固定電話のIP電話への移行は必要な投資か

この記事の読者は固定電話をほとんど使わないないだろうが、固定電話をIP電話に切り替える計画が進んでいる。固定電話(加入電話とINSネット)サービスを支える交換機などが老朽化しているが、NTTはそれらを更改する代わりにIP電話サービスに切り替える。計画が俎上に上ったのは2010年で17年に計画が固まり、24年から25年にかけて切り替えるという。

固定電話の加入者数は減少の一途をたどっている。『情報通信白書』平成29年度版によると、2010年には「住宅用」の加入電話は2335万契約、INSは58万だった。それが16年には1470万と20万まで減少している。「事務用」という企業が使う固定電話も2010年の加入電話692万・INS367万が16年には409万・212万に減少した。切り替えが開始される2024年には加入者がいないという状況になっているかもしれないのに、「無駄な」投資計画が推進されつつある。

誰が固定電話を使い続けているのだろう。「住宅用」について加入者の年齢分布の統計は存在しないが、総務省発表の『平成28年通信利用動向調査』によれば、携帯電話を持っていないのは20歳代では2.4%で50歳代でも4.5%、60歳代では11.5%、70歳代は29.7%、80歳以上は62.5%だから、固定電話利用者の中心は高齢者だと推測できる。これらの高齢者宅に固定電話の形をした、同じようにダイヤルして通話する「携帯電話」を配れば済むではないか。もちろん、今までと同じ電話番号が使えるように移動通信システムに機能追加するといった工事は必要になるが。

それでは「事務用」は何に使っているのか。マイナビニュースによるとFAX、POSレジ、CAT端末(クレジットカードの決済端末)だという。FAXは滅びゆく通信方法だし、POSレジやCATはブロードバンドに切り替え可能である。日刊工業新聞はEDI(企業間電子データ交換)に「24年問題」、対応に3000億円から5000億円と報じた。これもインターネットEDIへの移行が推奨されており、5000億円というと高額に見えるがINS加入者212万で割れば一社当たり24万円に過ぎない。ブロードバンドサービスに有線と無線の区別はないから「事務用」も移動通信に切り替えできる。

今までの固定電話は電話局から加入者宅までをメタル線でつないできた。この接続形態を維持しなくてもよいとなれば計画は様変わりする可能性があるのに、もったいない話だ。固定電話は誰がどのように使っているか、移動通信に代替できないか、NTTは利用状況調査からやり直したほうがよい。