ブランドいちごの王様“あまおう”はなぜあんなに高いのか?

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

日本人のほとんどの人が知っている圧倒的な知名度を誇る「あまおう」。知名度、ブランド力、品質のどれをとってもまさに「いちごの王様」といえます。

私は自身のフルーツギフトショップでひのしずくを販売しているのですが、自分がイチゴを売る立場になる前はひのしずくは知らなかったのに、あまおうは知っていました。あまおうの知名度の高さは、その他のイチゴブランドを寄せ付けないものがあります。

あまおうは知名度の高さももちろん、そのお値段もハイグレードないちごとして広く知られています。激安スーパーで売られているいちごは1パック300gでだいたい300円、熊本のひのしずくは300gで1,000~1,200円、そしてあまおうは大体1,500円~2,000円くらいです。世の中にはもっと高額ないちご(1粒1,000円というのも!?)はありますので、決してあまおうは日本一高いいちごというわけではないのですが、それでも他の高級いちごと比較するとかなり高額に位置することは間違いありません。

いちご(300g) 激安いちご 熊本・ひのしずく 博多・あまおう
価格 300円前後 1,000~1,200円 1,500円~2,000円

指名買いされるあまおうの実力

栃木県の「とちおとめ」は関東では知名度がありますが、関西には流通量はほとんどないので関西では関東ほど知名度が高くありません。また、香川県の「さぬき姫」は地元の人にはなじみがありますが、その他の地方ではそれほどでもありません。知っているのは相当なフルーツ好きの人だけでしょう。

しかし博多の「あまおう」は違います。あまおうは日本全国あらゆるところにまで流通しており、知名度も他のいちごと比べると圧倒的です。知名度が高くてブランドになっているので、「高級イチゴが欲しい」ではなく「あまおうが欲しい」と指名買いをされているほどです。

値段が高い事に価値がある

世の中は「値段が高い方=価値がある」と見なされ、より欲しいと思われる商品があります。例えばルイヴィトンのバッグやベンツ、リッツカールトンホテルなどブランド品などがこれにあたります。その他の激安バッグ、中古軽自動車、安いビジネスホテルと比べて明らかに値段が高いのは高い事に価値を感じて売れていきます。ブランド品は値段が高いからこそ、多くの人が持たない(持てない)ので、持っている人は「特別感」を得ることができ、そこに価値を見出す人が喜んでお金を支払うわけです。

あまおうも同じです。「値段が高い=価値が高い」と思う人間心理がそこにあります。普段はスーパーのいちごしか知らない人が贈り物で高級いちごを頂いたら「こんなにいいものを頂けるなんて!」と特別感があります。それがブランドイチゴのあまおうであればならさらです。

卓越したJA福岡のマーケティング力

それからあまおうを抱えている福岡県のマーケティング努力も、値段が高くても売れる理由の一つです。熊本県は4種類ものブランドイチゴを抱えていることご存知でしょうか?「ひのしずく」「紅ほっぺ」「熊本VS03(仮称)」「さがほのか」とたくさんあります。しかし、JA福岡のイチゴは「あまおう」一つです。そしてあまおうは販売後、わずか数年後にはその味わいやネーミングの良さが受けてあっという間に消費者の心を掴んでしまいました。

あまおうが出る以前、世間で高級イチゴは今ほど確立された存在ではありませんでした。大粒でも色むらがあったり、おいしいけどデコボコしていたりというのは普通で、いちごというのはそういうものだと思われていた時代がありました。そこへ色鮮やかで粒ぞろい、味もおいしく、ネーミングセンスもいいあまおうが名乗り出て、あっという間に人気が出てしまいました。

ひとたびその名が知れると後はみんなが「あまおうが欲しい」とその名前を指名買いするようになります。一度確立したブランド力は根強い力強さがあり、今ではあまおうより品質の良く、より安価ないちごもありますが、依然としてあまおうの人気は根強いものがあります。これにはJA福岡のマーケティング力抜きには語れません。

あまおう以外のいちごにも目を向けて見ませんか?

ブランド力でナンバーワンの座を築いたあまおう、多くの人が羨望の眼差しを送り続け、値段の高さをご理解頂けたでしょうか?しかし、ここまであまおうの魅力についてご理解頂いたあなたへ今回私からワンメッセージがあります。それは「あまおう以外にも目を向けてみませんか?」ということです。

私はこれまでビジネスでもプライベートでも色んないちごを食べてきましたが、確かにあまおうはおいしいいちごに間違いありません。ですが、今ではあまおうに負けないおいしいいちごがたくさんあります。当店で取り扱っているひのしずくもその一つです。ひのしずくはあまおうとは違ったおいしさや魅力があります。人生80年、長い時間を生きていくわけですから、いちご一つとっても色んないちごを食べてみて「世の中にはこんないちごもあったのか!」「甘いだけでなく適度な酸味がたまらない」といったそれぞれのおいしさや驚きを楽しまれるのも良いのかなと思っています。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。