GMOインターネットの「ビットコイン採掘」は投資かギャンブルか?

インターネット関連の大手企業GMOインターネットがビットコインのマイニングに参入するプランを11月6日の会社説明会で発表しました(写真は同社決算説明会資料から)。

マイニングとは、ブロックチェーンの台帳記帳の更新を行うこと。複雑な数式を解く必要がありますが、最も速く演算を終えたマイナーは報酬として、1回の当たり12.5ビットコインが得られます。1ビットコインが90万円として、1,125万円となります。

ビットコインの場合、ブロックは10分に1回作成されています。1日24時間で144回になる計算ですから、全ての演算を一番速く解ければ、1日で16億円以上の報酬になる計算です。

高度な処理能力を持つコンピュータ、大規模な設備と、危機の冷却に必要な安価な電力が成功のカギになりますが、現在は電気代や人件費の安い中国勢が5割以上の世界シェアを握っています。

GMOインターネットは300億円を投資して、シェア10%を狙い、売上600億円。粗利益300億円を目指すとしています。将来的はオリジナルのチップ開発によって採掘のコストを引き下げたり、投資家を集めた「クラウドマイニング」も手掛ける計画を立てています。

GMOインターネットがクラウドマイニングに参入すれば、個人投資家が国内でマイニングに参加することが可能になります。ただし、クラウドマイニングには、いくつかのリスクがあります。

1つは運営組織に対する信用リスクです。もし、GMOインターネットが経営不振に陥れば、マイニング事業からの撤退もあり得ます。

2つ目は、ビットコインそのものに対するリスクです。ビットコインの価格は、昨年末の8倍まで高騰していますが、これが下がればマイニングのリターンも下落します。マイニングの報酬はビットコインで支払われますから、変動率は高くなります。逆に価格が更に高騰すれば、収益性は更に高まることになります。

そして、3つ目はマイニングの競争環境の変化のリスクです。マイニングには、中国系を始め多数の団体が、大量の資金を投入しています。コストをかけてマシンの性能をあげても思った通りの採掘結果が出なければ、投資効率は悪化し、思い通りのリターンを生み出せない可能性があります。

日本の大手上場企業がマイニングのような、一般的には「キワモノ」と思われているような事業に参入するのは意外に見えます。しかしSBIグループも同様の事業を始めるようです。

私が「人体実験」している海外事業者の仮想通貨マイニングは、着実にリターンが出ています。マイニング自体はマイニング機器の処理能力に報酬がある程度比例するようです。イメージとは逆に、トレーディングや取引所運営に比べ、収益性に関しては堅実なビットコインビジネスだと個人的には感じています。GMOインターネットの熊谷代表もそのような事業特性を踏まえての冷静な決断だと思います。

GMOインターネットのクラウドマイニングサービスは1年後のスタート予定のようですが、市場環境はそれまでに大きく変わっているはずです。せっかくの有望なビジネスが開始時期のずれ込みで手遅れにならなければ良いのですが・・・。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年11月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。