薬剤師会は自己改革にどこまで本気

中村 仁

「白衣姿で街を飛び回る」将来像

薬剤師さんについて、日常的に感じていることを投稿しましたら、思いがけないほど多数のコメントが寄せられました。4本目を総まとめにして終わりにするつもりでした。それにも100件以上のコメントがきました。病院や薬に頼る高齢者が増え、調剤薬局、薬剤師はますます身近な存在なっていると同時に、様々な疑問が提起されていることの証明です。

私以外の患者、利用者、さらに医師やその他の専門家からも意見が寄せられました。投稿された数々の疑問、批判に対する薬剤師さんの反論も激しく、今後の医療、薬務行政によっては、自分たちの死活問題になってくるとの思いなのでしょう。たくさんのコメントにお礼を申し上げつつ、これで一区切りとする予定です。

日本薬剤師会のホームぺージを開きますと、薬剤師法の紹介があり、その第一条に「国民の健康な生活を確保する」のが法の主旨であると、主張しています。「薬剤師は医師の処方箋に従って、薬を出してくれるとのイメージが先行している」、実際は「薬剤師に求められている社会的な役割は、はるかに広い」と解説しています。

私を含めた利用者と薬剤師側の見解の対立の原点も、ここにあります。「棚から薬剤を取り出し、渡すだけで調剤報酬、薬剤管理料を取る」との批判に対し、「副作用、飲み合わせ、過剰投与はもちろん、健康や病気について何でも相談できるところ」との反論が目立ちました。

危機感を募らせる薬剤師会

薬剤師に対し、「ネットの場で文句を言うより、今後、いかに生き残るかを考えたほうがよい。調剤薬局は確かに多すぎる」というコメントもありましたね。調剤薬局、薬剤師の将来はこのままでは危ういと心配しているのは、当事者である薬剤師会そのものなのです。

2015年12月、山本薬剤師会会長と塩崎厚労相の対談(意見広告)が新聞に大きく掲載(全1頁)されました。「地域包括ケアシステムと薬剤師」、「かかりつけ薬局(患者に対する一元的、継続的な管理)」、「患者本位の医薬分業」などがテーマです。

山本会長は「今の薬局をかかりつけ薬局に再編する」と、明言しています。かかりつけ薬局で、患者の医薬情報を一括して掌握し、飲んでいる薬が重複していないか、多すぎないか、飲み合わせによる副作用の心配がないかをチェックするというのです。必要なことでしょう。

さらに「薬剤師は薬局で患者を待つという姿から、白衣を着て地域を飛び回る姿に変身する」とも、説明しています。映画のシーンのようですね。それで一体、どのような仕事をするのか、今ひとつ分かりません。地域の医師や病院との連携や協力、健康全体の管理、老人施設の訪問などですか。

遅れるデジタルデータの管理

薬の包装にバーコードを印字し、デジタルデータで情報を管理し、手作業の支払いも簡潔、迅速にできるようにすることも必要です。そのためには薬剤メーカーを巻き込む必要があります。その調整は始めていますか。

薬剤師さんから寄せられたコメントに「お薬手帳を見せてもらい驚いた。耳鼻科、外科で同じような薬が処方されている。皮膚科、内科でアレルギーの治療薬が重なっている」というのがありました。他にも「老人介護施設のお年寄りに大量の薬が処方されている」、「3か所の病医院にかかっていた患者が26種類の薬を飲んでいた。医師と相談してもらい、6種類に減らした」などなど。これなどは医師の責任ですね。

薬剤師会が強調する「薬剤師は街の医療人」、「白衣で街を駆け巡る」は、言い出してから、どこまで実施されているのでしょうか。美辞麗句が先行しすぎていませんか。一般の店に比べて営業日が少なく、薬局は日曜日、祝日、休診日は閉店です。時間にゆとりがあるのですから、なんでもっと早く手を打ってこなかったか。

寄せられたコメントに「誤解に満ちた刺激的なブログを書く炎上商法で、筆者(私のこと)は稼ごうとしたに違いない。それこそ不労所得というべきものだ」というのが少なからずありました。私に直接入ってくる広告料も原稿料もゼロです。誤解なきようお願いします。

終始、私の問題意識から離れないのは、「小規模な調剤薬局が乱立し、しかも営業日数が少なく、営業時間が短く、規模の割に勤務者(薬剤師、事務員など)が多く、よく経営が成り立っているものだ」です。競争原理が働いていない業界です。そのツケが患者の負担、健康保険の負担、税金の負担という形で回ってきているのです。

ここにメスをいれるのが、基本中の基本です。財政危機で医療報酬、薬価の圧縮が進むにつれ、このような業態は転換を迫られることが必至です。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年11月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。