登録販売者制度などは実は必要なかった --- 鈴木 智詞

皆さんは調剤薬局の薬局薬剤師による「零売」をご存知だろうか?

医師が処方する医薬品のうち、薬理作用が強い毒薬や劇薬、危険性が高いため注意が必要なハイリスク薬、そして発売して間もない新薬。また、習慣性医薬品と呼ばれる睡眠薬や向精神薬、麻薬と覚醒剤は「処方箋医薬品」とされ、医師の処方箋による医薬品販売を原則とする。もう一つが「それ以外の医療用医薬品」である。

零売とは、「それ以外の医療用医薬品」を医師の処方箋なしに、医薬品容器から取り出して顧客の必要量だけ販売することを言う。

厚生労働省はセルフメディケーションを錦の御旗に、ドラッグストアなどにて、医療用医薬品の代替であるOTC(Over The Counterの略:一般用医薬品のこと)を薬剤師ではなくても登録販売者へ販売許可を与えるなり、要指導医薬品やら第一類医薬品として、薬剤師に販売させるのはかなり杜撰な販売方法であると思う。たとえ、保険医療には触れない全額自己負担な医薬品販売であったとしてもだ。

ドラッグストアで売り上げ堅調な薬剤師しか販売できない、第一類医薬品の「ロキソニンS」を例に挙げてみよう。医療用医薬品の「ロキソニン錠60mg」とは、錠剤に刻印が無いだけで、医薬品としては全く同じものだ。僕が何を指摘したいと言えば、その販売方法である。

ロキソニン自体は30分以内で最大の鎮痛作用が現れる秀逸な痛み止めであるのは間違いない。
だがしかし消化性潰瘍がある人、心機能不全がある人、血液検査結果により腎臓や肝臓、そして血液に障害がある人などは決して服用してはならない医薬品。これらをドラッグストアの薬剤師が口頭審問で聴き出し、顧客の自己申告がマッチすれば販売される。しかも、誰にどのように販売したかの記録義務はない。

また登録販売者が販売する風邪薬などは、医療用医薬品としては古い医薬成分が配合されており、医療用医薬品のうち比較的にその有効性や安全性が低い医薬成分ばかりである。これも同じく販売記録の義務がない。

これではOTC販売の大きな危険性がはらんでいるのではないだろうか?

ならば、調剤薬局の薬局薬剤師が零売をし、顧客のバイタルサインや血液検査結果、そして既往症と現病歴を把握して、お薬手帳による飲み合わせをチェックしながら「それ以外の医療用医薬品」を顧客へ販売したほうが良いのではないか。もちろん、医師の処方箋に基づく医薬品と同様に販売記録を残して。

僕はその実数を把握していないが、零売を当たり前にする事によって、登録販売者制度やスイッチOTCに掛かるコストダウンをし、顧客に適切な医療用医薬品を保険外の自己負担で提供可能かと考える。そして、国民医療費の削減へと繋がるのだ。

と言うのも、長年薬局界隈で話題になっている医師を受診したついでの処方。
高齢者の過剰なる湿布薬の処方や、小児の受診と薬剤の交付が自己負担額ゼロをこれ幸いに、母親が化粧のファンデーション目的でヒルドイドをついでに処方させる行為を防ぐのに、保険医療を遣わない零売が医療費削減へと繋がると思う。

鈴木 智詞 調剤薬局の薬剤師
薬剤師免許状を取得後、関西で大手ドラッグストアや急性期病院の病院薬剤師を務めてきた。