くまモンの海外進出がもたらす凄まじい経済効果と「愛」

くまモン公式サイトより:編集部

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

今年はくまモンにとって大きな飛躍の年になるかもしれません。

年始早々、熊本県にとって、いや日本人全員にとって嬉しいニュースが全国を駆け巡りました。NHKニュースによると、熊本県の蒲島知事は4日年頭の記者会見でくまモンの海外企業の商品利用を認めることを発表しました。国内においてはくまモンは利用料フリーとなっていることはよく知られていますが、今回の海外企業利用については商品の小売価格の5%程度の費用負担を求めるといっています。

データが示す伸び悩む熊本への外国人観光

2020年の東京オリンピック効果もあり、日本を訪れる訪日外国人数はこの10年で凄まじい右肩上がりを見せています。2016年度の実績でいえば2,400万人を超えており、これは日本人1億3,000万人の内、5.4人に1人が外国人観光客を占める計算になります。日本の少子高齢化、人口減少が大きな問題となり、年間33万人減少(厚生省調べ)となり過去最高を記録しました。人口減少という日本の未来に暗雲立ち込めるニュースが流れる度、私は耳を塞ぎたくなるような気持ちになっていました。ですが、その人口減少を吸収して余りある人数の外国人が日本に熱い目を向け、大挙して押し寄せているのです。

しかし、こと熊本県への客足は芳しくありません。次のグラフを見てください。日本全体で見て訪日外国人が増えているのに関わらず、熊本県への観光客数はその増加率に連動したものになってはいません。

データ引用元:全国(日本政府観光局(JNTO)より)、熊本県(2016年熊本県観光統計表より)筆者が作成

 

外国人観光客の目指す先の多くは関東、関西など都市圏が中心で、その他北海道や沖縄など日本人の観光にいく先と大体同じです。これは観光地としての熊本県の魅力が、外国人にうまく伝わっていないことの現れでしょう。旅行をする外国人にとって、海の向こうからお金と時間をかけてやってきているわけですから、限られた滞在時間を東京や大阪といった人気のメインスポットへ向かうのは当然の流れです。熊本県によほどの魅力を感じなければ、熊本城や阿蘇山へ彼らを連れてくるのは難しいでしょう。

留まらないくまモンの活躍

外国人に観光地としての魅力PRに苦戦する熊本県ですが、その一方でくまモンは絶好調です。熊本県はくまモン関連グッズの売上が2016年に1280億円に達したと発表しています。これは前年同期比で27%増です。知名度の高まりももちろんのこと、震度7の強烈な地震に見舞われた熊本を応援しよう!という熊本を想う日本人の心が現れた形と私は見ています。2011年は関連グッズ売上が25億円(これでも十分すごいですが…)だったことを考えると、くまモンの活躍の凄さがお分かりいただけるでしょうか?

もはや日本人では知らない人のいないくまモンですが、昨年2017年にはますます活躍の場を広げています。くまモンのカフェ「KUMA cafe」が昨年2017年1月に上海 新天地にOPENし、11月には中国・蘇州市でくまモン展を開催しています。中国ではくまモンが「熊本熊」の愛称で知られており、中国の大学で教鞭をとるある大学関係者は「学生に熊本出身と自己紹介をすると“くまモンの故郷だ!”とどよめきが起こった」といいます。すでに中国や台湾で人々の心をつかみつつあるくまモン、熊本地震発生に一報が中国に伝わった際に、パンダがくまモンに寄り添うイラストがネットを駆け抜けました。くまモンがきっかけでネット世論を席捲し、反日感情の圧力を抑える効果も見られます。くまモンは観光親善大使としての仕事もやっているといえるでしょう。

海外進出で熊本県は輝けるか?

海外企業の利用を認めたことで、くまモンは世界中で知らない人がいなくなるほどのキャラクターへと成長する可能性があります。くまモンの可愛らしいデザインは、日本人やアジアのみならず世界で受け入れられることでしょう。

くまモンが広がれば故郷熊本の存在も広く知られるようになり、そうなれば低迷している熊本への観光効果も出てくるでしょう。インバウンド需要が確かなものになることで、新たなビジネスが生まれてますます熊本県の輝きが増していくと思うのです。

パクリや無断使用リスクは?

もちろん、海外企業利用を認めることにリスクがないわけではありません。5%程度の利用料をきちんと海外企業から徴収できるのか?イメージを低下させるような使い方が出てしまわないのか?中国ではすでにくまモンのパクリキャラクターが出て問題になりました。

こうしたリスクがあるものの、まずは「かわいい子には旅をさせよ」でくまモンを海外に送り出す決断をした蒲島知事を全力で応援したいと思っています。中国のパクリ問題も「パクるなんて恥を知れ」と中国のネットユーザーが反応しています。愛らしいキャラクターのパクリが出て、それを両手で受け入れるほど中国人は盲目ではありません。くまモンというオリジナルのキャラクターがいることをしっかりと知っていて、同じ中国のパクリ商法をする中国人をやめなさいと叱りつけているのです。

長い目で見て、今回の海外企業利用を認めた決断は熊本県にとって、日本にとって大きなメリットがあると見ています。くまモンは大きな経済効果をもたらしてくれる有能な営業マンだけでなく、人々の心を掴んで離さない「愛」のかたまりです。私はこれからもかわいいくまモンを愛するファンとして、熊本でビジネスをしているものとして蒲島知事の活動を支持したいです。

応援してるぜ!頑張れくまモン!!

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。