企業は女性登用に下駄を履かせるべきだ!

米国の大学では、入学審査に当たってマイノリティーを優遇することがよくあるります。

米最高裁判所は、2016年6月23日、テキサス大学オースティン校を出願した白人女性のアビゲイル・フィッシャー氏が、人種・民族を考慮したことが原因で不合格になったとして同大学を提訴した裁判で、同大学の措置を正当とする判断を下しました。

もっとも、同大学が州立大学であったことから、マイノリティー優遇を率直に認めた判決ではなく、下級審に差し戻したようです(詳細は知りません)。

このように、住民の税金で賄われている州立大学の場合は、いかな米国であっても正面からマイノリティを優遇するのは困難です。しかし、ハーバードを始めとするアイビーリーグの著名な私立大学でマイノリティ優遇は堂々と行われています。

マイノリティーを入学審査で優遇する最大の理由は、学生の多様性を高めることだと説明されています。人種や国籍、性別等が異なった多様な学生同士が接することで、教育効果が上がるという考えです。

世界で活躍する人材を排出する目的を掲げているのであれば、これは大いに納得できる理由です。

翻って日本の現状を見てみると、男女雇用機会均等法や政府の掲げる努力目標を達成するために、不承不承女性管理職の椅子を用意している日本企業が多いように感じられます。旧来の日本企業は、経営陣と従業員が一枚板になって明確な目標に突進していくことで成功を収めてきました。

市場シェア拡大、売上増、利益増と、目標がわかりやすくて単純だったのです。そのような一枚岩の下では、経営陣や従業員の多様性は有害無益だったのかもしれません。

様々な価値観を調整するのは時間がかかるし、阿吽の呼吸も通用しませんから。

しかし、今日、企業が直面している課題は極めて複雑かつ多様で、シェアや規模の拡大がかえって利益を減少させる(場合によっては存続を危うくする)こともあります。

「大きいことはいいことだ」の時代が終わったことは、米国の大手IT企業を見れば明々白々でしょう。

このような時代に対応していくためには、企業構成員の多様化を推進することが効果的です。海外進出する場合でも、その国出身の従業員がいた方が好都合です。女性の感性で企図したプロジェクトが大ブレイクすることは決して珍しいことではありません。概ね男性よりも女性の方が、世の中のトレンドに敏感で過去への拘りが少ないですから。

たった数年間の学生生活の教育効果が多様性によって向上するのであれば、企業の長期的発展に多様性は不可欠でしょう。

多様性確保のためには、女性のようなマイノリティーに下駄を履かせても何ら問題はないと考えます。多くの企業風土が男社会で成り立っているので、それを基準とした人事考課はアテになりません。

また、営業の能力と企画立案の能力は全くの別物です。

「働く女性に優しい」などと上から目線で見ているうちはまだまだ。「企業の発展のために多様性を重んじ、積極的に女性や多国籍社員の登用を図る」と宣言する企業こそが真に将来性のある企業だと私は思っています。

もちろん、経営陣には社外取締役を多数登用して多様性を図るべきであることは言うまでもありません。

何十年も自営業でやってきた高齢者を入れるだけで、企業のコスト意識が抜本的に変化することがあるかもしれません。

要は、肩書や形式にとらわれない柔軟性が必要だということでしょう。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。