日本と中国の金融当局は、日本企業が中国で人民元建ての債券、いわゆる「パンダ債」を発行できるようにすることで合意した(NHK)。
パンダ債とは何か。この不思議な名前の債券のことはわかりづらい面があるかもしれない。
日本政府や日本の企業が日本で発行する債券は国内債とも呼ばれるが、これに対して日本企業などが海外で発行する債券や、海外の政府や企業などが日本国内で発行する債券を「外債」と呼んでいる。たとえば、最初に発行された日本国債は鉄道敷設を目的とした九分利付外貨国債で、これはロンドンで発行した外債である。現在、日本国債は国内で消化可能となっているため、外貨建ての発行はされていない。
外債には海外の政府や政府系機関、地方公共団体や国際機関、また民間企業が日本国内で発行する債券もある。国際機関や外国の政府、法人が日本国内で発行する円貨建の債券は「円建て外債」と呼ばれるが、なぜか通称があり、「サムライ債」とも呼ばれる。
海外の発行体が外貨建てで、しかも日本国内で発行するという「外貨建て外債」という債券もある。債券市場関係者はこれを「ショーグン債」と呼んでいる。
このように外債には呼称が付けられることがあり、オーストラリア市場において非居住者によって起債される豪ドル建債券はカンガルー債、英国内で非居住者によって起債されるポンド建て債券はブルドッグ債と称されている。この流れで非居住者が中国で人民元建て発行される債券のことを「パンダ債」と呼んでいる。
今回、パンダ債の発行についてはみずほ銀行が中国人民銀行から発行の認可を得たと発表した。日本企業としては初めてとなる。発行額は5億人民元、年限は3年を予定しているそうである。三菱東京UFJ銀行も中国当局に申請中とのこと。
パンダ債の発行により、日本企業の元の調達手段が広がることになり、中国事業の拡大に追い風となる(日経新聞)。また、この動きは領土問題でぎくしゃくしていた日中関係が改善に向かいつつあることを示すものともみられる。
中国はこのところ中国政府はヨーロッパ連合やロシアなどにもパンダ債の発行を相次いで認めており、金融市場の国際化を進めていることを内外にアピールする狙いがあるともされている(NHK)。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。