ローマ法王がロヒンギャに言及

ローマ法王フランシスコは2日夜、ミャンマーとバングラデシュのアジア司牧訪問を終えてローマに戻った。それに先立ち、フランシスコ法王はバクグラデシュから帰国途上の機内で慣例となった随行記者団との記者会見に応じた。法王はミャンマーでロヒンギャ問題を公式の場で発言しなかったことで一部批判の声が挙がっているが、それに答える一方、朝鮮半島の危機、来年の外遊計画などについても語った。以下、バチカン放送独語電子版からその概要を紹介する。

①北朝鮮の核開発問題について

「冷戦時代のような核兵器の威嚇政治は今日では古く、核兵器を所持すること自体、非理性的なことだ。核兵器を所持し、それを使用しようとすることは倫理的に受容できる限界を超えている。なぜならば、核兵器は人類の破滅をもたす脅威があるからだ。この問題は法王が提示しなければならない教書の問題ではなく、核兵器の所有に正統性があるか否かの問題だ。むしろ、神の創造の世界を救い、人類を救うために人間は回心しなければならない。70年前の広島や長崎を思い出すべきだ。原発事故を思い出すべきだ。われわれは許容される世界の限界点に対峙している」

(韓国の文在寅大統領が5月、ローマ法王フランシスコ宛てに書簡を送り、その中で「南北間の和解への仲介」を要請。それを受け、フラシスコ法王は7月、南北間の仲介役に南米エルサルバドル出身のグレゴリオ・ローサ・チャベス枢機卿を任命し、朝鮮半島の危機の克服のために乗り出している)

②ロヒンギャ問題について

ミャンマーのラカイン州北西部に住むイスラーム系少数民族ロヒンギャが国境を越え、難民となって隣国バングラデシュにあふれ出ている(人口5100万人のうち、カトリック教徒約70万人)。

法王は殺到するロヒンギャを受け入れるバングラデシュを称賛し、

「難民の受け入れは手本となるものだ。バングラデシュは小国だが、60万人の難民を受け入れている。難民の受け入れを拒否する国がある中で、同国には感謝しなければならない。ダッカの大司教公邸の庭で1日夜、ロヒンギャの人々に会った。その出会いは計画されたものではなく、自発的に生じた。私は涙したが、彼らも涙した。私は何も言葉を掛けずに彼らを去らすことは出来なかった。彼らを追放する人々、ロヒンギャ問題を無視する国際社会の名前を挙げて、許しを請わざるを得なかった」

という。

法王によると、ロヒンギャ難民キャンプを訪問したかったが、日程上の都合もあって実現できなかった。それに代わって、キャンプのロヒンギャ代表が法王を訪ねてきたという(3家庭、16人のロヒンギャが法王と会った)

<なぜ法王はミャンマーでロヒンギャ問題を追及しなかったか>

「ロヒンギャについては私はローマのサンピエトロ広場でも何度も言及した。ミャンマー訪問時、私が公式スピーチの中でその問題に言及すれば、ミャンマーのビルマ国民の前でドアをぴしゃりと叩きつけるようなことになる。だから、少数民族の権利について語り、私的な会談の中でさらに語った。自分にとって神の福音を伝えることが重要なのだ。公式の場でウケのいいことをいうより、対話をし、相手側の考えを聞くことが大切なのだ。そうして神の福音が伝えられていくからだ。閉ざされた戸の裏で行う会話外交はロヒンギャの追放の責任を有するミャンマーの軍指導者との会合でも同じだった。私は真理を交渉するつもりはないと述べた。軍指導者は私の考えを理解し、てくれたはずだ」

なお、法王は首都ネピドーでティンチョー大統領と、国家顧問でノーベル平和賞受賞者のアウンサンスー・チー氏と会合している。

フランシスコ法王、アウンサンスー・チー氏と会合(オーストリアのカトプレス通信から、Paul Haring記者撮影)

③来年の司牧訪問の計画について

「もし私がまだ生きていたら、来年はインドを訪問する計画だ」と明らかにした。フランシスコ法王は中国訪問については「予定されていない」と述べた。バチカンと中国の外交関係樹立交渉は進行中だが、「一歩一歩前進する以外にない」と述べ、両国にはクリアしなければならない問題が依然あることを明らかにした。中国当局は最近、国営旅行社にバチカン旅行プランの破棄を命じている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年12月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。