相撲を国技として認定した法令などは存在しない。宮内庁から天皇杯を下賜されているというが、柔道、剣道、弓道、野球、サッカー、バレー、卓球、ソフトボール、陸上、空手、競馬、体操、水泳、レスリング、スキーなどにも与えられている。
国技が相撲であるといわれだしたのは、1909年(明治42年)に両国に初めて相撲常設館が完成した際、開館式で作家の江見水蔭が執筆した披露文に「相撲節は国技である」と書かれていたので、命名委員会(会長:板垣退助)が付けただけのことで公的な意味はない。
財団法人日本相撲協会の寄附行為には、「この法人は、わが国固有の国技である相撲道を研究し…」と書いてあるが、どのような意味であるか、ほかにはないのかも定義されていない。
ちなみに、相撲が神事であるかどうかだが、相撲の歴史は多元的である。相撲ことはじめと言われる垂仁天皇の命により野見宿禰と当麻蹴速による角力は、キックボクシングのようなもので、互いに蹴り合った末に相手の腰を踏み折って殺した野見宿禰の勝ちと伝えられる。当時の角力は日本の格闘技全般の祖先というべきだ。
その後の展開でも、態様はさまざまだし、常に神事としてあったのでもなく、現在のような形に近い物になったのは江戸時代だ。現在の大相撲については、神事としての要素が、ひとつの演出としても含めて採り入れられているという以上のものではない。
相撲が文化遺産として貴重な物であることは間違いないが、それほど特別の物かと言われれば、昭和天皇がたいへんファンでおられたことから非常に社会的地位が高まり、国技的にみられるようになったということでないか。「相撲は国技だから」ということから、ほかのスポーツとは違うという理屈をいろいろ気ままに引っ張り出すのは賛成できない。