「嫡出否認規定は憲法に違反せず」判決は正しいか ⁉︎

11月29日、神戸地方裁判所で、父親のみに認められている嫡出否認の手続は憲法に違反しないという判決が下されました。

この事件は、神戸市に住む女性が、暴力を振るう夫から逃げて別の男性との間に子供を出産したものの、離婚が成立していなかったため夫の戸籍に入るのを防ぐため出生届を出せず、子どもたちが無戸籍になったとして争ったものです。

嫡出否認の手続は、父子関係を解消する法的手段として「父が子の出生を知った時から一年以内」に行使できるもので、妻には認められていません。

父子関係の解消手続を夫のみに認めて妻には認めないという民法の規定が、憲法14条の保障した男女平等原則に違反するか否かが問題となりました。

判決は、

「(嫡出否認の)規定は、法律的に子供に身分の安定を保つもので、合理性がある」とした上で、「夫とは別の父による認知が得られることなどを要件に、妻にも嫡出否認を認めるなどの制度を築くことは不可能とは言えず、こうした補完的な制度によって子供が無戸籍となる事態を防止する余地がある」

と指摘しています。

この判決報道を見て、私は愕然とすると同時に怒りを覚えました。

第一に、妻の側から父子関係を否定できるようになれば、生まれた子供は「非嫡出子」になるだけです。夫の戸籍に入るのを防ぐために出生届を出さないと、「無戸籍」になります。
実際、夫のDVから逃れている女性の中には現住所を知られると困るので出生届を出せない人が多くいます。

「非嫡出子」と「無戸籍」、どちらが方が子供の法律的身分が保てるのか?
結果は明明白白です。

また、「夫とは別の父による認知が得られることなどを要件に」補完的な制度ができれば無戸籍となる事態を防止できるとした点には、一種の絶望感すら覚えました。

この判決は、裏を返せば「父による認知があってはじめて子供の法律的身分が安定する」と述べたものであり、認知されていない「非嫡出子」は法律的身分が安定していないと断じているのと同じです。まさに、「裁判所が非嫡出子を法的に差別している」内容なのです。

約4年前の2013年、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の半分とする民法の規定が憲法に違反するという最高裁の判断が下されました。これを機に、非嫡出子も嫡出子も同じ権利を持っているという意識が国民の間に浸透しました。

生まれた子供は責任がないので、当然のことでしょう。
ところが、本判決は「非嫡出子は法的身分が安定していない」と暗に指摘しており、せっかく解消に向かっている「非嫡出子」への差別を蒸す内容になっています。

「別の父による認知が得られることなどを要件に」などという新制度は、非嫡出子に対する差別を助長するだけです。決してこのような新法はつくるべきではありません。
非嫡出子に対する法的な差別を完全に撤廃することこそ、本筋であり正義に叶うものと考えます。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年11月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。