「すぐやることの大切さ」を言葉で理解していても、なかなか行動にはうつせないものだ。理由は、不安を感じることで行動が阻害されてしまうためだ。結局、口だけ番長よろしく、なかなか行動できない人、考えすぎて行動にうつせない人が増えてしまう。
今回紹介するのは、『過去の自分を振り返る人だけが成功する理由』(アルファポリス)。著者は、藤由/達藏さん。主要著書として、33万部の大ヒットを記録した『結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる』(青春出版社)などがある。
疲れても働きつづける日本人
――日本人はよく働く。その結果、働きすぎてしまう。自分の体が悲鳴をあげていても気づかない。体調がすぐれなくても薬を飲んでやりすごし休むことをしない。
「まず、『自分の心身の状態に気づかない』という事態を改善すべきです。そうしなければ、問題は解決しないでしょう。日々、山のような仕事を与えられたり、無理難題を課せられていると、なかなか思うような成果をあげることができません。当然、上司からは叱責されたり、事細かな指導を受けることになります。」(藤由さん)
「そして、自分の価値を低く見積もるようになり自信を失ってしまうのです。『組織内での価値が低く、自分の価値も低い』『この会社でこんな成績なのだから、他社に行っても通用しないだろう』。自分はダメな存在だと思い込んでしまいます。」(同)
――会社や仕事で、自分の価値観を見出すことは簡単ではない。会社や仕事のベクトルに合わせることが評価項目である以上、そこから逃れることはできない。
「組織やその仕事にとっては、求める成果が達成されたら、悦ばしいのです。だから成果をあげると、『おめでとう!』と祝福されます。社内に名前が公表されたり、賞与や昇給に結びついたり、休暇や旅行などを贈られたりします。しかし、仕事の悦びであると思い込なければ、仕事の悦びは得られません。」(藤由さん)
「組織に属し、一つの仕事に従事するうちに、自分の中の悦び発生の仕組みが成果をあげることだけになってしまうことがあります。それが満たされなければ、人生はまったく楽しくなくなってしまう。そんな風になると、人生はとてもつまらなくなってしまいます。すでに人生を楽しめなくなっている証拠です。」(同)
会社のために尽くしてきたのに
――会社に尽くすことが仕事だと思っている人がいる。尽くして我慢をしてきたという理屈だろう。しかし、このような傾向の人が報われることは少ない。いまは、尽くしても我慢しても嫌な仕事を率先してやっても、報われるような時代ではない。
日々の仕事をいつもと変わらなくこなしていると思ったら、心身ともに疲弊し、ストレスをため、うつになっているケースは少なくない。頑張っているが、だんだん空回りしてくる。最終的には働けなくなり、会社にも家族にも迷惑をかけてしまう。
「組織や仕事の命ずるままに前へ前へと進んできた結果、このような状態が発生します。全力で職務に取り組んできたのに、組織の中でのゆがみが表面化してくるのです。『ミスが目立つようになる』『重大な事故を引き起こす』『体調不良から体を壊す』。表面化したときには、すでに影響が出はじめているかも知れません。」(藤由さん)
「上司から叱責を受けるでしょう。『どうしてこうなるまで放っておいたんだ』『なんでもっと早く報告しないんだ』『自分の体だろう?自己管理の問題だ。無理するからこうなるんだ』『お前の気持ちなんてわからんよ』。ひとつ言えることは、会社はあなたを守ってはくれないということです。そんな状態の人は少なくないと思います。」(同)
――会社と社員の関係を、異性関係に置き換えるとわかりやすい。片方が好意を抱いていても、相手にはそれに応える義務はまったく無い。相手が振り返ってくれないことで、悩み苦しんでも誰も助けてはくれない。本書を通じて、会社や仕事との関係、自らが置かれた状況を客観視することで見えてくるものがあるように感じている。
尾藤克之
コラムニスト