話し方に気をつけているのに、なぜか嫌われてしまう。お客様に好かれない。上司から生意気だと思われてしまう。部下から恐いと言われる。プライベートでは、異性からモテない。人間関係を築けない…いったい何が問題なのか。これには、「言い方」「声の出し方」「表情」などが大きく影響を及ぼしている可能性がある。
今回紹介するのは、『CD BOOK〈引きつける〉話し方が身につく本』(明日香出版社)。著者は、フリーアナウンサーの倉島麻帆さん。NHKでディレクターなどを務めた他、NHK Eテレ「Rの法則」など多数メディアにも出演している。
ほめ言葉は「さしすせそ」
――あなたは(パートナーをほめているだろうか。現在、日本の離婚率は約30%。家庭内別居や仮面夫婦も入れると、半数以上のカップルが破たんしていると言われている。しかし、倉島さんはおしどり夫婦らしい。その秘訣はなんだろうか。
「それは私が夫を毎日ほめたり、感謝の言葉を伝えているからです。Facebookに『夫を1日20回以上ほめます』と書いたところ、『よくそんなにほめられますね』とビックリされたことがありますが、その秘密は次のような言葉を伝えているからです。」(倉島さん)
「そのヒントは『さしすせそ』にあります。さ=さすが、最高、爽やか。し=幸せです、信頼しています、信じてます。す=すごい、ステキ、素晴らしい好きです。せ=センスがいい、洗練されてます、世界一。そ=尊敬します。」(同)
――他にも思いあたるほめ言葉があればドンドン追加することが可能だ。もし全部覚えるのが大変という方には、3つのキーワードを覚えていただきたい。
「全部覚えるのが大変であれば、『すごい』『素敵』『素晴らしい』だけで大丈夫です。わたしは、これを『3S』と言っています。感情をこめて言えばおべっかにはなりません。男女別ほめ方のポイントは、男性は大きくほめること(例えば世界一は男性に対するほめ言葉)です。女性は小さくてもコンスタントにたくさんほめることです。」(倉島さん)
「バラの花束だったら、男性には大きな花束をいっきに渡すイメージです。女性には1本1本バラを抜いて渡すイメージです。男性は能力·成果をほめ、女性は、能力·成果よりも行動(プロセス)をほめると喜びます。『君のお客様への対応が評判だよ!』『今朝いれてくれたお茶は美味しいね』などのセンスをほめてもいいでしょう。」(同)
緊張しないための訓練法
――いつでもリラックスして集中できる方法を紹介したい。1932年ドイツのシュルツ博士が開発し、日本でも広く使われている自律訓練法がある。
「次のような効果があります。あがる、手が震える、声が上ずる、汗をかく、赤くなる、といった『対人恐怖症』が軽減されるなどの効果があります。やり方ですが、できるだけ静かで、明るすぎない場所で練習しましょう。次の順で練習してみてください。
服をゆるめ、両腕を軽く伸ばし、両足は少し開いて、仰向けに寝る(イスに座る)。
(1)軽く目を閉じて、ゆっくりと腹式呼吸する。呼吸のリズムが一定してくる。
(2)息を吐くときに「気持ちが落ち着いている」と頭の中で唱える。3回繰り返す。
次にゆっくりと四肢の重感練習をおこないます。
(1)「右手が重たい」→「左手が重たい」→「右足が重たい」→「左足が重たい」。
(2)息を吐くときに合わせて、頭の中で唱えます。3回ずつ繰り返します。
今度は四肢の温感練習をおこないます。
(1)「右手が温かい」→「左手が温かい」→「右足が温かい」→「左足が温かい」。
(2)手足の重感、温感を感じることができたら同じ要領で唱えます。
練習が一通り終わったら、両手を握り、少しずつ力を入れて、両腕を5~ 10回強く屈伸してから、大きく伸びをする。最後に2、3回深呼吸をして目を開きます。」(倉島さん)
――私が世界的に有名なコンサルティング会社に勤務しているとき、この方法はプレゼンスキル向上の重要テクとして考えられていた。その会社では、この一連の手順を踏んだあとに「魔法の言葉」を唱える。「魔法の言葉」とは自分を奮い立たせる言葉で、自己暗示をかけることが目的。「私は大丈夫だ」などの言葉があり、それを心の中で唱える。
間違いなく、大きな効果を上げる方法なので試してもらいたい。さて、そろそろまとめにはいりたい。本書には、今回紹介したような、簡単につかえるエッセンスが豊富に紹介されている。話し方、あがりは簡単には修正できないが、トレーニングである程度のコントロールは可能になる。「治す」のではない、コントロールすればいいのである。
尾藤克之
コラムニスト