医学的知見で解説!紙コップでホットコーヒーを飲むと危険

尾藤 克之

太るのは、「食べすぎ」「運動不足」が原因ではなかった。「オビソゲン」が、太る本当の原因だということが、近年の研究で明らかになった。「オビソゲン」とはホルモンや代謝などの機能を損ねながら、遺伝子レベルで「肥満体質」に変えてしまう有害物質のことである。私たちが、普段から普通に食べて使用しているものに含まれている。

例えば、紙コップ、トイレットペーパー、薬用石鹸、フッ素加工のフライパン、お弁当、お総菜、スナック菓子、携帯・スマホなどが挙げられるが、数えればきりがない。食事制限や運動をしても、「オビソゲン」を摂取している限り安全とはいえない。さらに、「オビソゲン」を体内から排出しなければ安全とはいえない。

今回紹介するのは、『太りたくなければ、体の「毒」を抜きなさい!』(三笠書房)。著者は、機能医学・内科医の、賀来怜華医師(ウェルネスクリニック神楽坂院長)。「オビソゲン」の危険性について学術的知見から詳しく分析している。また、「オビソゲン」を含む食品、日用品を取り上げながら、健康的にやせる方法についてまとめている。

紙コップでホットコーヒーを飲むと太る

ポップな装丁とは異なり、かなり専門的な医学書である。巷にあふれる安っぽいダイエット本やデトックス本とは明らかに一線を画す内容であると考えられる。まず、本書に掲載されている内容は、すべて医学的知見から導き出されたものであり、根拠も明快で内容も具体的である。客観性かつ合理的に導きだされたことから信憑性が高い。

私たちが、当たり前のように使っている日用品にも、多くの「オビソゲン」が潜んでいる。たとえば、コーヒーショップやコンビニでホットコーヒーをテイクアウトする。この何気ない行動も、「オビソゲン」を体内に取り込むリスクをはらんでいる。店内で飲まない場合、たいていは紙コップで持ち帰る。この紙コップが問題だった。

「水に弱い紙では、熱々の水分に耐えられる容器はつくれません。そこで耐熱・防水コーティング剤が使われるわけですが、その成分がビスフェノールA(BPA)というプラスチックです。ビスフェノールAは、糖尿病リスクを高めます。血糖値の調整と糖代謝に関わるインスリン分泌を狂わせ、肥満から糖尿病を招くためです。」(賀来医師)

「現に、糖尿病の患者さんからビスフェノールAが検出されるケースは多いです。ビスフェノールAは、卵巣にも影響を与え、不妊症や月経不順につながる多嚢胞性卵巣症候群にかかりやすくなります。近年、多嚢胞性卵巣症候群の患者数は増えており、『オビソゲン』など毒と関連する現代病と言えます。」(同)

賀来医師によれば、紙コップのプラスチック製のフタに「PS」と刻印されているが、これは、「ポリスチレン」の略。これも「オビソゲン」である。また、コーヒーフレッシュは生クリームではない。酸化しにくい油脂を混濁させて、ミルク風の香りをつけただけのもの。飲むときには「オビソゲン」が溶け出していると考えなくてはいけない。

「マドラーには木製もプラスチック製も、どちらもいけません。木製にも、防カビ剤、亜硫酸塩、漂白剤が使われています。これらは、『オビソゲン』としてのエビデンスがまだ乏しく、認定を受けていないものもありますが、体に有害なことには違いありません。使い捨て製品はリスクが高いと考え、極力、使用を避けてください。」(賀来医師)

賀来医師の見解を整理しよう。次の4つのポイントを覚えておきたい。この行動を実践することで、「オビソゲン」のリスクをだいぶ抑えることができるようだ。

(1)紙コップでなく、マグカップで出してくれるコーヒーショップを見つける。
(2)持ち帰る場合は、ステンレスのタンブラーを持参する。
(3)店に備えつけのコーヒーフレッシュやマドラーは、使用しない。
(4)アイスの飲み物も、ストローは使わず、店内でガラスのコップで飲む。

慢性疾患は「環境因子由来」である

地球には、現在7万種もの環境化学物質が存在する。毎年2000種もの新たな化学物質が加わり、赤ちゃんのへその緒からは平均200種もの有害物質が見つかっている。

賀来医師は、「肥満をはじめ、糖尿病、高血圧、過敏性腸症候群、アトピー、不妊症などなど、将来病気にかからないのが不思議なくらいの環境」であると現状を分析する。その一方で、「原因となる環境因子の対策を講じさえすれば、肥満から始まる病気の予防、不調の治癒など、その効力は計り知れない」とも論じている。

本書は、現状を認識した上で、人間がもつ本来の機能・治癒力を取り戻し、その結果として「太りにくくなる」という論理構成に仕上がっている。肥満物質の「オビソゲン」から始まり、日常生活における様々な事象についての記述もわかりやすい。世界の主要な国際学会でも数多くの招待講演や議長を務める現職医師の、注目すべき作品である。

尾藤克之
コラムニスト

追記(2017年12月28日)

本記事に対して、オビソゲンになじみが無いという質問があったため、出版社、著者と協議のうえ、次のとおり、関連情報とエビデンス等について追記する。

1.賀来怜華医師のプロフィールを以下に記す。
<賀来怜華医師プロフィール>
東京都生まれ。ウェルネスクリニック神楽坂院長・内科医 1997年、英国ロンドン大学医学部大学院卒業。英国王立内科学会認定医。米国アンチエイジング医学学会認定医(米国A4M)。欧州アンチエイジング医学学会専門医(フランス),米国先端医療学会解毒治療認定医(米国ACAM)。肥満や病気の大元の原因を追求し、損傷した部分を修復しながら、根本的な解決をする「機能治療」「天然ホルモン療法」を駆使し、慢性の難病を改善するクリニックを主宰。
ウェルネスクリニック神楽坂HP
クリニックHPでは専門医のキャリア、学会等の公的機関の講演を記載している。

2.以下は、書籍内のオビソゲンに関する説明箇所。
書籍内では全般的にオビソゲンに関する詳細な情報を記載しているが、一般的にわかりやすい部分は、本文P11~12、P17~18となる。

3.エビデンスについて
本書の参考文献は、本文P244~245に記している。

本書は、学術論文や調査報告書ではない。学術雑誌に掲載する論文であれば、審査するにふさわしい外部研究者(査読者)に原稿を送り、改善すべき点や疑問点についてのレポート執筆を依頼する。さらに、掲載に値するかその可否について問うことがある。

しかし、本書はビジネス書である。著者の過去の経験や実績を踏まえ、膨大な情報から一般読者に役立つものを選定し編集している。つまり、長年研究して判明したことを論理的に証明した構成である。筆者も、書籍の特徴的な要素を抽出し本の内容が伝わりやすいように記事にしている。その内容は、書籍の内容を逸脱していない。

オビソゲンに理解を深めたいのであれば、本書参考文献を読まれることをおすすめする。なお、英文でのオビソゲンに関する情報はいくつかあるので参考までに提示する。

その他(参考文献に含まれないオビソゲン情報)
https://ehp.niehs.nih.gov/121-a96/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3279464/

以上