VHF帯の新規利用には世界仕様対応が求められる

山田 肇

総務省はVHF帯への参入希望調査を実施している。VHF帯の207.5~222MHzはマルチメディア放送「NOTTV」が利用していたが、加入者数が伸びず2016年6月に停止された。この跡地について新規の利用希望を募るのが今回の調査である。

そもそもNOTTVはどうして失敗したのだろうか。それは加入者数が少ないのでコンテンツが提供されない、よいコンテンツがないので加入者が集まらない、という悪循環から抜け出せなかったためである。NOTTVの受信には特別なLSIが必要だが、それには費用が掛かる。スマートフォンメーカーもLSIをスマートフォンに装備するのをためらった。

一部のスマートフォンでは地上デジタル放送が「ワンセグ」として受信でき、一部には「フルセグ」対応もある。しかし、これにも受信用LSIが必要である。世界市場を相手にしているiPhoneは、日本市場だけのためにそんなLSIを載せようとは考えない。だからiPhoneでは「ワンセグ」の受信はできない。日本市場を重要と位置付けている一部メーカーのAndroid端末だけしか「ワンセグ」が受信できないのはそのためである。

VHF帯を新しく利用する際にも、ここで説明したような市場の力学を考慮したほうがよい。日本市場に特有の利用形態では成功の見込みは薄い。VHF帯の新規利用は世界仕様に対応したサービスとすべきである。

ところでNHKが打ち出したネット同時配信に民間放送連盟は大反対である。ネット送信であればiPhoneでも特別なLSIなしに受信できるから、テレビ番組の視聴者数を増やすのに役立つはずだが、「ワンセグ」に限定しようというのはもったいない話だ。