英会話の専門家が警鐘!TOEICの勉強は時間のムダ

尾藤 克之

文科省の「平成27年度 英語力調査結果(高校3年生)」によれば、「話すこと」「書くこと」を苦手とする高校生が多いことが明らかになっている。さらに、社会人になってからもこの傾向が顕著であることが判明している。「それは目的に沿わない、間違った勉強法をしているからです」と答えるのは、英語の専門家、西澤ロイさん。

今回は、『イングリッシュ・ドクターのTOEIC(R)L&Rテスト最強の根本対策PART1&2』を紹介したい。累計10万部突破の「頑張らない英語」シリーズで、英語初心者に徹底的に英語の基礎固めを伝授してきた西澤さんの、TOEIC解説本になる。

スコアUPのための勉強はムダ

書店を見ても、インターネットを検索しても、TOEICに関する書籍や対策情報があふれている。しかし、英語力とは関係のないテクニックも多いと、西澤さんは警鐘を鳴らしている。

「このようなフレーズを聞くとがっかりします。『文頭を絶対に聞き逃さないように』『こういう選択肢は引っかけの可能性が高い』。それで『スコア』は上がるかもしれませんが、こういったテクニックをいくら身につけても英語力は上がりません。むしろ、気にすべきことがよけいに増えてしまって大変ではないかと思うのです。」(西澤さん)

「あなたが本当にほしいのは『TOEICスコア』でしょうか?いいえ、あなたが求めているのは『スコアという数字』ではなく、そのスコアが意味する英語力、つまり、『仕事で使える英語スキル』『外国人を相手に堂々と渡り合える英語コミュニケーション能力』のはずです。問題を解くだけでは『問題を解ける力』しかつきません。」(同)

西澤さんによれば、使える英語を身につけるためには、根本からアプローチする必要があるとのこと。受験生からTOEIC満点を取るまでにどんな対策をしたのですか?と聞かれることが多いようだが、次のように答えている(西澤さんのTOEICスコアは満点)。

「答えはいつも『ほとんどしていません』です。私は、『試験形式を知っておく以上のTOEIC対策は基本的に不要』だと考えています。TOEICに出てくる1つひとつの問題は、決して難問ではありません。ただし、圧倒的に時間のない試験なのです。ですから『どっちが正解なんだろう』と考えている間に時間切れになります。」(西澤さん)

「みなさんにぜひ目指していただきたいのは『よけいな時間を掛けずに、自信を持って正しい答えを選べるレベル』です。逆に言えば、ただ『問題を解いて解説を読む』という対策は、低すぎる目標設定をするようなもの。それでは、みなさん自身の才能を過小評価することになり、上達度合いも低くなってしまいます。」(同)

実戦の役に立たないゴルフゲーム

あなたは、上司から次のように言われた。「人脈づくりのためにも、ゴルフくらいはやっておいた方がいいな」。色々と調べたので知識はバッチリだ。そして、「スコアが100を切れるようになりたい」と思うようになった。しかし、クラブなど一式揃えるにはお金がかかる。まずは、ゲームなどでルールを理解して慣れてみようと思い立った。

独自に研究を重ねることで、じきにプロ顔負けのゴルフゲームの腕前を身につけることができた。しかし、ゲームの腕前が上がってもコースに出ることはできない。西澤さんは、間違ったTOEIC対策を「ゴルフゲームのようだ」「実力はつかない」と指摘する。

「もちろん、実際に高い英語力を身につけていて、TOEICスコアも高い人もいます。しかし問題なのは、ある程度のTOEICスコアが当てにならないということです。600点に満たなくても、仕事で英語をバリバリ使っている人もいますし、800点~900点以上でもほとんど英語がしゃべれない人もいます。これがいまの現状なのです。」(西澤さん)

「先日、とある雑誌で『TOEIC対策本の良し悪しの見極め方をプロが伝授する』という触れ込みのコーナーがあったのですが、私はそれを読んで絶句しました。まともな指摘もいくつかはありましたが、これでは実力がつかないと思いました。」(同)

英語はコミュニケーション・ツールなので間違った勉強法で頑張ってはいけない。「納得感」を持つことで上達する。正しい英語を学びたい人には一読をおススメしたい。

尾藤克之
コラムニスト