以前、大前研一先生が「戸籍制度を廃止すべきだ」と書かれていました。
確かNews Picks の記事だったので、「戸籍が廃止されると相続登記未了の不動産の権利関係がわからなくなる」と、私はコメントしました。
では、相続登記未了土地の問題を別にすれば、はたして戸籍制度は廃止した方がいいのでしょうか?
戸籍制度を廃止してマイナンバーで全てを管理すれば、事務手続が劇的に簡素化できます。
また、家族単位を前提にした戸籍制度を、近代法の大原則である個人単位で捉えるのは理念としても魅力的です。
婚姻による旧姓使用の問題も簡単に解消されるかもしれません。
もっとも、婚姻による旧姓使用は戸籍を個人単位で作成するようにすればクリアできるので、制度の廃止が必要条件ではありません。
未登記不動産を除く最大の問題は、自分のルーツや血のつながりがわからなくなってしまう点ではないでしょうか?
初めて相続事件を受任して相続関係図を見た時、その人の家系図が一目瞭然になるのに感動すら覚えました。
日本に戸籍制度が作られて以来の系図が、一枚の紙に見事に描かれているのです。
自分のルーツを辿りたい人にとっては戸籍制度はとても有難い存在でしょう。
実利的に見ても、個人単位を徹底すると近親婚を効果的に防げるかどうかという疑問があります。「戸籍を調べたら実は兄弟姉妹がいた」というハプニングは、現実的にも決して少なくないのです。
これらの問題点をすべてクリアすれば、(面倒な手続が大嫌いな)私は、特段戸籍制度にはこだわりません。ネット上で公的手続がすべて済んでしまえばとても楽だと思っています。
ただ、血縁の繋がりを曖昧にしてしまうことに対する生理的、感覚的な拒否感も無視することは出来ません。最近読んだ「百年法」(山田宗樹著 角川書店)では、それに似た懸念が物語の中で出てきます。
ブロックチェーンが実用化されれば、履歴としての戸籍も正確に記載されるようになるのでしょう。もっとも、その時点で「戸籍を残して(血縁を)つなぐべきか、つながざるべきか」という議論が沸き起こる可能性もあります。
さて、あなたならどちらに賛成しますか?
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。