ここ数年で最高の興行だった新日本プロレス1.4東京ドーム大会

常見 陽平

今年も新日本プロレスの1.4東京ドーム大会「レッスルキングダム12」を生観戦。結論から言うと、ここ数年で最高の興行だったのではないだろうか。

なんせ、実券が売れており、会場はびっしりだった。最終的な動員数はまだ公表されていないが、前日の段階で3万2600枚を突破したそう。同社は2013年から有料入場者数の発表に切り替えている(招待客、チケットを購入したが来場しなかったものを含まない)。主催者発表だった以前とは単位が違う。だから90年代のプロレスブームの頃と比べると動員が随分と落ちたようには見えるが、この単位の変更には気をつけなければならない。東京ドーム大会で動員が3万人を超えるのは3年ぶりだ。明らかに入っているという印象だった。

カードも豪華で第一試合からタイトルマッチ、スペシャルシングルマッチが続く。とはいえ、今回はダブルメインイベント目当ての観客も多かったことだろう。IWGPヘビー級王者のオカダカズチカに、昨年のG1覇者であり波にのっている内藤哲也が挑む他、WWEスーパースターのクリス・ジェリコが電撃参戦し、IWGP USヘビー級王者のクリス・ジェリコに挑戦。前者は新日本プロレスの日本人対決の最高峰であり、後者は世界が注目する夢のカードである。特に後者は、普段、新日本プロレスを見ないプロレスファンにも届くカードだろう。

このラインナップだけでも充実しているのだが、なんせどの試合も内容が充実していた。さらには、試合同士が良い化学反応をしていた。試合同士が闘っているような、さらにはうねりをうんでいるような。

とはいえ、内容においても圧巻だったのはダブルメインイベントの2試合だった。ともに30分超えの激闘。しかも、お互いを知り尽くし、リスペクトしあっているうえでのぶつかりあいであった。

結果として5時間超えの興行になった。本編は17時にスタート(第0試合のバトルロイヤルは16時)、終了した際には22時を超えていた。内容も、時間も、もうお腹いっぱいで、これ以上、何を望むのだろうというものだった。何の不満もないようで、この5時間超えの観戦疲れというのが、不満といえば不満だ。実際は疲れるなんてことはなく、充実感に満ちていたのだが。

プロレスブーム復活と言われて久しいが(厳密には、新日本プロレス復活なのだが)、今後の課題は、
1.地方も含めた一般的な人気の獲得
2.グローバル展開
3.(2に関連して)タレントマネジメントだろう。
これは、昨年、新日本プロレス社長にインタビューした際も明言していた点である。

1は、これはどのジャンルにも言えることなのだが、ブームと言ったところで東京やせいぜい都市部だけのものだったりする。2018年の新日本プロレスの大会スケジュールでは熊本や長岡など地方でのビックマッチが組まれていたり、札幌や福岡の大会場で2連戦を行うあたりに地方テコ入れの意志を感じる。プロレスファンだけでなく、民間人もプロレスに関心を持つための展開が必要だ。

2については今回もアメリカ興行が組まれていた。ネットでの定額見放題サービス「新日本プロレスワールド」の海外会員数をいかに増やすのかも課題だろう。昨年の段階で2割が海外会員とのことだったが、これをどこまで増やせるか。特にケニー・オメガなどトップ外国人レスラーの試合はキラーコンテンツとなり得る。今回のジェリコ戦なども世界展開を視野にいれたものだと感じた次第だ。

3については、プロレス界でもグローバル競争が起きているという点に注目しなくてはならない。新日本プロレスの売上は過去最高の時期でも約40億円だが、アメリカのWWEは約600億円だ。世界の優れたレスラーはWWEに集まり、そのうえで世界中のプロレスファンから売上が集まる仕組みになっている。気をつけないと新日本プロレス、いや日本のプロレス界自体がWWEのファームとなってしまう。日本のプロレス界が選手の草刈り場になってしまう。

実際、2年前には中邑真輔とAJスタイルズなどがWWEに流出している。もちろん、WWEで、アメリカで活躍することはレスラーの夢ではある。それを上回る待遇と夢を用意しなくては、選手が引き抜かれてしまう。

試合終了後、一緒に行った仲間の間で話題になったのは、ケニー・オメガはいつWWEに行くのかという話だった。ケニーが世界で活躍する姿も見てみたいが、看板選手がこれ以上引き抜かれるのを見るのも切なく感じる。さあ、ギャラや働く満足度をあげるためにどうするか。

というわけで、例によって色々考えてしまったが、満足な1日だった。来年も見に行けるといいな。

おおたとしまさ
イースト・プレス
2017-12-14


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編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。