なぜぼくがi大をつくるのか。

ICT人材の不足は30年以上訴えられていますが、今度はAI・IoT人材の不足が叫ばれています。ICTに乗り遅れた日本は、AI・IoTで同じ轍は踏めません。トップ級の人材を供給する機関が必要であることは説明を要しません。その新組織アイディアとしてぼくは「デジタル超学校」を提案しました。i大はその延長にある実践構想です。

とはいえ、i大の設立はデカいベンチャーの立ち上げであり、やたらチャレンジングであり、リスクだらけです。ぼくがなぜ自分でつくるのか。今のポジションを捨ててまで。
それは、自分がこれまでしてきたことの集大成でもあるからです。

ぼくの今の肩書は学者だったり教員だったりしますが、学問や教育に精を出していませんから、それは世を欺く呼称であり、自分では「政策屋」を名乗っています。それとて造語でして、世間にある呼称としては「社会起業家」が最も近い。バンドで曲作ったり、役所で法案や政策を作ったりしてから大学に転じた後、社会起業を20件以上行ってきましたので。

テック(デジタルサイネージコンソーシアム、映像配信高度化機構、radikoなど)とポップ(超人スポーツ協会、ソーシャルゲーム協会、アーティストコモンズなど)の分野で公益法人やプロジェクトを立ち上げてきました。テック&ポップ特区を作る「CiP」はそれらの掛け算です。i大もまたテック&ポップの場づくりであり、CiPはじめ民間プロジェクトと連動していきます。

一方、ICT×教育もライフワークです。幼児教育ではMIT Okawa Centerの設立からNPO CANVASの設立に至り、小中高の学校教育はデジタル教科書教材協議会で推進しました。そして大学院の研究教育として、産学連携プロジェクト指向の慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)の設立に携わりました。4年制大学はぼくにとってミッシングピースであり、それを埋める作業でもあります。

専門学校の延長であったり、冨山和彦さんのいうG型じゃないL型の学校であったりするならば、ぼくの出番ではありません。教育者が担うべき。今回は挑戦です。バーチャル英語学習、半分留学生、全員起業、産業界から教授100人。それで海外の著名大学と協調しつつ、張り合いたい。多くの企業と連携しつつ、政府には教育特区として規制緩和を求めたい。これは学者や教育者の仕事じゃありません。政策屋ないし社会起業家の仕事です。

パブリックへの最後の奉公と心得ます。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。