中国は国境紛争で対峙するインドを牽制するために隣国パキスタンの核武装を間接的に支援した先例がある。それもあって、北朝鮮の核武装も日本を牽制するために「暗黙の了解」を与えているのではないかと疑問視されている。
北朝鮮の核・弾道ミサイルは中国の全都市が射程圏内に入っており、中国とっては潜在的脅威だ。にもかかわらず阻止に向けた動きが鈍いので、韓、日、米を牽制する効果を望んでいるのではないかとの疑問を捨てきれない。中国にとって北朝鮮は必要悪なのだ。
その一方で、中国が北朝鮮の核保有を止めなければ、日本の核武装論に大義名分を与える結果を招きかねない。当然ながら、韓国の核武装論にも大義名分が発生する。中国が一番怖いのは日本の核武装だろう。
従って、中国も北朝鮮の核武装を最後までは黙認できない状況下にある。これまで、北朝鮮は中国で国際行事が開催される度に軍事挑発を繰り返して中国の面子をつぶした。先月、北朝鮮が中国の特使を門前払いしたことは米中の対話提案を拒む行為である。それで、米国は北朝鮮をテロ支援国に再指定したが、北朝鮮が米本土まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射することによって危機は一段と高まっている。
米国はこれまで制裁を最大に強めて北朝鮮の核を放棄させる「ソフトランディング」路線を辿っている。なるべく、血を流さない平和的な危機の解消に集中している。しかし、対北制裁の圧力が効かない場合、米国は止むなく軍事行動に踏み切るしかない状況である。
対北軍事行動の大義名分は着々と積み上げられている。
中国が米国の軍事行動を望まないのなら、今こそ対北石油禁輸へ舵を切るべき時だ。平和的な解決のため残された時間と手段は限られている。中国が全面的な石油禁輸を実行すれば北朝鮮が譲歩する可能性が高い。中国の本気度が問われている。
韓国政府も国際社会の制裁に足並みを揃える段階である。これこそ、血を流さない平和的な北核問題解決の近道だからだ。
(拓殖大学客員研究員,韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官・専門委員)
※本稿は『世界日報』(2017年12月5日付)に掲載されたコラムに筆者が加筆したものです。