FRB正副議長は中立・ハト派?2018 年にタカ派地区連銀総裁の下剋上リスク

12月FOMC声明文、経済・金利見通し、記者会見は予想の範囲内でとどまりました。

注目のドットチャートは、2018年の平均値につき前回の2.039%から2.016%へ下方修正されましたね。考えられる要因の一つが、出席者の変更ではないでしょうか。前回まではフィッシャーFRB前副議長の予想を含みましたが、同氏は10月で退任しました。代わりに、12月から金融規制担当のクオールズFRB副議長が加わっています。

この点から類推するに、クオールズ氏の予想がFOMC出席者よりハト派寄りだった可能性を捨てきれません。出席者16人の予想値では“タカ派寄り=4回利上げの予想”が5人から4人へ減少した一方で、“ハト派寄り=2回利上げ予想”を提示した人数は5人から6人へ増加したためです。

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(作成:My Big Apple NY)

仮にクオールズ氏がハト派であれば、中立派と目され2018年2月にFRB議長に就任するパウエル理事とどのように金融政策を主導していくか注目です。今年の地区連銀総裁での投票権保有者はガチガチのタカ派であるクリーブランド地区連銀のメスター総裁のほか、中道タカ派のサンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁が並びます。マッキンゼー出身のバーキン氏を総裁に選出したリッチモンド地区連銀は伝統的にタカ派なので、同氏も前任者を踏襲する公算が大きい。アトランタ地区連銀のボスティック総裁は中道派寄りとされ、常任であるNY地区連銀のダドリー総裁も同じく中道派とされています。

この状況下、イエレン氏退任後の投票権保有者8名のうち、仮に地区連銀総裁の5人全員が利上げ票にまわれば、FRB正副議長と理事が据え置きを主張しても制度上は利上げが可能となります。前代未聞のケースですが、過去には1986年のボルカー氏のようにFRB議長が少数派に転落した例もございます。地区連銀総裁主導で下剋上よろしく、利上げペース引き上げの波乱が起こるリスクは、ゼロではない?

そもそも、金融市場は年3回の利上げペースを十分織り込んでいません。FOMCは2015年12月以降、四半期末の会合で利上げなどの政策変更を決定してきたため、次回利上げは2018年3月30~31日開催のFOMCが濃厚。しかしながら、12月13日時点での2018年3月利上げ確率は50%程度なんですよね。市場が利上げ見通しを修正する場合、特に年4回の利上げへ予想がシフトする局面では、リスク・オフ相場に注意したいところです。

(カバー写真:federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年12月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。