人口減少時代に「団地再生」が示す意味

高幡 和也

昭和30年代~昭和40年代、高度成長期にあわせて全国に団地ブームが訪れた。当時の爆発的な人気を示すものがその入居倍率で、UR都市機構(ユーアールプレス2015vol.43)によると昭和41年当時の東日本で募集した新規賃貸住宅での平均倍率は51.4倍を記録したそうだ。

あれから50余年、団地は建物や設備の老朽化や人口減少等を背景に空き家が増加し、さらには住民の高齢化が著しい。

UR都市機構が平成27年11月~12月に実施した「UR賃貸住宅居住者定期調査」によると、世帯主年齢65歳以上の世帯は46.7%まで増加している。

では近所の団地の現状はどうだろうか。団地内及びその周辺商店街はシャッターが下りている店舗が目立ちはしないだろうか。団地内の公園にたくさんの子供達の姿は見えるだろうか。

高経年の団地を取り巻く課題は数多く多様だ。そのいくつかを列挙してみよう。

1.住宅設備や施設が住民の高齢化に未対応

2.近隣商業施設の衰退

3.空き家の増加が招く不適切管理による住環境悪化

4.住宅団地建替えの困難さ

5.少子化による地域小学校廃校など子育て利便性の低下

これらを見て気付かされるのは、団地が抱える諸問題は「日本が抱える住宅諸問題」の縮図でもあるということだ。いずれの問題も「住宅の老朽化、少子高齢化、人口減少」がその根本にあることはいうまでもない。

現在、国や各自治体、民間等が様々な方法で「団地再生」を推進している。その中でも非常に興味深いのは、UR都市機構と民間デベロッパーが住民と共に取り組んだ「ひばりが丘団地、団地再生事業」だ。
※詳細はUR都市機構HP参照

UR都市機構によるとこの団地再生事業について

建替えによって生み出された敷地には、従来からあった保育園、児童館等の公共施設や商業施設の建替え・再配置の他、民間事業者による高齢者福祉施設、分譲住宅等が建設され、多用な世代が安心して活き活きと住み続けられるまちづくりが進められています。

としている。(※出典、UR都市機構HP「ひばりが丘団地 団地再生事業」)

この事業で注目すべきは、単に大規模団地の建替えだというだけなく、住民・地権者・事業者が「まちづくり」を包括的に捉えて団地再生に取り組んだ点だ。

団地は生活支援機能を備えた「ひとつのまち」である。団地再生事業とは「まち再生事業」だとも言えるだろう。そしてその成功例こそが日本が抱える住宅諸問題を包括的に解決するモデルケースとなるかもしれない。

日本はいよいよ人口減少時代を迎えた。総務省の「平成28年版情報通信白書」によると、日本の総人口は2008年をピークに減少に転じており、2060年には8674万人まで減少すると見込まれている。

人口減少がさらに進んでいく今後において、住宅を取りまく諸問題の解決を図る対策は「待ったなし」なのである。

高幡 和也(たかはた かずや) 宅地建物取引士