がなされたり、模擬選挙を実施する際に学校の判断で「政党名を架空のものに置き換えた上、政策の説明をせずに行った」といったケースが生じたりするなど、様々なレベルで萎縮の問題が生じている。
政府は今後、地方自治体に対し、主権者教育に関する協議会を設置するよう促すこととしている。これは、選挙管理委員会や教育委員会、学校、NPO等の連携を強化することにより、主権者教育の普及を図ろうとするものである。
このような取組は萎縮対策にも極めて有効なものであり、地方自治体は早期に協議会を設置すべきである。
3.意思決定への参画
①審議会改革
法律案等、政府の重要な政策は各府省庁に設置された審議会における検討を経た上で国会に提出される。
このため、審議会の議論に幅広い世代の意見を反映させることは極めて重要である。
「子供・若者育成支援推進大綱」においては「子供・若者育成支援施策や世代間合意が不可欠である分野の施策については、子供・若者の意見も積極的かつ適切に反映されるよう、各種審議会、懇談会等の委員構成に配慮する」とされているが、世代間合意が不要な政策分野の方がむしろ少ない中で、依然として審議会委員の年齢構成は全般的に高止まりしている。
このため、今後はより多くの若者を審議会の委員に任用すべきである。
②若者議会
若者の政治参加を進めるにあたり、子供の頃から民主主義に直に触れる機会を作ることは有益と考えられる。
我々「若者の政治参加検討チーム」も訪問した山形県遊佐町の「少年議会」は、中高生が自分たちの年代の代表を選挙し、選ばれた議会は一定の権限を行使する、といった先進的で素晴らしい取組である。
また、愛知県新城市の「若者議会」や英国の「Young Mayor」なども類似の取組といえる。
若者の民主主義社会への参画意識向上を図るため、これらの事例も参考に、より多くの市区町村に「若者議会」等を設置するべきである。
③若者協議会
ドイツやスウェーデンでは、地域の若者団体である「若者協議会」が活発に活動しており、それらを代表する全国組織が若者の意見を集約し、政治や行政に対するロビイングを行っている。
これにより、若者は日常生活レベルで社会参画のアクションを経験することができ、また自らの政治的有効性を肌で感じることができる。
このような取組を参考にし、我が国においても若者の社会参画のプラットフォームを構築するべき。
④供託金額
供託金は候補者乱立による選挙公営費用の増大防止に資する制度であるとされるが、諸外国に比べると相当高額に設定されている。
選挙に立候補することは、少なからぬ選挙費用を要し、多くのケースで仕事と経済的基盤をも失うものである。その上さらに供託金の負担が高額という現状は、若者の政治への挑戦を阻害していると言わざるを得ない。
このため、供託金の金額については引下げを行うべきである。
なお、公費負担の過度な増大を抑制する観点からは、選挙公営費用の内容の精査も併せて行う必要がある。
⑤被選挙権年齢
我が国の各級議員の被選挙権年齢は諸外国に比べて高い。
「投票に行こう」と呼びかけられるだけで、実際に自分たちの世代が社会に影響力を行使することができないのであれば、若者の政治参加は進まない。
政治の場に幅広い世代の民意をきめ細かく反映させていく上でも、若者の政治への関心を高める上でも、被選挙権年齢引下げを行うべきである。
4.啓発
①政府広報等
選挙権は18歳に引き下げられたものの、若者が政治を身近に感じる機会はまだまだ少ない。
若者の投票率を向上させるためには、投票権を得たことを自覚し、嬉しいと思える仕組み作りも必要である。
そのような観点からは、18歳の有権者に行政等から選挙権取得を祝う手紙を送る、といったような取組も有効であると考えられるため、その実現に向けた検討を行うべきである。
また、期日前投票はとても便利な制度であるが、手ぶらで投票できる、という利便性が有権者には意外と知られていないため、より徹底して周知を図るべきである。
②政党横断イベント
これまで、若者向けの政治関連のイベントは各党がバラバラに取り組んできた。
しかし、若者にとっては比較対照があった方がわかりやすく、また党派性のないイベントの方が心理的抵抗なく参加できる傾向がある。このため、今後は政党横断でのイベントも全国で積極的に行うべき。
③投票インセンティブ
一部の企業等では、投票した人に製品やサービスを割引で提供するといった取組を行っている。若者の投票率向上を図る観点からは、このような投票インセンティブも有効であると考えられる。このため、国としてもこういった民間主体の取組を応援すべきである。
5.推進体制の強化
①若者政策担当大臣
スウェーデンやドイツなどの国には、若者政策を担当する大臣が存在するが、我が国でそれに相当するのは「青少年健全育成担当大臣」である。
このため、政府の「子供・若者育成支援推進大綱」も青少年健全育成の考え方をベースにしたものとなっており、若者の政治参加・社会参画に関する色合いは薄い。
これでは若者政策を本気で前に進めることは困難であり、我が国においても、若者政策を推進する体制を整備する意味で、「若者政策担当大臣」を新設し、若手を起用すべきである。
②若者政策推進議員連盟
今後より重要性の増す若者政策分野については、国をあげて重点的に進めていく必要があり、政府のみならず、政治においてもその検討体制を構築していかなければならない。
このため、若者政策全般について党派を超えて骨太の検討を行う場を設けるべきである。
③若者の政治参加推進基本法
若者の政治参加については、「子ども・若者育成支援推進法」では触れられておらず、「子供・若者育成支援推進大綱」でもごく簡単に触れられているのみである。
しかし、若者の政治参加は喫緊の課題であり、抜本的に推進していく必要がある。
このため、国や地方等の責務とともに推進体制を明らかにする「若者の政治参加推進基本法」を策定すべきである。
また、基本法は以下の項目を含むものとすべきである。
・国、地方はより身近で簡便な投票の実現に努めること
・国、地方及び教育機関等は主権者教育の普及に努めること
・国、地方は審議会等委員に一定割合の若者を任命するよう努めること
・国、地方は子ども・若者が社会問題に関する意見を集約しやすい環境を整備するとともに、その意見を直接聴取する機会を設けること
・国、地方は若者の政治参加に関する意識啓発に努めること
・内閣に「若者の政治参加推進本部」を設置し、本部長を内閣総理大臣、副本部長を「若者政策担当大臣」(新設)とすること
・国、地方は若者の政治参加に関する基本計画を策定すること
(以上)
編集部より:この記事は、衆議院議員、鈴木隼人氏(自由民主党、東京10区)のブログ 2017年11月22日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は鈴木氏のblogをご覧ください。